はじめまして。
1.英語のsophisticate:
(1)語源はギリシャ哲学のsophism「奇弁学派哲学」から派生した動詞です。もとは「奇弁・へりくつ・こじつけ」といった意味から、修辞学的な意味を持つ学問です。
(2)動詞の意味は(1)の原義を汲み、
1)純真さを失わせる、世慣れさせる、気取らせる
2)複雑にする、精巧にする
3)奇弁でごまかす、へりくつを言う
などの意味があります。
(3)sophisticatedという形容詞は、動詞から派生して
1)純真でない、世慣れした
2)洗練された、凝った、複雑な
3)ごまかしの、こじつけの
という意味を持ちます。従って、必ずしもいい意味とは限らないわけです。
(4)この形容詞で褒める時は、人ではなく物(機械やメカニック、書体や形式・スタイルなど)を対象とする場合がほとんどで、人をsophisticatedと表現する場合は、「あまりに形にこだわりすぎていて、お高くとまった感じ」、といった、褒め言葉ではなく皮肉的な嫌味のニュアンスを含みます。例:
The car is sophisticated.「その車は洗練されている」
The style of his writing is sophisticated.「彼の作品の書体は、高度に凝っている」
She is so sophisticated.「彼女はえらくパリッとしている(隙がなく純真さがない)」
と、人に関してはあまりいい意味で使われません。
2.仏語のsophistiquer:
(1)英語と同じく語源はギリシャ哲学のsophism「奇弁学派哲学」で、そこから派生した名詞「奇弁・へりくつ・こじつけ」が派生して動詞になったものです。
(2)仏語でsophistique(ソフィスティケ)という形容詞を使う時、人について使うことはありません。機械やメカニックなどの物について形容されます。例:
Cette voiture est sophistique.「その車は洗練されている」
Le systeme de la societe est sophistique.「その社会制度は洗練されている」
など、「いろいろな物・事が複雑に絡み合う物質・機構」について形容されます。
3.仏語のraffiner:
(1)原義は「精製する、磨く」という意味があり、そこからraffine「磨かれた、洗練された」という形容詞に転用しました。
(2)raffine「洗練された」は、主に「人」や「精巧な技術を要する作品=料理・芸術作品・工芸品」などを形容する時に、褒め言葉として使われます。例:
Elle est tres raffinee.「彼女はとても洗練されている→(外面内面共に)センスがいい」
Sa cuisine est tres raffinee.「彼の料理は洗練されている→技巧の極致を尽くしている」
Cette robe est raffine.「このドレスは洗練されている→エレガントでセンスがいい」
と褒め言葉に使われます。特に人をraffineと表現する時は、その内面の人間性も含めて評価しますから、外見だけ洗練している場合は、「彼女はラフィネだ」とは言わず、「彼女の服装(生活様式)はラフィネだ」としっかり区別します。
以上ご参考までに。
お礼
どちらもギリシャ哲学が語源なんですね。 とてもご丁寧な解説をありがとうございました。 感謝いたします。