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助詞「ゆ」について
助詞「ゆ」から国語文法に光をあてるとどんな風になりますか?
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まず、基本をまとめます。 (1) 格助詞 「ゆ」 は、上代語で、ほかの格助詞 「ゆり」、「よ」、「より」 とまったく同じ意味で用いられる。 (2) ただし、「ゆ」、「よ」 は、和歌でのみ用いられる (全訳読解古語辞典 三省堂)。 (3) 文献で確認されるかぎりでは、「ゆ」 がもっとも古く、「より」 が新しい (新明解古語辞典 第2版 三省堂)。 (4) 語源については、 (3) にもかかわらず、「後 (のち) 」 の意の名詞 「ゆり (後) 」 から助詞の 「ゆり」 になり、さらにほかの助詞が派生したという説もある (大辞林 第2版 三省堂 →参考URL )。 (5) ただし、「ゆり」 の用例はもっとも少ない (古語林 大修館書店、国語大辞典 小学館)。 (6) これらの助詞が語源を異にするという説は、みつからなかった。 (7) 「ゆり (ゆ)」→「より(よ)」 と変化した原因は、母音交替という現象による (岩波古語辞典 補訂版)。 (8) 平安時代になると、「より」 だけが用いられる。 以上の基本知識だけをふまえて、日本語の文法に 「光をあて」 てみます。 上代から中古にかけて、「ゆ」 など4種類の格助詞が 「より」 に一本化した過程では、その意味は変化していないということに気づきます。変化したのは、音韻 ・ 語形にすぎません。 日本語の文法は、いまでいう 〈詞-辞〉 構造として昔から理解されていたようです。上代でいえば、大伴家持が 〈辞〉 (てにをは) を意識した歌をつくって遊んでいます (萬葉集 巻19 4175, 4176 「わが門ゆ」)。 http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/kudohiro/gakusi.html おおまかには、〈詞〉 は学校文法でいう自立語、〈辞〉 は付属語にあたります。〈詞〉 が文の内容だとすれば、〈辞〉 は形式 (だけではありませんが) です。〈詞〉 には、新語や漢語、外来語など、なんでもとりこむことができますが、〈辞〉 は、長いあいだに変化することはあっても、和語のままです。 なかでも助詞については、「古代から基本的には著しい変化はない」 (世界大百科事典 「助詞」) といわれます。格助詞 「ゆ」 は、そのことを例証するのではないでしょうか。 参考 加賀野井秀一 『日本語は進化する』 2002年 NHKブックス