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ベラスケスの「ラス・メニーナス」
ベラスケスの「ラス・メニーナス」は、日本語で「侍女たち」「女官たち」 というタイトルがついていますが、絵を見ると侍女たちは 絵の中央にはいませんよね。むしろ王女の世話をしているだけで、 タイトルになるほど目立ってはいないと思うのですが、 なぜこのようなタイトルがつけられているのでしょうか? 「ラス・メニーナス」は、侍女、女官、という意味ではないのでしょうか? 絵画のことはさっぱりわからないので、わかりやすく教えていただけると ありがたいです。お願いします。
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こんな遅くになって参加することをお許し下さいマセ。 ずっと気になっていた質問でしたが、心当たりのある参考になりそうな本がなかなか見つからずにいて、それがやっと先程出てきました。 これはプラド美術館の目録兼ガイドなのですが、この絵に数ページ割いて解説を載せています。 それによると、この絵はNo.2の方がお書きになっていらっしゃるように、後世で「ラス・メニーナス」と呼ばれるようになったとのことです。 絵が完成した年が1656年ですが、10年後の1666年の王室財産目録には「Picture of the Family」(本が英語版のためスペイン語の名前は不明です)の名前で記されており、19世紀になってDon Pedro de Madrazo(誰?(^_^;))により、「Las Meninas」と名付けられた、とありました。 なぜ「ラス・メニーナス」か?と問われると確信は持てませんが、やはり存在感の問題なのだろうなという気がします。 さてさて、名前もさることながら、本当にツッコミどころの多い絵として有名なのですよね。 ■絵の中のヴェラスケスの前のカンバスには何が描いてあるのだろうか? 王女の絵を描いていて、ポーズとりに厭きた王女を女官達が必死に機嫌を取っているようにも見えます。そこにふと立ち寄った王と王妃。慌てて女官が敬意を表すしぐさを取る瞬間を捉えたもの? アレ?でもその場合、ヴェラスケスの立ち居地がオカシイ。そこじゃ王女を描けないだろ! では、通説通り、我々鑑賞者の場所に立っているであろう王と王妃を描いている? じゃあ、王女のこのポーズの取りっぷりっていったい??しかも主役だし! ■ヴェラスケスの胸の十字についての諸説 絵筆を持ったヴェラスケスの胸には赤い十字架が見えますが、これはサンチャゴ騎士の勲章です。これは彼が長年宮廷絵師として活躍したことで与えられたもので、貴族の仲間入りをしたことを表しています。しかし、彼がこの勲章を得たのはこの絵が完成した数年後。というわけで、いつこれが描かれたかといういくつものエピソードがあるのだとか。曰く「ワザと描いて王様に勲章欲しいとアピールした」「王様がこの絵をたいそう気に入って、『オマエは、これを忘れているぞ』と自ら描き入れた」「叙勲されたからヴェラスケスが描き入れた」などなど。どうも最後のが一番もっともらしいですケド。 ■王と王妃はなんでわざわざ鏡の中で登場するの? 絵の中に普通通り登場させると、ただの王家の肖像っぽくなって面白みが無いから?鏡で奥行き感を出す為? ■背後に立っている人は誰?なにしてるの? 騎士のホセ・ニエト・ベラスケスだという本がありますが、またもや誰?(^_^;) ■本当に鏡に映っているのは王と王妃なの?いや、肖像画って可能性もないかな?? なーんて、ネタは尽きそうにありませんが……。 ともあれ、構図の絶妙なバランスを考えると、どう考えても、ある瞬間を切り取って絵にしたものではなく、練りに練られた上での画面構成上の都合で「鏡」がずれていたり、人の立ち居地が決まっていたりするのでしょうね。 などと細かいツッコミをいちいち入れてみましたが、これが分ったからって何も変わらないような気もします。 絵の背景ににある時代や宗教・文化などを理解することは、その絵を理解する上でものすごく助けになるとは思うのですが、あまり全てが分ってしまうのも、なんだかツマラナイような気がするのです。 純粋に絵として目で楽しむ余裕が無くなってしまいそうで。 なんて言っているうちに、ますますこの絵の不思議な魅力に取り付かれてしまったようですね。 見れば見るほど不思議な余韻を残すところが、この絵の最大の魅力なのかもしれません。 といわけで、なんの説明にもなっていないので自信なし。ただ私も語りたかった口です。(^_^;)
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- aster
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これは有名な絵画で、謎の絵画としても知られます。非常に複雑な計算が画家にはあったものと考えられます。鏡に映っている王と王妃が、この絵の主人公で、しかし、その位置にあるのは、実は、この絵の鑑賞者であるということも問題なのです。 王と王妃が自分たちの楽しみのために描かせたとすると、鑑賞者の位置に王と王妃が来ることはきわめて自然なことです。しかし、この絵は、本来、どういう目的で描かれたのだろうか、ということが疑問になって来ます。 この絵が、最初から「Las Meninas」と名付けられていたのか定かでありません。後で、その名前ができたという可能性が高いと思います。丁度、ゴヤの「裸のマハ」と「着衣のマハ」が、後世にそう通称で呼ばれたのに似て。 「メニーナス meninas」というのはスペイン語で、辞書では、「(女王・王女に仕えた)童女」となっています。menina という単語の複数形です。だから、訳すとすると、「童女たち」になります。 絵を見ると、王女を囲んで、二人の侍女、一人の女宮廷道化師、その右の王女と同じぐらいの年齢のような少女、そして、背後に立つ二人の人物、左手に、画家ヴェラスケスの絵を描いている像、そして奥の扉のところに立っている、誰かよく分からない人物、あと、鏡に映った王と王妃です。 王女マルガリータは、光に輝いているように見えます。白いドレスと、白い金髪がそういう印象を与えるのかも知れませんが、他の者の衣服が、丁寧に質感を持って描かれていても、暗い感じで、王女が中心の位置もあって、印象的です。 この絵については、最初に述べたように、鏡のトリックがあって、鑑賞者が鏡のなかの人物の位置に来、そして絵のなかの人物は、王や王妃を見ているとされます。しかし、そうなのかという疑問もあります。もっと複雑な構成になっています。 参考URLに絵が載っています。 これを見ると、確かに、絵のなかの人物は、王や王妃の方を見ているようにも見えるのですが、しかし、誰も、王や王妃に敬意を表する姿勢を取っていません。王女の左右の二人の侍女の右の侍女が、王女に対し、少し身をかがめているのが、敬意の表明のようですが、これは王女に対する敬意の表明です。 この二人の侍女は、王女の面倒を見ているのであり、その視線は、鑑賞者の方を向いていません。もっと拡大すると、目だけが、こちらを向いているのかも知れませんが、参考URLの絵で見る限り、身体の姿勢などは、王女に敬意を表し、世話している姿勢です。 また、その他の人物の視線や姿勢も、よく見ると、必ずしも、こちらを向いているようには見えません。この絵について、王と王妃が姿を現したので、その方に瞬間、視線を向けたときという説明があったように思うのですが、どうもそうは見えません。 それぞれの人物が、それぞれに何かをしているというか、何か自分に関心のあることに注意を向けて、王と王妃の登場など意識していないようにも見えます。王女は、少し不機嫌な顔で、正面を向いていますが、これは、王女を中心に描かれた絵とも言えますから、王女がこちら、正面を向いているのは自然なことです。 これは何の絵なのだろうかとなります。王女とその世話をする左右の侍女、これは、一つの絵の主題になっており、中心的な意味を持っています。しかし、背後の巨大なキャンパスに向かうヴェラスケスは何を意味しているのでしょうか。 中世から近世初頭にかけて、画家は、絵に署名する代わりに、絵のなかに、群集の一員として特殊な姿勢でいる自分の肖像とか、絵のなかで、主題と何故かかけ離れた人物がいて、それが画家の肖像だったりします。つまり、署名の代わりに自分の肖像を描き込んだのです。 ヴェラスケスの絵もそういう意味があるのかも知れません。ヴェラスケスは絵筆を持って、この絵のなかで何を描いているのでしょうか。また、右手の宮廷女道化師と思える女性の存在感は実に明確です。右は、この女道化師と、華奢な少女の存在感、そして左はヴェラスケスの肖像が、存在感があり、左右でバランスが取れています。 この真ん中に王女マルガリータと二人の侍女がいます。 絵のなかの画家が描いているのは、王女マルガリータの肖像ではないかとも思えます。しかし、もう少し考えると、画家は、実は、この絵そのものを描いているのではないかという想像ができます。 また、ずっと背後の扉口に立っている男らしい人物は誰かという問題もあります。わたしは或る考えがありますが、それは今回述べません。この絵の題名が、何故「ラス・メニーナス」かということが問題だからです。 この絵に題名を付けるとすると、「王女マルガリータと、それを囲む侍女達」となるのではないでしょうか。宮廷女道化師も侍女の一人ですし、その右手の少女は、これは童女に見えます。女道化師も「童女」だとすると、「王女とそれを囲む童女達」となります。 しかし、この絵のなかで、王女は、少し不機嫌な表情だとはいえ、人形のような印象があります。つまり、生き生きして存在感があるのは、左右の二人の侍女、そして女宮廷道化師と、その右の童女、犬などになります。無論、ヴェラスケスも存在感があります。 みんなそれぞれの仕事をしていて、そこに「存在感」があるのです。王女は端正過ぎて人形のようで、それに対し、侍女・童女四人が、圧倒的な存在感で絵に描かれているとも言えます。これが、この絵が、「ラス・メニーナス」と呼ばれている理由ではないかと思います。 画家には、もっと複雑な趣向や、作画意図があったように思えますが、一見ではその意図は読めませんし、ゴヤの二枚のマハの絵の背景にある事情が、わたしたちに分からないと同様、ヴェラスケスのこの絵の本当の「意図」は分からないように思います(ゴヤの絵は、最近映画になりました)。 そこで、「存在感」からして、題名は「侍女・童女たち=ラス・メニーナス」となったのだと思えます。 >ベラスケス ラスメニナス >http://www.m-n-j.com/town/entertainment/isako/velazqu.htm
お礼
回答ありがとうございます。お礼が遅くなってしまってすみません。 メニーナスの説明や参考URL、ありがとうございました。 >この絵が、最初から「Las Meninas」と名付けられていたのか定かでありません。 後で、その名前ができたという可能性が高いと思います。 そうだったんですか。初めて知りました。その可能性もありますね。 後からつけられた名前でも今では一般的になっているものって けっこうありますよね。なるほど、という感じです。 絵の中の画家は署名の代わりだというのも初めて知りました。 なんだか知らないことばかりで恥ずかしいです。 まったくの素人ですので、見当違いかもしれませんが、以前から 王と王妃=鑑賞者、とは限らないのではないか、と思っていました。 王と王妃の位置が鑑賞者の位置であるということは よく言われていますが、二人の位置はまん中よりやや左ですよね。 また、本当に鏡に映っているのかどうかはわからないと思うんです。 つまり王と王妃はあの場にはいない設定で 二人は肖像画だったり(そんなバカな、って感じですが)、 鏡だったとして、鏡には王と王妃の姿しか映っていないけれど もう一人誰かがいて、それが鑑賞者となっているのではないかと考えたんです。 鏡の位置がまん中ではないのはバランスを取るためではないかとも思うのですが。 ベラスケス本人でないとわからないことが多そうです。 今回、この絵の題名のことで質問を出したのですが、実は他にも いろいろ気になることがあるんです。 一番後ろに立っている男の人については、なぜ描かれているのか 思いつかないんです。良かったらasterさんの考えを聞かせてください。 わかりやすい説明をありがとうございました。
- kyonn
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私も絵には詳しくありません。ベラスケスは好きな画家の一人なので私自身もこのご質問の回答が気になっています。 直接の回答ではないのですがつい語りたくなってしまいました。(^_^;) この絵のおもしろさは重層的な人物配置とバラエティーに富んだ人物像にあると思うのです。 中央に王女マルガリータがいますが決して主役ではないんですね。 まわりの多彩な人物によって彼女が引き立てられているように思います。 その多彩な人物たちに目を向けてみますと・・・ まず中央に少し機嫌の悪いような表情の王女マルガリータ、左右に王女をなだめすかしているような様子の侍女たち、右端には二人の小人と犬、左端にはベラスケス自身、後ろの鏡にはフェリペ四世夫婦が映っています。奥にさらに三人の人物が見えます。 この絵を見ている我々の位置に国王夫婦が立っているというとてもおもしろい構図になっています。 ベラスケスが国王夫婦の絵を描いているところに王女がやってきて駄々をこねているという情景のようです。 「Las Meninas」ってそもそも何語か(スペイン語?)、何の意味かわからないのですが、絵の主題は王女を取り巻く侍女たちを含めた宮廷内の一風景ということなんじゃないでしょうか。 自信はまったくないのでアドバイスということで...失礼しました。
お礼
ありがとうございました。kyonnさんのお名前はよく見かけていたのですが 直接的には初めてですね。どんどん語っちゃってください。 この絵、初めて見た時に一目惚れしたのですが、不思議な絵ですよね。 ベラスケス本人でないとわからないことが多そうです。 こんな絵が美術の教科書にのってたら、私の美術嫌いは 少しはなくなったんじゃないかな、なんて思っちゃいます(^_^ゞ 不器用なだけだったんですが。 ありがとうございました。
お礼
沢山の情報をありがとうございます。 こちらこそお礼が遅くなってしまってすみません。 ほんとにツッコミどころは多いですよね。 私は美術はさっぱりなので議論とかになったらダメダメですが(笑)、 いろいろな意見を聞きたいと思っています。 語りがいのある絵ですよね。 「ラス・メニーナス」というのはやはり後から つけられたものだったんですね。 これがわかっただけでもすっきりしました。 ありがとうございます。 ヴェラスケスの胸の十字については、全く気にしていませんでした。 向こうでは十字って重要なものですよね。 社会背景を考えていないあたりに、私の甘さがにじみ出ています(汗) 背後に立っている人は、本当に「誰?何してるの?」という感じです。 でも騎士っぽいですよね。この人もベラスケスなんですか。 単純な私は家族か親戚?なんて思ってしまいました。 >練りに練られた上での画面構成上の都合で「鏡」がずれていたり、 人の立ち居地が決まっていたりするのでしょうね。 そうなんでしょうね。人の頭の位置は、王女を中心にして X(エックスorバツ)の形になっていますよね。 でも王女を中心とするとまたややこしくなりますね(^_^;) 考えた上での構成だというのは絵を見てわかるのですが、 私は、どうして天井がこんなに描かれているんだろう、と 思ってしまいます(細かいですね)。天井があった方が 見やすいのでしょうか。人物だけだと見にくそうな気もしますが。 tartempionさんがおっしゃるように、絵の背景にある時代や宗教・文化を 理解すると絵を理解する手助けになりそうですが、やはり わからない部分があるからこそ楽しめる部分もありそうですね。 いろいろとありがとうございました。 (他の方も含めて)またどんどん語りに来てください。