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物質波の伝播
キッテルの固体物理の本に「物質波は周期的構造の中を自由に伝播する。」と書いてありましたが、どういうことでしょうか?(金属中の伝導電子の性質として書かれてありました。)
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まず物質波というのは例のド・ブロイ波(粒子として捉えられていた電子が波動としての性質ももっている...)のことで、今の場合、電子の波(波動関数)のことを意味しています。 まず、金属の導電性がどうして生まれるのか、簡単にスケッチしてから、ご質問の解答に進むことにします。 (1)原子が周期的に並んでおり、+電荷を持った原子核によるクーロンポテンシャルも周期的に並ぶ。・・・これが周期的構造の中身 (2)周期的に並んだ。各原子に属す電子の波動関数は互いに重なり合い、この結果、エネルギーバンド(エネルギーの帯び)と呼ばれるものが生まれる。・・・これはバンド理論と呼ばれています。 (3)このエネルギーバンドは第1バンド、第2バン、・・・と飛び飛びのエネルギー領域をもつが、各領域間には隙間があり、この隙間はバンドギャップと呼ばれ、この領域に電子は存在することが出来ない。・・・禁止帯と呼ばれています。 (4)いま、あるエネルギーバンドに電子が満杯に詰まっていると(詰まり具合はパウリの排他率で決まる)電子は身動きできない状態にあり、外部から例えば電場をかけても電子は動けない。これが絶縁性というヤツですね。しかし、強烈に電場をかけると禁止帯を飛び越して上のバンドに電子が飛び移り、途端に電気が通じるようになりますが、これは絶縁破壊と呼ばれています。 (5)一方、エネルギーバンドに電子の空席があれば、電子はチョコチョコかどうかは兎も角、動き回ります。これが金属の導電性の起源で、これらの電子を伝導電子とよんでいます。 次ぎに、空席のあるエネルギーバンドにいる電子は、(5)の通り、動き回りますが、(1)の周期的クーロンポテンシャルの影響を受けるため、動きはギクシャクし、決して自由に動き回れないのではないかと思われますが、実はクーロンポテンシャルの影響は無視できるのです。この詳しい説明は、しかるべき固体物理のテキストを見ていただきたいのですが、概念的にいいますと、導電性電子は普通一番外殻にあるd電子の波動関数の重なりから生まれ、それより内殻にある電子軌道(イメージ的に電子の雲のようなもの)は原子核のクーロン力を減殺する効果を発揮している、と言えます。 長々とかきましたが、金属の伝導電子は、上の理由から原子核の周期的構造の中を自由に伝播することができる、ということになります。これを自由電子近似と呼んでいます。
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- SCNK
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金属結晶構造内を伝播する自由電子の説明のように思えます。金属結合内部では自由に動けるということを言いたいのでしょう。
お礼
大変参考になりました。ありがとうございました。