万葉集で興味深い点(魅力)は大きく分けて2つあります。
ひとつは今とは異なる古代人の暮らしや考え方に触れられること。もう一つは、現代と基本的には変わらない人の感情に共感できることです。十代のころに万葉集に興味を持ち始めたきっかけは後者で、次のようなストレートな歌が「初期のお気に入り」でした。
待つらむに 到らば 妹が嬉しみと 笑まむ姿を 行きて早見む (巻第十一 2526)
振り分けの 髪を短み 春草を 髪にたくらむ 妹をしそ思ふ (同巻 2540)
思はぬに 到らば妹が 嬉しみと 笑まむ 眉引 思ほゆるかも (同巻 2546)
それから50年経つと次のような歌に(この前にある長歌804にも)共感するようになりました。万葉集には若者にも高齢者にも共感できる歌があります。
常磐なす かくしもがもと 思へども 世の事なれば 留みかねつも(巻第五 805)
謎解きが面白いと考える人もいるでしょうからつまらない点、欠点と言えるかどうかは微妙ですが、万葉集の四千五百首余りの中にはどうしても読めない(定まった読み方(定訓)がない)「難読歌」と呼ばれるものがあります。伝わっているうちに誤写された可能性もあり、その点は歯痒く感じます。