- ベストアンサー
貯蓄ー投資=輸出ー輸入について質問
経済学勉強中の素人です。 上の式について、A国からB国へ投資が増大すると、それに付随して賃金が上昇するのはわかります。 ですがその後どのようにして、恒等式がイコールになるように、「輸出ー輸入」が調整されるのでしょうか? 例えばA国を先進国、B国を中国などの製造業を輸出する発展途上国とします。その場合は発展途上国は輸出によってかなり設けていると思うので、どうしても上の式の輸出が増大してプラスになって、投資が増大した場合にイコールにならないのでは? と思ってしまいました。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
まずこの式が成り立つ前提をきっちり理解してください。 この式は、『今この瞬間にある』『国内で生産した財をどのように利用するか』を問うている式です。 その上で、貯蓄-投資=輸出-輸入と中国の現状を絡めて考えて見ましょう。 ・この式は国内で生産した財をどのように利用するかを見るための式です。 中国は大量の輸出が出ていることは事実です。 では何故輸出ができるのでしょうか? それは中国が貯蓄を推進するために様々な政策を行っているからです。 つまり現在中国国内で大量の貯蓄が、大量の輸出と投資を支えているのです。 大雑把に説明すると、貯蓄=国内の生産力-国内の消費力(≒生活費)となります。 ですから、中国を初め途上国は様々な手段で消費を抑え投資を増やすために努力しています。 例えば途上国はどこも自国の通貨を低く設定します。 これは自国民に輸入品を買わせない、消費を控えさせることで自国民の生活水準を抑える効果があります。 また自国の金融制度をしっかり整えれば、投資需要の高い途上国ではおのずと高金利になりますから国民は貯蓄に走ります。 現在の中国人は日本よりずっと貯金してます。 日本でも国民の貯蓄をかき集めるために当時様々な施策がとられました、郵便局の整備もその一つです。 さらにシンガポールなんかのように半強制的に国民に貯蓄をさせる国も多いです。 また国民から税をとり、企業に補助を与えるのも、税によって国民の消費を押さえ補助金によって企業への投資を増やすための手段です。明治時代では酒や農地から徴収した税を産業育成にあてられました。 韓国が日本から巻き上げた賠償金を国内の産業育成に当てたのも、今この瞬間の国民の消費水準を上げるより投資を優先すべきと判断したからです。 そして輸出の場合その影響は特に顕著です。 生産を続けるには生産したものの利用先を見つける必要がありますが、生産したものを輸出した場合、国内の消費水準を上げる必要がないからです。 この恒等式はそういうことを示しているわけです。 ・次もう一つ考えなければいけないことがあります。 それが生産力の増加の問題です。 投資の効果によって生産力が上昇することは、この恒等式では考えません。 この恒等式で見ているのは、『今この瞬間』だけで未来のことは考えてないからです。 2001年の経済が GDP 100 消費 60 投資 30 輸出 X 輸入 20 だとすると式は以下のようになるわけです。 貯蓄-投資=輸出-輸入→(100-60)-30=X-20 輸出X=30 2010年の経済が GDP 500 消費 200 投資 200 輸出 X 輸入 150 だとすると式は以下のようになるわけです。 貯蓄-投資=輸出-輸入→(500-200)-200=X-150 輸出X=250 この式の変化を見れば、中国は生産力が5倍になったのに消費は3倍ちょっとにしかなっておらず、その代わりに投資と輸出が大幅に上昇していることが分かるかと。 つまり、現在中国が大量の輸出と大量の投資をしているのは、投資によって生産力が激増したのに、消費水準がそれほど変わっていないからです。 このようにこの恒等式は今この瞬間の資源の分配(限りあるパイの分配)をみるためのツールです。 しかし、2001年から2010年の間にGDPが5倍になったことを説明してくれません。 投資によって輸出が増大しているのは、投資によって生産力(パイそのもの)が増大するという流れ、もっといえば経済成長の結果です。経済成長を見るための式は別にあります。(ハロッド・ドーマーとかソロー・スワンとか) ・最後にもう一度貯蓄-投資=輸出-輸入の恒等式と経済成長の理論をどのように使うか説明します。 経済成長モデルは色々ありますが、途上国に必要な要素についての見解は一致します。 途上国の経済成長には投資が必要が不可欠だということです。(優秀な経営者や労働力の問題もありますが、今回はパスします) 次に投資が必要なことは分かったがそれにはどのようにそのための原資を用意すればいいのか?という話になります。 そのときに恒等式が役に立つわけです。 つまり貯蓄を増やせば投資を増やせること、輸入を増やしても投資を増やせることが分かります。 前者に注目したのが貯蓄推進政策や消費抑制政策や投資推進政策です。 後者に注目したのが海外からの投資推進です。海外からお金を借りればそのお金で輸入を増やせます。その結果投資を増やせます。その理論の下進められたのが中国の外資受け入れであり、その理念の下で作られたのが世界銀行です。
お礼
この恒等式が、「この瞬間にある」ということがわかり、頭がすっきりしました。 たとえ、その時一瞬は貿易赤字に見えても、その後生産力さえ上がってしまえばその赤字は簡単に返すことができるのですね。 途上国はできるだけ賃金水準を抑えて輸入品を購入させないようにしたり、また貯蓄させて投資に回すことで生産力を増やすことも知ることができてよかったです。 本当にありがとうございました!