>同じ言葉の意味が時代によって反転することがあるようですが、これもその一例なのでしょうか。
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大方は歴史の変遷の中で幾層もの意味合いが混在・変容の淘汰を受けているといえましょう。
1.なまめかし
平安期:しめやかに行き届いた心配りでの未熟ぶり・さり気なさ。
近世:通俗で、やや品の劣ったあだっぽさ・妖艶さ。
2.ゆゆし
奈良期:良くも悪くも慎むべき宗教的タブー意識。
平安期:良くも悪くも甚だしい有様。
室町期:非常に大変な有様。
3.かわいい
奈良期:カハユシ。顔が火照るようだ。
平安期:まともには見るに堪えない。
近世:可愛い。恋慕の気持ち。
4.口惜しい(くちをしい・くやしい)
平安・鎌倉期:期待に反し大切なものが駄目になって残念だ。
室町期:予想外のことが起きてくちおしいもくやしい。
5.新し(あたらし・あらたし)
上代:惜(あたら)し。もったいない。
上代:新(あらた)し。漢文訓読語「灼(あら)たなり」に因むか。
中古:「惜(あたら)」という語法以外はすべて「新(あたら)し」に。
なお、「現(うつ)しおみ」「現(うつ)し身(み)」を、江戸期の国学者は「現身・空蝉(うつそみ・うつせみ)」と解釈した経緯もあるようです。
いずれにせよ「現(うつ)し/顕(うつ)し」がやがて「移(うつ)し」や「空(うつ)く・虚(うつ)く」と混同が生じやすい発音上の事情があったものでしょう。
お礼
色々なことを詳しくお話されたので大変豊かな気持ちになりました。