protection of natureにthe?
派生名詞Aがof Bに後続されて名詞句を作るときパターンは3つあります。
パターン1(以後P 1とします)-- the arrival of passengers
パターン2(以後P 2とします)-- the importance of being honesty
パターン3(以後P 3とします)-- the protection of nature
どのパターンにもAにtheがつきます。というのは、例えばP1においてarrivalという語は単独で文中に存在することはできません。かならず何かの到着という形でなければ意味をなしません。ですから通常はof以下が伴って初めて文中で使えるようになります(もちろん、既に話題に出ているのであれば、of以下を省略してthe arrival was unexpectedというふうに使えます。今回の議論では、すでに話題に出ている場合を除いて行います)。ということは、of以下に限定されるのでtheがつきます。
同じことがP2とP3に言えます。よって派生名詞Aがof Bが名詞句を作って文中で言い表される時、Aにtheがつくことはdefault useだと言えると思います。もちろん、P1とP3において派生名詞が繰り返しの可能なものであれば、文脈次第でaもつきますが、今回はこの件は議論の内容から外します。
問題は表題に挙げたように protection of natureというふうにtheがつかないケースがあることです。これまで二桁のネイティブに意見を求めてきましたが、文法違反だから使わない方がよいと回答した方が結構いました。問題なく使えるとした人と同じくらいの数でした。果たしてこの名詞句がgrammatically wrongなのかどうかについて意見を聞かせて頂ければありがたいです。
まず、私自身の見解を述べます。
最初に言っておかなければならないことがあります。Aの前に冠詞がつかないケースはP3で顕著に見られます。P1やP2で無冠詞にするとおかしな文になります。おそらく非文だろうと思われます。
theのないprotection of natureが認められるとすれば、of以下の限定が意識されていないケースだということになります。では、他のP1とP2はどうなのか考察します。
P 1のthe arrival of passengersにおいてof passengersの限定が意識されずに、単に「客の到着」
を述べただけだとしたらtheがつくはずがありません。それ以外にtheがつくとしたら、the arrival of passengersの内部構造が持つ統語的機能にその理由を求めるしかありません。
the arrival of passengersはPassengers arrived / arrive / will arrive. という文を名詞句に転換したものです。これは一つの出来事または事実を述べています。一般に何かの出来事や事実はそれがどのようなものであっても絶対に一つに決まります。特定の出来事または事実です。よってarrival of passengersにtheがつくのは当然と言えます。
同じことがp2にも言えます。the importance of being honestyはBeing honesty is important. を簡略化したものです。これも事実を表しているのでimportance of being honestyにはtheがつきます。
ところが、the protection of natureはprotect natureという動詞句を簡略化したものだと想定されますが、動作主が明示されていないので文としての構造を持っていません。ということは事実や出来事の表現ではないということです。「自然を保護する」というカテゴリー的行為だと考えられます。
(この文を受動文に変換すれば動作主、つまり主語が確保されるので出来事を表します。たとえば、the protection of nature by the governments of developed countriesとすればtheがつくはずです。)
ということは、そうした観点から言うと、protection of natureにはtheをつけることができないことになります。the protection of natureにtheがつくのはof natureによる限定による場合だけということになります。
ところで、the arrival of passengersはof passengersによる限定を意識することによってtheがつく場合と、そうした意識を持たずに、単に出来事の表現であるためにtheがつく場合があることになります。the importance of being honestyも同様です。the protection of natureの場合は、of natureによる限定によってのみtheがつくと言えるはずです。
さて、the のつかないprotection of natureが出来事を表さないのであれば、「自然を保護すること」という行為を表すことになります。つまり、出来事ではなく概念を表しています。ということは原形(概念を表す)を使ったprotecting nature / to protect natureと内容的に同じものだと言えます。
よって、P: The President says that protection of nature is essential. という文はおかしくないと言えます。少なくとも文法的な誤りを見て取るのはやりすぎという気がしますが、いかがでしょうか。
もう一つ質問したいことがあります。Pにおいてprotection にtheをつけることもできます。
Q: The President says that the protection of nature is essential.
Qにおいて、無冠詞のprotection of natureは間違いだとかよくないとか言う人(ネイティブ)はtheをつけた形を許容します。protection of natureは間違いではないという人でも、theをつけた形の方がnaturalだと言います。しかし、Pの文を読む限りでは、protection of natureにおいてprotectionがof natureに限定されているようには見えません(他のものの保護ではなく自然の保護と言ってるようには見えません)。単に、ある陳述が行われたことを示しているにすぎないように思います。
protection of nature (「自然保護」)はワンセットで使われる慣用句のようなものではないかと私には思えます。そうだとしたら、of natureは限定力を持たないはずです。よってtheはつかないと思うのですがいかがでしょうか。ただし、例えば、"Protection of human rights? Yes, it's truly important. But there is something far more important. That's the protection of nature. という文が書けそうです。ここでのthe protectionならnaturalだと思います。
もう少しつめておきます。The President says that the protection of nature is essential. においてprotectionにtheがつく理由としてof natureによる限定以外に、by the governmentの省略というケースも考えられます。例えば、The President says that the protection of nature by the government is essential. において、the protection of nature by the governmentはThe government is going to protect / has been protecting nature. の簡略化であって、内容的に出来事を表すのでtheがつきます。でも、Qにおいて、それまでにthe governmentが話題に出ているわけではないようなケースも見受けられます。
にもかかわらず、ネイティブ達はtheがつくケースの方がnaturalだと言っています。これはどう考えたらいいのでしょうか。もしかしたら、派生名詞を使ったA of Bの形の名詞句においては
Aにtheをつけるのがdefault useだという意識が強いからなのかなと思ったりもしています。
ご意見をお待ちしています。
お礼
こんなに早くご回答をいただけるとは思いませんでした。 どうもありがとうございました。