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中国の唐律疏義について書かれた本を探してます
私は中国の法制史について調べているのですが、「唐律疏義」の日本語訳が載った本が見つけられません。 なにかいい本、またはサイトはないでしょうか。
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早々の折り返し並びに丁寧に状況をお知らせいただいて恐縮です。 日本の歴史学会、古代史学会で「令」に関する研究が「律」のそれよりも比率的に多い背景には、両者の間にある法的性格の差違が作用しています。前者の「令」は行政法と一般に呼ばれ他方の「律」は刑法に相当するとの認識から、令の性質を通して古代国家の姿を観ることでその特質を明らかにできうると考えるからです。とはいえ令にも「捕亡令」「獄令」の規定があることですから、強ち両者が全く別次元の所在であるとは断定もできないことも確かです。 少しテーマからは離れてしまいますが、日本中世史の分野で黒田俊雄・黒田日出男・笠松宏至・勝俣鎮夫・清水克行の各氏が「中世の人々が感じていた法規範と感覚のずれ」の問題で興味のある研究を行っています。 読みやすいところから行きますと『中世の罪と罰』(東大出版会:網野善彦・石井進・笠松宏至・勝俣鎮夫-共編)、『喧嘩両成敗の誕生』(清水克行:講談社選書メチエ)、『日本神判史』(中公新書:清水克行)、『戦国の作法 -村の紛争解決-』(藤木久志:講談社学術文庫)『境界の中世 象徴の中世』(東大出版会:黒田日出男)『日本中世法史論』(東大出版会:笠松宏至)『室町社会の騒擾と秩序』(清水克行)、これらは幕府法や律令などよりも実地レベルでどの様な規範が執行されていたなどに焦点をあてています(現在の学会の到達点で申しますと、日本の中世では「アジール」と呼ばれる寺社による自治直轄管理される空間が存在し、そこには当事者である寺社以外の如何なる権力も介入できなかったとの見解が共有されています。ということはそこに帰属する人間は世俗の身分秩序および地位からみれば卑賤であっても移動や商行為などの部分で自由があったともいえます)。 本題に戻りますが、『訳注日本律令』に関しては、価格的に高めですので、公共図書館で先ずは内容をお確かめになられた上で購入の検討をされることをお勧めします。 同時にお薦めできる書物は中田薰氏の『法制史論集』これは日本史学・法史学を学ぶ上で古典的な著作ですので是非一読をお勧めします。そして実際の研究手法として参考になるのは、マックス・ヴェーバーの『法社会学』『支配の諸類型』等の古典的な著作があります。
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- TANUHACHI
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こんばんは、夜分に失礼します。 中国の法制史研究ならば、先ずあたるべきは仁井田陞氏の著作です。同氏による『中国法制史研究』の第一巻が「刑法」だったと記憶しておりますが、この古典的文献には既にあたられているでしょうか。 また「律令」の問題を扱うならば、岩波の『日本思想体系』の『律令』および律令研究会編纂による『訳註日本律令』の該当巻、関連する論文にもあたる必要があります。 質問者様が学部および院に在籍している方であるなら、既に何らかの形で学会誌には目を通されていると存じますが、日本の古代史学会の潮流としてはどちらかといえば「律令」の「令制からの研究が盛んです。しかしながら「律」に関しての研究が全く等閑にされているかといえばそうでもないといえますので、日本法制史学会のホームページから該当する研究をリストアップすることをお勧めします。 少しばかりお時間をいただければ、今少し文献をご紹介させていただきたいと存じます。また「サイト」を利用するのは学に志す者ならば邪道ともいえますので、老婆心ながらご忠告させていただきます。
お礼
こんにちは、早速のご回答ありがとうございます。 まず私のことを言いますと、学部や院には在籍していません。個人的興味で調べようと思った次第です。まだ調べ始めたばかりですので、いろいろ拙いところがあると思います。 学会誌は目にしたことがなく、日本の古代史学会の律令での調べは令のほうが研究が盛んだと聞いたことも驚きました。 >『中国法制史研究』 ご紹介いただき、ありがとうございます。仁井田陞氏といえば、『唐令拾遺』を書いた方ですね。まだ読んでいませんので、参考にさせていただきます。 >岩波の『日本思想体系』の『律令』 ご紹介ありがとうございます。この本も読んでいませんので、参考にさせていただきたく思います。 >『訳註日本律令』 実は買おうかと検討していたのですが、TANUHACHI様がご回答に書かれていましたので、買う決意ができました。ありがとうございます。 >日本法制史学会のホームページから該当する研究を~ 日本法制史学会というサイトがあるのですね。さっそく参考にします。 また、今回質問したことについて、質問文がわかりづらい内容となってしまったことをお詫びします。 『唐律疏義』は永徽律の注釈であり、『永徽律令』が律令の完成形だと聞きましたので、そのすべての内容がどのようなものか確かめたいと思った次第で、足がかりとして『唐律疏義』全文日本語訳を求めました。 ただこのサイトの回答欄に、その全文、また日本語訳が記された文を紹介するとなると、大変な長文になってしまう上、量的にも不可能だと思いましたので、『唐律疏義』の全文日本語訳(注釈)が載った書物を紹介していただきたいと思い、このような質問をさせていただきました。 しかし、TANUHACHIさんの紹介してくださった『訳註日本律令』が私の要求を満たしてくれそうです。さらに 『中国法制史研究』『日本思想体系』の『律令』といった書物も紹介いただき、ありがとうございます。 文献のご紹介をしていただけるとのことですので、お礼だけでとどめておきます。
お礼
こちらこそ、丁寧に教えていただきありがとうございます。 >古代史学会で「令」に関する研究が「律」のそれよりも比率的に多い背景には~ 律令ですと、「令」のほうがその当時、どのような行政があったか、どんな特質があるかわかりやすいのですね。研究が盛んであることも納得がいきました。 >黒田俊雄・黒田日出男・笠松宏至・勝俣鎮夫・清水克行の各氏が「中世の人々が感じていた法規範と感覚のずれ」~ >『中世の罪と罰』 >『喧嘩両成敗の誕生』 >『日本神判史』 >『戦国の作法 -村の紛争解決-』 >『境界の中世 象徴の中世』 >『日本中世法史論』 >『室町社会の騒擾と秩序』 教えていただきありがとうございます。さっそく読んでみたいと思います。 律令だけでなく、実地レベルの規範について焦点をあてた本があったのですね。たしかにそちらのほうが、小さな罪についてどのような量刑が行われていたかわかりやすいです。 >現在の学会の到達点で申しますと~ アジールというと、「統治権力が及ばない場所」、という意味でとっていいでしょうか。 寺社には自治直轄管理の空間があったとは、寺社は当時の社会において特別な存在だったんですね。 比叡山延暦寺も独立性を保っていたことを思い出しました。 >ということはそこに帰属する人間は世俗の身分秩序および地位からみれば卑賤であっても移動や商行為などの部分で自由があったともいえます 当時の人にとっては夢のような場所です。アジールについても興味が出てきました。 >『訳注日本律令』に関しては、価格的に高めですので~ 地元の公共図書館を調べると、確かに『訳注日本律令』がありました。内容を確かめてから購入を決めたいと思います。ありがとうございます。 >中田薰氏の『法制史論集』 大変興味深い書物です。ご紹介いただきありがとうございます。 >マックス・ヴェーバーの『法社会学』『支配の諸類型』等の古典的な著作があります。 この方のほかの著作も読みましたが、興味深い本が多くありました。じっくりと読んでみたいと思います。 初心者の私にも、ご親切にさまざまな書物をご紹介していただき、ありがとうございます。 TANUHACHI様のご回答をベストアンサーとさせていただきます。