不可算・可算の両様に使われる名詞のカテゴリー用法
可算・不可算両様に使われる名詞が辞書においてどのように定義されるか、特に、定義文である<X is Y. >においてXの部分に定冠詞がつく場合とつかない場合との違いに注目しています。今回、その代表的な例としてnightを取り上げますが、nightを取り上げた理由は、不可算・可算の両様に使われる名詞が<X is Y. >という形式で定義されている辞典(ただしonline)はCobuildだけだったということと、Xの部分に定冠詞がつく場合とつかない場合を併記していたのがCobuildだけだったということにあります。
Cobuild(online版・CDロム版)によれば、可算用法のnightの定義は次の通りです。
A:The night is the period of time between the end of the afternoon and the time that you go to bed, especially the time when you relax before going to bed.
この定義では、可算名詞かどうかの決定がしづらいと思います。それにeveningの定義と重なり合うので好ましくありません。次に紹介するB(CDロム版における可算名詞用法)の定義の方が明確です。
B: A night is one of these periods of darkness. You usually refer to a particular period as the night.
例文はHe was at the hotel and intended to spend the night there.
またCDロム版には不可算用法があります。
C: Night is the period during each 24 hours when it is dark. If something happens regularly during this period, you say that it happens at night.
またonline版にこういうのもあります。
D : the period of darkness each 24 hours between sunset and sunrise, as distinct from day.
DはCと同内容のものです。無冠詞のdayと対比されています。
Dにおいては無冠詞のnightが<暗い期間>と定義されています。その場合、dayは<明るい期間>です。
(online版・CDロム版)において次のような定義もあります。
E: The night is the part of each day when the sun has set and it is dark outside, especially the time when people are sleeping.
partと言ってるからには、一日を2分割して各部分をそれぞれthe day (昼の時間帯)、the night (夜の時間帯)ととらえたか、あるいは一日がthe day (昼の時間帯)とthe night(夜の時間帯)からなっているととらえたかどちらかだと思われます。不可算用法です。a day (一日)を構成するthe dayとthe nightはワンセットで概念枠組を作っています。
私だったら、Eの代わりに、Dを少し変えて
F: The night is the period of darkness each 24 hours between sunset and sunrise, as distinct from the day. と定義したいところです。この定義に当てはまる例文は掲載されていないので、私が作っておきます。
These days we often have rain. Usually it begins to fall in the morning, and stops in the evening.
習慣的意味を明確にするためにin the mornings /in the eveningsとすることもできます。
ただし、注意すべきことがあります。概念枠組が機能するのは一般的・習慣的文脈においてであって、特定の時間を暗示する文脈においては夜間や昼間の意味は出ません。例えばRain began to fall in the night, and stopped (on) the next morning. において、the night はlast night / the previous nightを表します。カテゴリーを表すa nightの成員です。
ここから本題に入ります。本題はC (D)における無冠詞のnightとFにおけるthe nightとでどのような相違点があるのかということです。
CのNight is ----におけるnightは概念であって、ここでは夜というカテゴリーを表しています。成員(外延)はa night, the night, -----その他形容詞をつけると無数に成員が存在します。この場合のnightは我々が思い浮かべる最も普通の(暗い時を表す)夜だと思います。ただし、一般に、我々がある語を思い浮かべる時、その語だけが単独で思い浮かぶことはあり得ません。強く意識されるかあまり意識されないかの違いはあるでしょうが、必ず何らかの語(概念)と共に想起されるはずです。例えばnightであれば、darkness, silence, nightmare, romantic feeling, sleep -など。共に想起されるからと言って強い結びつきがもともと存在するわけではありません。話者のその都度の気分や思惑次第で結びつきの対象や強さが異なります。また、話者の側の情感や関心を伴って結びつくこともあります。この場合のnightは補完的な意味を持つdayとも緩やかなつながりしか持ちません。典型的な使用例はStars are seen at night. です。
注意すべきことがあります。補完的な意味を持つdayにはat dayという言い方はありません。
では、Fのthe nightはどうなのかというと、やはりカテゴリーを表していると思います。本来はnightの外延であるはずのものがなぜカテゴリー表現として使われることになったか考えてみます。これは私の推測ですが、the nightとthe day (通常はthe daytime)はある出来事や状況を描写するための背景装置として使われるものだと思います。それゆえ、通常はin the ----の形で使われるものと思われます。ということは、補完しあう時間要素であるday (昼間)との結びつきが相当に強いものとして設定されているはずです。the nightは{day, night}という概念枠組の片方と考えてよいと思います。the nightという語と共に想起されうるのはthe day(time) だけだと思います。
では、夜間を表すカテゴリーであるthe nightの成員はと言うと、おそらく、一日という全体から区分された夜をさらに下位区分したものだと思います。例えば、the early night, the late nightです。ただし、現代英語では使われない古風な言い方だとのことです(ネイティブのコメント)。これが、eveningだとthe early evening やthe late eveningというふうに普通に使われます。
ついでに、a nightは毎日繰り返してやってくる夜を表すカテゴリーです。成員はa night, the night, the following night, last night, Saturday night, nights ---
補完的な意味を持つa dayも同様に分析できますが、成員として使われている例文を挙げるに留めておきます。Completing the task took 2 days and 3 nights. (まる2日とさらに1夜かかった)
a dayには計測単位として1日の意味もあります。Completing the task took 2 days. だと、2日かかったことを表します。
<概念-カテゴリー-成員>の枠組みを使って整理してみます。
<可算用法>--定義文B
概念(night) -カテゴリー(a night) -成員(a night, a moonless night, nights, the night, the previous night, the night we spent ---)
<不可算用法 1>--定義文C
概念(night) -カテゴリー(night) -成員(night)
<不可算用法 2>--定義文F
概念(night) -カテゴリー(the night) -成員(the early night, the late night ---ただし現代英語では使わない)
いかがでしょうか。
お礼
ありがとうございます。大変参考になりました。