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中野重治の菊の花を教えてください。

皆さん、こんにちは。 私は韓国で日本語と日本の文学を勉強している学生です。 今、習っているのが中野重治の菊の花です。 いくら考えても理解できないことがあって質問します。 授業中に使ってる本にある質問です。 1。主人公である冬吉にとって、花はどういう意味をもっているか。 2。冬吉とそのおっかさんはどんな人だちであろうか。 3。「それが花のこころです」とは、どういう「こころ」のもちかたか。 頭の中では何となくですけど、口にするのが大変です。 助けてください。

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回答No.1

まず、主人公は「冬吉」ではありません。この短篇には「私」としてしか出てきませんが、連作短篇としてこの作品が所収されている『村の家』のなかで、主人公は高畑勉次という名前が与えられています。 冬吉は、主人公が子供の時から、つまり、本人も記憶にないほどの幼いころから花が好きな幼児であったことを証言してくれる「おじさん」の名前です。 確かに冒頭の一文 「子供の時分から私は大そう花が好きだった――田所冬吉おじさんが話した。」 という文章は、「私」=田所冬吉と読めてしまう、誤解をまねきやすい文章ですが、あくまでもこの作品に出てくる「私」は高畑勉次という青年であることを理解しておいてください。 1.『菊の花』の冒頭は、先ほどもあげたように 「子供の時分から私は大そう花が好きだった」 という文章から始まっています。 花が好きなまま大人になって、経済的にも、政治的にも忙しく、また余裕のない日々でも、なんとか花を育てたい、と願いながら、おりにふれて眺めることでその渇望を満たしていた、ということが続いていく。 そんな彼が入獄してから、花を見ることができなくなった。 「友達に逢いたいと思うのと同じように花に逢いたいと思うのであった」 「花が好き」と言ってしまえば肝心なところがこぼれ落ちてしまうような、花に対する強い思いが感じられます。その、人を愛するようにそれを愛する「強い思い」を、あなたの知っている日本語にしてみてください。 2.勉次が何の罪で入牢しているか、この短篇のなかでは明らかにされていませんが、「わるい人がたくさんいて、無理に連れて来た」という作中の言葉から、主人公が犯罪を犯したわけではないことがわかります。この短篇が所収されている『村の家』では、もっと具体的に、共産党員であった主人公が治安維持法により検挙され、獄中で転向し、郷里の「村の家」に戻っていく、その過程が描かれています。 ここでは主人公はまだ転向を決意しておらず、孤独で寄る辺のない気持でいます。 そうして 「おっかさん。おっかさん。こうして菊の花に日があたっているうちは、おっかさんの小さいからだにも日があたれ」と菊の花を見て願っているような息子でもあります。 そのお母さんの方は、政治犯として検挙された息子に、郷里(福井)から菊の花を送るような母親です。菊は昔から日本人に愛されてきた花でもありますが、同時に日持ちのする花です。母親は、息子が花が好きなことを知っていたのでしょう。獄中の彼の気持ちを慰めることを願い、つぼみのたくさんついた、美しい菊を送り届けたのです。 どんな人か、少しずつ具体的になってきませんか。 3.獄中の中で、菊の花はだんだん小さくなり、ほこりもたまってきます。そんななか、菊が、暗い狭い獄中から出たい、と主人公に訴える声を主人公は聞くのです。 主人公は、自分も出たい、と菊に応えます。「わるい人」が、自分に「いいこと」をさせまいと、自分をここに連れてきた、だから菊もここに送られてくることになってしまった、と。 そのときから、主人公と菊の会話が始まっていきます。 ある日、主人公が、日も差さない獄中で、花は小さくなっていくが、しおれるどころかますます美しさを増すのはどうしてか、と菊の花にたずねます。 すると菊はこう答える。 「どういうわるいところへ入れられても、そこでありったけの力で生きていく。これが花のこころ、花のいのちです」 この菊の花の言葉というのは、同時に作者である中野重治の、決意であったと読むことができると思います。単に転向を拒否することを指しているのではない。であったとしたら、転向によって、彼は花のこころを失ったことになる。 この先、彼は郷里に帰って、父親と対決する場面があります。父親は、転向したのなら、文学も止めろ、と迫るのです。けれども主人公は、転向を引き受け、そうやって闘い抜こうと決意する。 それも「ありったけの力で生きていく」ことです。 「花のこころ」というのは、そういうことです。 以上、少しでも参考になれば幸いです。

Ukyung
質問者

お礼

ありがとうございます。 冬吉が主人公ではないことは知りませんでした。 頭の中だぐるぐる回り続けていたことをこのように文書で 読むとやっと分かったような気がします。 改めて、 本当にありがとうございます。