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スピノザの考え方について
スピノザは、下記の問いにどういうふうに答えているのでしょうか? 1.人間は死んだらどうなるのか? 2.なぜ、人間は生きるのか?(理由がなければ自殺するはず)
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なるほど、質問者さんの問題意識の所在がわかりました。 > アインシュタインの言葉に”スピノザの神しか信じない”という言葉を見つけたのが、スピノザを知ったきっかけでした。 アインシュタインはこういうことを言ってたんですね。知りませんでした。 でも、すごく納得がいくような気がします。 おそらくアインシュタインは、アウシュビッツ以降、あるいは原子爆弾という大量殺傷兵器の登場以降、どのような神が可能であるか考えたとき、ユダヤ教やキリスト教におけるような、絶対的な超越者としての神ではなく、スピノザのいう汎神論的な神、世界の一切の事象のなかに顕れる神しか信じられないと思ったのではないでしょうか。 そうした残虐行為を神は許したのか、それさえも、神の意志だったのか、ということは、キリスト教やユダヤ教を信仰する人々にとって、きわめて大きな問題だったでしょうから。 ただ、スピノザの言う汎神論は、キリスト教やユダヤ教のバックグラウンドを持つ人、そうして、そうした一神教をある種、呪縛のように感じ、そこから外へ出ようとする人には何かとっても魅力的なもののようなのですが(たとえばユダヤ系アメリカ人であるバーナード・マラマッドの小説『修理屋』なんかにも出てきます)、わたしなんかから見ると、何か、ピンとこない、わかりにくい感じがします。日本的汎神論、あるいはアニミズムなんかと根本的にちがう。ほんというとここで回答なんてできるほど知っているわけじゃないんです。ごめんなさいね。 さて、そのうえでおぼつかない回答を続けます。 まずですね、スピノザは前の回答でも『エチカ』から引用したみたいに、あらゆる生物は存在することを目的とする、と考えます。そうして、自己の存在を維持し、それを高めようと努力するものである。この努力が精神と身体に関わる場合を、衝動=コナトゥスと呼ぶんです。 この存在するという目的のために、必要なものを求めるのが欲望。この欲望が「人間の本質そのもの」(第四部定理18の証明)といいます。 だから、彼にとって「善」とは単に「役立つことが確実に知られているもの」(第四部定義一)。悪とはその反対。 さらに、感情のなかで「喜び」に着目する。というのは、喜びから生ずる欲望は、強力なものだから。 そうしてこの「喜び」をふやすものが善。へらすものが悪。「善悪」を存在者にとっての単なる尺度のひとつに過ぎないものとしたところが、スピノザの非常にユニークなところです。 スピノザも自殺者についてふれていて、第四部定理18の備考の第三で 「自殺者は、無力な精神の持主であり、自己の本性に抗う外部原因の前で完全に屈服せるひとである」 としています。 つまり、「存在する」という大きな目的があるにもかかわらず、それを妨害しようとするものに屈服した者である、と。 たとえば自殺を選択するのは、自由意志によってである、という考え方があるとします。 スピノザはそういうことに反対します。 赤子は乳を自由意志で欲すると信じ、臆病者は逃亡を自由意志で欲すると信じるが、それはまるで石が自由意志で落下するというのと同じ、単に、自己の行為の原因に対して無知であるというにすぎない。意識が思いこんだ自由は、意識の本質に根ざした錯覚にすぎない。 スピノザは、人間の自由意志を認めません。 意志は自由な原因とは呼ばれえない、としている(かなりここらへんはあらっぽく話をすすめています)。 そうであるならば、自由とはいったいどういうことなのか。 上で言ったコナトゥスから能動的な情動が生じてくるとき、自由になる。人間は生まれついて自由なのではなく、みずから自身を自由にするものなのである、と。 ただ、このあとは、この自由は神に対する知的愛が生じ、これがわれわれに最高の平和をもたらす、という方向に行くんですが。 > アインシュタインは自殺しなかったのは、やっぱこう、相対性理論とかに自分の人生に自分なりに目的を見出して、まあ死ぬまでこれについて考えて生きよう、と決意したんですかね。 アインシュタインはヒトラーが政権を執ったときに、ドイツから亡命しています。当時、ドイツは原爆を製造していて、同じようにアメリカに亡命したほかの物理学者と共同で、原爆の危険性を訴え、アメリカも原爆研究を進めるように促したんです(アインシュタイン自身は手紙に署名しただけ、とされています)。それで、アメリカでの原爆製造計画が大幅に早まった、という経緯があった。アインシュタイン自身は、原爆製造にいっさい無関係ではあったのですが、そのことに深く責任を感じ、第二次世界大戦後は積極的に平和運動に献身しています。 その一方で、量子理論を認めようとしなかったり、なかなかアインシュタインっていう人はカラフルでおもしろい人であったように思います。 自殺というのは、なかなかやっかいな問題で、わたしはあまりちゃんと読んだり考えたりしたことがないんですが、新潮文庫から出ている中島義道の『カイン 自分の「弱さ」に悩むきみへ 』はお説教にならず、哲学への筋道をつけようとしてあって、読みやすかったように思います。もし興味がおありでしたらごらんになってください。
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- ghostbuster
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簡単に書きます。 1.に関して スピノザの場合、まず前提としてあるのが、 人間の身体と精神の関係は、直接の相互作用はないけれど、並行的な対応関係にある、 ということです。これはどういうことかというと ・精神と身体はそれぞれが自律的なものである。 ・だが、ともにただひとつの実体である神から生じており、唯一かつ同一の秩序に従っている。 ということ。 まず、精神と肉体はそういう関係にあるのだということを頭に入れておいてください。 さて、そこから『エチカ』の第五部「知性の能力あるいは人間の自由について」の定理21から23を見てみてみます(岩波文庫だと下巻にあたります)。 定理21では、 「精神は身体の持続する間だけしか物を表象したり・過去の事柄を想起したりすることができない」 とあります。 つまり、個々の人間にあっては精神の活動は身体の持続する間のみに可能であるということです。 次の定理22はこうなっています。 「しかし神の中にはこのまたはかの人間身体の本質を永遠の相のもとに表現する観念が必然的に存する」 別のところでスピノザは、神が人間身体の存在の原因であり、本質でもあるといっています。スピノザにとって実在と本質の根本的相違は、実在は時間的に存在するが、本質は時間の外にあるということです。時間的に存在するものだけが死という宿命をせおっているのだから、無時間的である本質の領域は永遠であるということになります。 つまり身体みずからが永遠なのではなく、「永遠の相のもとに」、その原因である神によって永遠なのだ、ということです。 そこから定理23が導かれます。 「人間精神は身体とともに完全には破壊されえずに、その中の永遠なるあるものが残存する」 2.これはコナトゥスのところですね。 エチカの第三部定理6(岩波文庫だと上巻)を見てください。 「おのおのの物は自己の及ぶかぎり自己の有に固執するように努める」 あらゆるものはその存在を維持し確立しようとする傾向(コナトゥス=衝動)を持つ。 簡単にいうと、それだからです。 > 理由がなければ自殺するはず というのは、スピノザの文脈からは出てきにくいことだと思うんですが、何かその点に意味があれば、補足要求をしてください。
お礼
いやあ・・・。 もう誰も答えてくれないと思っていました。 本当に有難い・・・・。 こんなにうれしいのはひさびさです・・・。 ghostbuster殿、本当に有難うございます。 すいません、2.への補足への補足ですが(質問ですが)、アインシュタインも本能的で逆らいがたいコナトゥスというものに従って死なずに(存在を維持し確立しようとする傾向を持ち)生きた、ということになるんでしょうか。
補足
もともと、アインシュタインの言葉に”スピノザの神しか信じない”という言葉を見つけたのが、スピノザを知ったきっかけでした。なるほど1.の質問に関してはすごく時間との関連性があるのですね。恥ずかしながらまだ”スピノザの世界”という入門書を読んでいる途中です。ぜひエチカ読破までいきたいなあと思っています。 2.なんですが、ただ単に、”なんのために俺生きてるのかな・・・他のみんなは?・・人間ってなんだかんだいっていつか死ぬのに、なんのために生まれてきてんの?どうせいつか死ぬなら、別に生きてるのがイヤでなくても、目的ないから自殺するっていう人とかいるんかなあ・・・まあそういう人はしんでしまってるから聞けないけど。”などと思いをめぐらしたのであります。アインシュタインは自殺しなかったのは、やっぱこう、相対性理論とかに自分の人生に自分なりに目的を見出して、まあ死ぬまでこれについて考えて生きよう、と決意したんですかね。
お礼
>スピノザの言う汎神論は、キリスト教やユダヤ教のバックグラウンドを持つ人、そうして、そうした一神教をある種、呪縛のように感じ、そこから外へ出ようとする人には何かとっても魅力的なもののようなのですが ↑見事に私の心中、読まれていますね。まったくその通りなのです。自殺願望などはまったくないのですが、仕事に毎日疲れて薄給でヘロヘロで・・ああ、おれなにやってんだろ・・・ああこのままジジイなって死ぬのね。とふと考えると途方も無く悲しくなることがあるのです。そんな私に丁寧な回答、本当に助かりました。ご回答、コピーして手帳に挟んで、時々読み返させてもらいます。 有難うございました。