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空間群の考え方について
空間群P3の対称性について考え方を教えてください。 よろしくお願いします。
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> 質問なのですが、電場や磁場を印加するとき、空間群P3の結晶のa, b, c軸に印加した場合や空間群C2の結晶のa, b, c軸に印加した場合で、どの方向に分極や磁化が現れるかはどのように判断できるのでしょうか 誘電率や磁化率を表す2階の対称テンソルが、点群の対称操作によって変化しないこと、を考えると、ある程度は判断できます。 まず、結晶の誘電率や磁化率が、単なる数ではなく、一般には2階の対称テンソル(ひらたく言えば3×3の対称行列)として表される、というのはいいですね。これらがテンソル量なので、結晶に印加された電場や磁場の向きと、結晶に誘起された分極や磁化の向きは、一般には一致しません。ですけど、どんな結晶でも、分極や磁化が印加された場と平行になる方向が少なくとも3方向はあり、これらの方向のうちから互いに直交する方向を3つ選ぶことができます(もともと3方向しかないときは、それらがすでに直交しています)。これらの方向を主軸方向といい、そのときの誘電率や磁化率の値を主値といいます。このようなことが言えるのは、実対称行列が直交行列により対角化可能だからです(詳しくは学部一年で使った線型代数の教科書を参照してください)。 そこで、つぎの問題は、このテンソルの主軸方向と主値について、結晶の対称性だけから言えることがどれくらいあるのか?ということになります。いろいろな考え方があるとは思うのですけど、私が好きなのは、対称テンソルを楕円体として頭の中でイメージすることです。 重心が原点にある二次元の楕円が、一般に、短径の長さ、長径の長さ、長軸とx軸の間の角度、で表されるように、重心が原点にある三次元の楕円体は、三つの径の長さと、それらの軸の方向で表すことができます。三つの径の長さがテンソルの主値に対応し、それらの軸の方向がテンソルの主軸に対応します。この楕円体に点群の対称操作を施したときには必ずもとの楕円体と重なり合う、というのが結晶の対称性から要請です。 これだけでは、イメージしにくいと思いますので、例を示します。 例1:単斜晶 二回軸がありますから、楕円体の主軸の一つは結晶の回転軸と一致してなければなりません。そうでなければ、回転操作をしたときにもとの楕円体と重なり合いません。空間群C2であれば、楕円体の主軸の一つはb軸と一致し、残りの二つの軸はac面内にあればどこでもかまいません。 例2:斜方晶 二回軸が三つありますから、楕円体の主軸はすべて結晶の回転軸と一致してなければなりません。そうでなければ、回転操作をしたときにもとの楕円体と重なり合いません。つまりテンソルの主軸と結晶軸は一致します。 例3:三方晶系 三回軸がありますから、楕円体の主軸の一つは結晶の回転軸と一致してなければなりません。さらに残りの二つの径の長さは一致してなければなりません。つまり回転楕円体でなければなりません。空間群P3であれば、回転楕円体の主軸はc軸と一致し、残りの二つの軸はab面内にあればどこでもかまいません。 例4:立方晶系 楕円体の三つの径の長さはすべて一致してなければなりません。つまり球でなければなりません。 以上のことを踏まえると、以下のことがいえます。 空間群P3の結晶のc軸あるいはab面の任意の方向に印加した場合、印加した方向に分極や磁化が現れます。それ以外の方向に印加した場合は、ずれます。どれだけずれるかは点群からはわかりません。 空間群C2の結晶のb軸に印加した場合は、印加した方向に分極や磁化が現れます。それ以外の方向では、ac面内に2方向だけ、ずれない方向があります。他は、ずれます。どれだけずれるかは点群からはわかりませんが、ac面の任意の方向に印加した場合は、ずれたとしてもac面内にとどまります。
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- 101325
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#4に間違いがありました。 誤:C2のab面が鏡映面になると、空間群はC2/mに 正:C2のac面が鏡映面になると、空間群はC2/mに ごめんなさい。
お礼
ありがとうございます。 質問なのですが、電場や磁場を印加するとき、空間群P3の結晶のa, b, c軸に印加した場合や空間群C2の結晶のa, b, c軸に印加した場合で、どの方向に分極や磁化が現れるかはどのように判断できるのでしょうか。
- 101325
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> 確認したいのですが、リンク先の図は、空間群P3の3回回転軸はc軸方向で、鏡映面はab面、空間群C2の2回回転軸はb軸方向で、鏡映面はac面という見方であっていますでしょうか。 はい。ほぼ合っています。 P3にもC2にも鏡映面はないので、「鏡映面」という単語は「画面」(モニタで見てる場合)あるいは「紙面」(紙に印刷してから見ている場合)に置き換えてください。 なおP3のab面が鏡映面になると、空間群はP-6に http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/medium/174az1.htm C2のab面が鏡映面になると、空間群はC2/mに http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/medium/012ay1.htm なります。 これらの図では、P3やC2と違って、左下に鏡映面の記号 \_ ←こんなやつ が書いてあるのが分かると思います。 これらの記号の意味は、いちおうリンク先にも書いてある http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/misc/symbols.htm …と思ってたのですけど、さすがにこれだけじゃ意味不明ですね。説明不足でごめんなさい。 「international tables for crystallography 見方」でネット検索してみてください。 何となくこれらの図の読み方が分かるようになると、何となく役に立つと思いますので、何となく勉強してみてはいかがでしょうか。
- 101325
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■空間群のヘルマン・モーガン記号について 空間群のヘルマン・モーガン記号の一文字目はP,I,F,A,B,C,Rのいずれかです。 これらの大文字のアルファベットはそれぞれ Pは単純格子、 Iは体心格子、 Fは面心格子、 AはA底心格子、 BはB底心格子、 CはC底心格子、 Rは菱面格子、 を表す記号です。ヘルマン・モーガン記号で表した空間群C2の一文字目のCは、シェーンフリース記号で表した点群C2(あるいは対称要素C2あるいは対称操作C2)の一文字目のCとは、何の関係もありません。 空間群のヘルマン・モーガン記号の文字列から まず一文字目を取り除き、 つぎに下付文字を全て取り除き、 さいごに小文字のアルファベットを全てmに置き換えると、 その結晶の点群を表すヘルマン・モーガン記号になります。 下付文字を除くという操作は、らせん軸を回転軸に置き換える操作に対応します。、 アルファベットをmに置き換えるという操作は、映進面を鏡映面に置き換える操作に対応します。 点群を表すヘルマン・モーガン記号と点群を表すシェーンフリース記号の対応付けは、アトキンス物理化学などの、教科書にある表を参照してください。 結晶系は点群を表すヘルマン・モーガン記号から読み取れます。 点群を表す記号の二文字目(空間群を表す記号の三文字目)が3か-3なら立方晶です。 それ以外で、点群を表す記号の一文字目(空間群を表す記号の二文字目)が 1か-1なら三斜晶系で、 2かmなら単斜晶系か斜方晶系で、 3か-3なら三方晶系で、 4か-4なら正方晶系で、 6か-6なら六方晶系です。 http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/medium/sgp.htm ブラベー格子はP,I,F,A,B,C,Rと結晶系の組み合わせから分かります。これも教科書にある図表を参照してください。 ■空間群C2について 以上を踏まえて空間群C2について考えてみます。 一文字目がCなのでC底心格子です。 三文字目が3でなく、二文字目が2で、斜方晶系ではないので、単斜晶系です。 もし三文字目が3だったなら、立方晶系です。 もし下付文字を除く二文字目~四文字目が、xを小文字のアルファベットとして 222かxx2かxxxだったなら斜方晶系です。 C底心格子と単斜晶系の組み合わせなので、ブラベー格子は、C底心単斜格子です。 http://img.chem.ucl.ac.uk/sgp/medium/005ay1.htm 二文字目以降が2なので、結晶点群は、ヘルマン・モーガン記号で書けば2です(シェーンフリース記号で書けばC2です)。 結晶点群が2なので、対称要素は2回回転軸しかありません。 回反軸を持ちませんので、左右像があります。 極性がありますので、焦電性があります。 ■結晶の対称性の高さについて おおまかには次の順で対称性が高くなります。 縮退がないので対称性が低い:三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系 二重縮退があるので対称性が高い:正方晶系、三方晶系、六方晶系 三重縮退もあるので対称性が最も高い:立方晶系 縮退とは分子の電子状態や分子軌道や振動モードに関する縮退のことです。 縮退と点群については、点群の指標表を参照してください。 指標表のいちばん左の列の記号が、それぞれ AかBなら縮退なしの対称種、 Eなら二重縮退の対称種、 Tなら三重縮退の対称種、 です。 また、2階テンソルで表されるような結晶の性質、たとえば誘電率とか磁化率とか、に注目しても、上と同じで 三つの主値が全て異なる:三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系 三つの主値のうち二つが等しく軸対称性を持つ:正方晶系、三方晶系、六方晶系 三つの主値が全て等しく等方的である:立方晶系 という順になります。 ■追加の質問について > 質問なのですが、「結晶がC2かP3に分類される」とあったのですが、これは「結晶がC2かC3に分類される」と同義ということでしょうか。 いいえ。同義ではありません。今回の場合は、結果として「結晶がC2かC3に分類される」ことになりましたが、ヘルマン・モーガン記号で表した空間群の一文字目の記号と、シェーンフリース記号で表した点群の一文字目の記号は、無関係です。 > また、C2とP3の特徴の違いは回転軸が2か3の違いでC2の方が対称性が高いということでしょうか。 回転軸の違いに加えて、底心格子か単純格子かの違いもあります。 また、ふつうは回転軸が2よりも3の方が対称性が高い、とみなすことが多いです。 例えば、主軸に垂直な方向に電場や磁場を印加して、結晶の誘電率(または電気伝導度)や磁化率を測定すると、2では異方性が現れますけど3では等方的(外場の向きが主軸に垂直な面内にあれば測定値が不変)になります。 別の例では、C2vの水分子H2OよりもC3vのアンモニア分子NH3の方が、対称性が高いですよね。後者は分子軌道や振動モードに縮退がありますので。 ただし、C2もC3もC6の対称性を落としたもの、と考えれば、つまり C2はC6が歪んで3回回転軸を失ったもの、 C3はC6が歪んで2回回転軸を失ったもの、 と考えれば、C2とC3の対称性の高さは同じくらい、ということもできます。
お礼
詳しい解説ありがとうございました。確認したいのですが、リンク先の図は、空間群P3の3回回転軸はc軸方向で、鏡映面はab面、空間群C2の2回回転軸はb軸方向で、鏡映面はac面という見方であっていますでしょうか。
- 101325
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一文字目がPなので単純格子です。 二文字目が3なので三方晶系です。 Pと3の組み合わせなので、ブラベー格子は、単純六方格子です(もしRと3の組み合わせだったなら、菱面格子です)。 二文字目以降が3なので、結晶点群は、ヘルマン・モーガン記号で書けば3です(シェーンフリース記号で書けばC3です)。 結晶点群が3なので、対称要素は3回回転軸しかありません。 回反軸を持たない点群なので、左右像があります。 極性がある点群なので、焦電性があります。
お礼
回答ありがとうございます。質問なのですが、「結晶がC2かP3に分類される」とあったのですが、これは「結晶がC2かC3に分類される」と同義ということでしょうか。 また、C2とP3の特徴の違いは回転軸が2か3の違いでC2の方が対称性が高いということでしょうか。
- doc_somday
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シェーンフリース点群にも無いしなー。 「数学」かな?
お礼
これから知識を深めていきます。ありがとうございました。