品質屋です。クレーム処理などにコンサルもしています。
気を付けてください、といいたいのは客を「クレーマー」と呼んでいることです。
悪質クレーマーと呼んだ段階で事態は悪くなっていますよ。
難癖屋だとか、営業妨害客、ととらえたら、態度に出ますよ。ここに気をつけてください。
もちろん、苦情を言うことで補償をとろうとか明確な別目的でやってくるヤーサマや弁護士がいます。
この人たちは、寸止めを心得ていて、カメラで不審行動をとられたり書き物で証拠をのこしたりして警察に通報されるようなへまはしません。
さらに謝罪の言葉などをうっかり発すると、それをネタにゆすりが増幅します。
アメリカで容易に製品の瑕疵を認めたり謝罪を言ったりしてはいけないというのはこのことを言っています。
でも、そういう意図がある人ばかりが苦情を言ってくるわけではありません。
店で渡した品が事故品だったら当然苦情を言うのが人間です。当たりまえです。壊れてたよ、交換してよ、というのをクレーマー扱いしたら喧嘩ごしの店ということになります。
この場合正規品と無償交換をしたり、さらにちょっとおまけをつけたら黙ります。
補償が容易です。ボヤで火は消し止められます。
問題になるのは店員の対応が乱暴だったとか無視をされたとか要望を断るときにバカにしたというようにお客が感じた場合です。
これは感情的な問題になりますので、おさめようがなくうろうろしていたらどんどん事態は悪化します。
社長を呼べとかあの係員をクビにしろという話になります。
一番の問題はこの種のお客様は、トラブルの広告塔になってしまうことです。
あそこはひどい店よ、買わないことにきめたわ、あなたもやめたらどう、という拡散です。
こういう人を「クレーマー」と呼んで嫌がっていたら、商売はつぶれる方向に進みます。
誰が客を当たりや呼ばわりする店に行きたいと思いますか。
ここで思い出してください。お金をとろうとしてたかってくるヤーサマや弁護士の類。
この人たちはクレームの拡散は絶対にしません。捕れる漁場は独り占めしたいからです。
カネでどうにでもなります。また、餅屋は餅屋ですからこちらも弁護士に依頼すればいいだけです。
どうにもならないのは一般人のほうです。
質問者様は店舗側ではなさそうだからピンとこないかもしれない。
では改善報告の話に進めます。
あなたは文章の達人らしいから制御はきいていると思いますが、よくある話をしましょう。
改善報告、といってもまあ始末書です。
始末書を「ごめんなさい報告」として出す人間が多い。これは受け取れません。
相手がいいよといってくれることだけを期待しているからです。
このとき、ほとんど必ずといっていいのは書いている自分は悪くないと思っているだろうなという匂いがこもるのです。
そして、通り一遍の言い訳が結論になるのです。
「今後は一丸となって注意する」とか「再現しないように全力で努力する」というようなきれいごとです。
自分の社で提出を求めた始末書なら、私は書き直しを要求します。
なぜか。
これだと事故は必ず再現するからです。
自転車で転んだことがある人間が「これからは絶対転ばない、転んではいけない」と走っていたら絶対転ぶでしょう。
こういう曲がり角で転ぶんじゃないか、と始終思うから、事故を誘発するのです。
違う観点からいいましょうか。
自分のせいではないと思っている人間が書いた「これから起こしません」はカラ約束ではないですか。
だったら、起こしません約束はウソですね。
そんなもの、受け取れませんね。
始末書で私が求めるのはこういうことです。普通そうなんですが、マネージャクラスでもこの観点を徹底できないひとが多いから言います。
・今回の問題点は何だったか。
これは必要です。始末書の提出相手と自分とが同じスタンスで物事をとらえているかどうかの担保です。
もしかすると、記載した事項では足りないと指摘を受ける場合もあるので明確にすべきです。
・問題点発生原因は何か。
個人名だれだれのミス、ではなく、こういう作業でこういうミスをした、とかこの工程を怠ったという説明にしてください。
たしかにそれをちゃんとしていれば起きなかったという説得力のある記載でなければいけません。
それだけでは足りないだろうという発想がここに生まれる余地をつくります。
・再現防止に考えた対策の報告。
同じことをやったら再現する可能性があります。ですから、再現しないために新たに行う計画を述べます。
注意するだとか努力するなどとはいわない。それは本来やるべきことであるから対策にならんのです。
3段落でこれらを書きます。
全社で気をつけます、だの努力する、なんていっても、どうせベンチャラだ、ごまかしだ、とみられて信頼は回復しません。
この3視点での報告を出せば、明確にツッコミどころを作っています。
これは大丈夫か、この視点の対策はないのか、と相手が言えるのです。
相手が再発防止に参加してくれることになります。
そして、明確に書いていますから、最初の2観点、問題点と原因を相手に認めさせることになります。
この原因には相手も関与しているかもしれません。
(書き方は相手の責任といわないように工夫し、お客様がこうこうとお考えのことを弊社担当者が誤認し、という言い方にします)
もし何もツッコミがなければ容認したということですから、この提案を実行すればいいだけです。
相手はもう苦情のいいようがなくなってしまったという状況を作ったのです。
さてさて、ここで管理範囲ということが自然に吸収されているのがおわかりでしょうか。
クレーマー処理ということの根幹にあるのはヒアリング能力です。
中央公論新書に
「となりのクレーマー 「苦情を言う人」との交渉術」(関根眞一)というのがあります。
是非お読みになられることをお勧めします。
関根さんはこの話に関する著書が何冊かあります。
百貨店のクレーム処理専門をやっていたひとですから、実体験はものすごいですよ。
お礼
とてもご丁寧にありがとうございます。 私が今まで改善報告書を書くにあたり気をつけていた点が正しかったのだとほっとしました。 私は今までは自分が責任者としての気持ちを持ち、自分がミスしたかのように思いながら書いておりました。 本を買ってみます。 ありがとうございました。