こういう話は、自分の腕がどうであるというファクターを無視しては議論不可能です。
槍術の稽古を何年どこでやるかです。
剣術の場合は、防具をつけて竹刀で向き合って対戦の訓練ができます。面や胴という失点で決めるのをやめ、竹刀をとばされたり倒されたりしたときに負け、というルールでも可能です。
が、槍でそれをやる場合は、カタチで一手、というところで止めざるを得ません。仮に刃をつけていない棒状態のやりであってもうかつに着き、をやったら咽喉にめり込み殺す可能性があります。
もちろん槍術の名人ならば、ぴたり紙一枚で止めてまいったと言わせることは可能でしょうが、素人はそこまでいくのは大変です。
そういうわけで、相手を死に至らしめるような稽古は原則やらないというのが普通です。
それでやりをもって、山の中で熊がでたらこれを殺す? もはやおとぎ話かという話にしか聞こえません。もちろん多少の傷を負わすところまではやれるかもしれないけど、心臓をぶすりとやって失血死させるなんて言うのは即死じゃないですよ、十分はかかります。そのあいだに相手は逆上していてあの体格で牙もあるんです。こちらを殺さないでどうするのですか。
昔は、時間を見て、クマが出そうな時刻になった、ならもう山には入らないというのが普通です。そして、何かの理由で通り抜ける必要が発生したら、握り飯のような、個数がたくさんの餌を持って移動したのです。万が一出会ったらころころひとつずつ転がしていけば、いちいち拾って食べますから、逃げる時間が稼げます。
熊自体を対象に商売しているマタギなんかを別として、万が一にも命の取り合いにしようと考えたものはそうそうはいなかったものだと思いますよ。