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淘汰論的に不利っぽい優勢遺伝子について
高校生物Iの資料集を読んで疑問に思った点があるのですが、たとえばミツバチの間で発生する「ふそ病」などで死亡した個体ですが、その個体のコロニーのふたを取り除かない遺伝子が優勢(劣性の場合はふたを開ける)、その個体を取り除かない遺伝子が優勢(劣性の場合は死亡した幼虫を除去する)、とのことです。 直観的な感じでは、これでは種の存続にとって不利(しかも淘汰のスパンが幼虫の次期しかない)という点でかなり疑問です。それならば優勢の法則に従って、その遺伝子がミツバチという種の間で、蔓延すると、ふそ病も蔓延して種が滅んでしまうのではないかなーと思いました。 資料集の表記が誤りなのか、自分の読み間違いなのか、それともこの遺伝子がミツバチがその淘汰論をもろともしない、別の方面で生きる上で有利になる理由などありましたらお教えいただけるとありがたいです。
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まず質問文でいくつかおかしなところを指摘しておきます。 1.「淘汰論」ではなく「進化論」ですよね。 2.「優勢」ではなく「優性」です。 3.「劣性の場合はふたを開ける」ではなく、「劣性ホモの場合はふたを開ける」でしょう。 さて、ご質問はローゼンブーラーの実験についての話だと思います。 「衛生的なハチ」(ふそ病で死亡した幼虫がいる巣室のふたを開け、死体を取り除く)と「不衛生なハチ」(何もしない)に分類すると、雑種第一代は全て「不衛生なハチ」になり、これを「衛生的なハチ」と戻し交配すると3つのグループに分かれた、というものでした。 すなわち、「衛生的なハチ」と「不衛生なハチ」、さらに「中途半端に衛生的なハチ」(巣室のふたを開けるが死体は取り除かない)の3グループです。 このことから、「衛生的行動」つまり巣室のふたを開けて死体を取り除くといった行動には、2つの遺伝子(巣室のふたを開ける遺伝子と死体を取り除く遺伝子)が関与していて、これらの遺伝子はそれぞれの対立遺伝子(ふたを開けない、または死体を取り除かない)に対して劣性であると推測したわけです。 ということはつまり、「巣室のふたを開ける遺伝子」は2倍数で持たないが、死体を取り除く遺伝子は2倍数で持っているハチも存在することが予想されます。しかもこのハチはふたを開けないため当然死体を取り除くこともできず、表現形としては「不衛生なハチ」と区別できないことになります。 そこでローゼンブーラーは不衛生なハチに対し、人為的に巣室のふたを開けてやったところ、予想どおり半数の群で死体を取り除く行動が見られた、ということでした。 ふたを開ける、あるいは死体を取り除く遺伝子がそれぞれの対立遺伝子に対して劣性であることは、どうにもならないことです。 >それならば優勢の法則に従って、その遺伝子がミツバチという種の間で、蔓延すると 遺伝子が蔓延する、というのもおかしな表現ですが、例え劣性遺伝子であっても有利な形質を発現する遺伝子はホモになれば生存に有利なわけですから、この遺伝子は決して淘汰されないでしょう。 ふそ病が蔓延した時は、多数の群が全滅しても少数の「2つの遺伝子が劣性ホモになった群」は生き残るわけですから。 つまり、「ふたを開けない遺伝子」をA、「ふたを開ける遺伝子」をa、「死体を取り除かない遺伝子」をB、「死体を取り除く遺伝子」をbとすると、 ・AABBとAaBB、AaBbの遺伝子型のハチはまったく何もしない「不衛生なハチ」です。 ・aaBBとaaBbの遺伝子型のハチは、ふたは開けるが死体を取り除くことはしない「中途半端に衛生的なハチ」ということになります。 ・AAbbとAabbは、一見最初のグループと同じく「不衛生なハチ」に見えますが、人為的にふたを取り除いてやると死体を取り除くことができるハチになります。 ・aabbのハチだけが、ふたを開けて死体を取り除く「衛生的なハチ」ということになります。 で、このaとbの遺伝子が「蔓延」するとどうなるか、ですが、劣性遺伝子であってもこれらの遺伝子が選択されて遺伝子プールの中で頻度を増せば、「劣性ホモ」になる確率は高くなり、「衛生的なハチ」が増えることになります。 この遺伝子が淘汰されてなくなってしまえば、衛生的な行動を取るハチはいなくなるわけですから、ふそ病が蔓延した時には絶滅してしまう可能性が高くなるわけです。 ま、劣性遺伝子であっても有利な遺伝子である限り、選択されて頻度を増すことになるのは必定だと思いますが。 というわけで、優性遺伝子である方がより有利であることはもちろんなのですが、劣性遺伝子だからといってことさらに不利、というわけではありません。