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「成ろう事なら」を「成ろうなら」に言い換えられる?
もし、可能ならと言う意味で、成ろうなら・・と事を略して言う事はできるでしょうか。 不確かなのですが、古典落語で「成ろうなら・・・」と言っていた覚えがありますが、正しい文法でしょうか。
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「青空文庫」で検索して昔の文学作品にいくつか用例を見つけました。引用文の()は原文ではふりがな(ルビ)です。 ○ほんのことさ、お前様、なろうならば米よりは御飯(おまんま)を下さいやし、御飯よりはまた老人(としより)にはお粥(かゆ)が好(よう)ござる。 泉鏡花「貧民倶楽部」初出明治28年 ○なろうならば、何(なんに)もしたくないのだから、家賃とか米代とか、お母(っか)さんに酷(きび)しく言われるものは、拠(よんどころ)なく書き物をして五円、八円取って来たが、其様(そんな)処へ遊びに行く銭は、「あゝ行きたい。」と思えば段々段々と大切にしている書籍(ほん)を凝乎(じっ)と、披(ひら)いて見たり、捻(ひねく)って見たりして、「あゝこれを売ろうか遊びに行こうか。」と思案をし尽して、最後(しまい)にはさて何うしても売って遊びに行った。 近松秋江「別れたる妻に送る手紙」初出明治43年 ○「ご恩は忘れませぬ。ああ、うれしい。けれど、なろうならば、その上に」 ○高氏は残して立つ妻以上に、守時に同情した。なろうならこの人だけには何もかも打明けて、あやまりたいような理性の中の妄想にとり憑つかれた。 吉川英治「私本太平記 千早帖」初出(連載開始)昭和33年 ○尊氏はふと胸をさいなまれた。 なろうなら目をふさいで過ぎてしまいたかったものを――その罪業(ざいごう)の形見みたいな者たちへ――苦(にが)い想いを余儀なくされていたからだった。 吉川英治「私本太平記 風花帖」初出(連載開始)昭和33年 いずれも、相手との会話や心理描写の中の自問自答のような部分という似た点があるようです。「正しい文法か否か」という問題ではなく、「なろう(こと)なら」「なろう(もの)なら」のカッコ内を省略した表現として昔から実際に使われている、ということではなかろうかと考えます。
お礼
豊富な用例をもとに大変ありがたいご返答をいただきました。感謝いたします。おかげさまで、「なろうなら・・・」とリズムのある文章がつくれます。