この場合、「言葉」と「語彙」と言うよりは、「単語」と「語彙」とを対比させて考えた方がわかりやすいのではないかと思います。単に「言葉」というと「言語」という広い意味から「単語」という狭い意味までを含んでしまいますから。
恐らく質問の中でお遣いになった「言葉を豊かにする」は「単語や表現を多く知っており、それを使いこなせる」ことを意味するのでしょう。それを前提としてお答えします。
「語彙」とは「ある範囲における単語の集まり全体」を意味する言葉です。「あの人は語彙が豊富だ」と言った場合、「あの人はとても多くの単語(や表現の仕方)を知っている」という意味になります。また、「日本語の語彙には英語の●●に当たるものがない」などと言う場合には、「日本語で用いられる単語の中には、英語の●●と1対1で対応するものがない」と解釈するのが妥当であろうと思われます。
すなわち「語彙」はあくまでも単語の集合全体を指すものであって、個々の単語を指す言葉ではないわけです。対して「言葉」は先に述べたように双方を意味することがありますから、区別が難しくなるのでしょう。
なお、こう考えてみますと、「語彙を増やす」という表現での「増やす」は「知っている単語や表現の全体としての量(ボリューム)」を増やすことを意味するのであり、個々の単語を「語彙」とみなしているわけではないと考えられます。「語彙がひとつ増えた」という表現も可能ですが、その場合には増えたひとつが「1語彙」という単位で勘定されるわけではなく、増える前の語彙と増えた後の語彙とを比べてみると1単語ぶんの差がある、と考えた方がよいでしょう。
ご参考になれば幸いです。
お礼
とても詳しく教えていただきありがとうございます。自分の中でもやもやしていたものがすっきりしたような気がします。また、疑問に思ったことがあれば教えてください。