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会社法428条の利益相反取引について

1 会社法428条の利益相反取引規制(無過失責任)は、取締役会の承認があっても適用されるのでしょうか? 2 この場合の過失は任務懈怠とは違うのでしょうか?また、任務懈怠と善管注意義務違反はどう異なるのでしょうか?  以上通説に沿って教えていただけると助かります。

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回答No.1

議論はかなり複雑なようなので、どのような見解が通説なのかは知りませんが... 1: 適用されると解します。利益相反取引の場合の取締役の「任務」とは、重要情報開示義務、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会。365条1項)の承認を得る義務(356条1項)及び事後報告義務(取締役会設置会社の場合。365条2項)であり、これらに対する懈怠(開示不十分など)が無過失による場合でも、自己のための自己取引については免責しない趣旨と考えられます。 2: 過失と任務懈怠は、428条・423条に関わらず、もとより別の概念です。 確かに、民法の通説では過失は義務違反とほぼ同義と考えられている(内心的な「うっかり」ではなく)ので、その意味では任務懈怠(会社法その他の法令・定款・株主総会決議等に対する違反)とほぼ等しくなります。しかし、任務懈怠が客観的な義務違反の状態を意味するのに対し、過失は(客観的事実から認定される)主観的な事情を意味するので、概念的には別次元の議論といえます。 すなわち、たとえば他の取締役の不正経理を見逃した取締役は、客観的には362条2項2号に基づく監視義務に違反したというべきです。しかし、それが功名に仕組まれていて平均的な取締役の能力では到底発見し得なかったような場合には、当該監視義務違反につき過失があったとは評価できません。ゆえに、不正経理を見逃した取締役には任務懈怠があるものの、過失がないので、423条1項に基づく損害賠償責任は負わない、という結論を導き得ます。 善管注意義務違反と任務懈怠の関係は、いくつか説明の仕方があり得るでしょう。たとえば、あらゆる法令・定款違反、条理上の義務違反が善管注意義務違反であり、したがって任務懈怠がある、という説明もできますし、法令・定款違反は直ちに任務懈怠となる一方、それら明文上の根拠がない条理上の義務違反全般をカバーするものとして善管注意義務違反があり、これも任務懈怠になる、という説明もできます。 説明の仕方によって「任務懈怠にならないケース」が出てくるとは思えませんし、理論的にどちらかが絶対正しいともいい切れないでしょうから、「通説かどうか」を探求する意味に乏しく、自分なりの説明ができれば十分という気はしますが...

minawataru
質問者

お礼

 わかりやすく説明していただきありがとうございます。おかげさまでかなりすっきりしました。任務懈怠、過失、善管注意義務の関係については考えていたよりも難しそうなのでこれからしっかり学習したいと思います。  ところで、利益相反取引については、その取引により損害が発生した場合は、取引をした本人については、取締役会(株主総会)の承認があってもなくても、同様の責任を負うと考えて良いのでしょうか?

その他の回答 (2)

回答No.3

>> 利益相反取引については、その取引により損害が発生した場合は、取引をした本人については、取締役会(株主総会)の承認があってもなくても、同様の責任を負うと考えて良いのでしょうか? // 「取引をした本人」「同様の責任」というのが、何を指しているのかいまいち分かりませんが、利益相反取引をした取締役は、423条1項(自己のための自己取引の場合は428条)によって賠償責任を負うことになります。取締役会(株主総会)の承認があったとしても、それだけで免責される訳ではありません。 なぜなら、「事前承認を得る義務」は356条が取締役に要求する義務の1つに過ぎず、ほかに「重要事項を開示する義務」もあるからです。開示が不十分(あるいは虚偽の事実を報告)であった結果、十分に開示されていれば承認されなかったであろう取引が承認された、という場合には、開示義務違反という任務懈怠があるのですから、これによって生じた損害を賠償させることは何ら問題ないでしょう。 そして、直接取引・間接取引については、423条3項で、損害が発生したことをもって任務懈怠が推定されているので、あとは過失の立証だけあれば損害賠償責任が肯定されることになります。先述の通り、過失=義務違反だと考えれば、過失も事実上推定されるのに近いので、現実問題として423条の責任が認められないケースというのは、かなりレアだとは思われます。 もっとも、あくまで「推定」にとどまるので、取締役の側で任務懈怠がないことの主張・立証をしてノンリケット(真偽不明)に持ち込めば賠償責任は否定されますし、過失についても先述の通り反論の余地がない訳ではありません。 さらにいえば、428条は、423条の過失責任に対する例外であって、自己のための直接取引で会社に損害を与えたとしても、任務懈怠がないのであれば賠償責任は負いません(423条3項がある以上、その主張が通る可能性は低いと思われますが)。 要するに、「承認を得ること」は取締役の義務なので、それを得ずに利益相反取引をした場合、「任務懈怠」として423条・428条の責任が生じるのは当然です。しかし、取締役の義務はこれにとどまらない(開示義務など)訳で、その義務違反があればやはり「任務懈怠」である以上、423条・428条の問題になるのは間違いありません。

minawataru
質問者

お礼

ありがとうございます。 「取引をした本人」はご推察のように利益相反取引をした取締役のことで、「同様の責任」とは取締役の承認を得ずに取引をした場合と同じかという意味だったのですが、言葉足らずでご迷惑をおかけしました。 おかげさまでよくわかってきました。

  • verve215
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回答No.2

2、については下記の回答に加えて言えることはありません。 1、について 何を問題にしているかがわからないのですが、  役会の承認を得なければならないことを前提(356条1項2号、365条1項)として423条3項、428条は規定されているのですから、承認の有無は(取引の相手方となる取締役の任務懈怠にはなっても、)428条の適用の有無に影響を与えることはないのではないと思われます。この点は学説云々の問題ではないと思われます。  ただ、会社が事後、役会の承認を欠くことを理由に当該利益相反取引の無効を主張した場合は、取引自体がなかったことになるのですから、423条3項、428条の規定は適用されないと思われます。(別個423条1項の責任は生じうるとしても)  仮に利益相反の間接取引である場合、第三者保護の必要があるので相手方の悪意を会社が立証してのみ無効を主張できる、という判例の法律構成を問題にする余地はあると思いますが、直接取引における相手方取締役を保護する必要はないと思われるので、会社が無効を主張することは原則可能と考えるべきと思います。  もっとも、423IIIや428がある以上、無効にする実益がある場合があるかは疑問ですが。。

minawataru
質問者

お礼

丁寧にお答えいただきありがとうございます。取締役会の承認の有無によって利益相反取引の効果がどのように変わるのか、を質問したかったのですが、質問の仕方が曖昧でした。でもおかげさまでよくわかってきました。