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放射性物質の出処、処分について
原子炉などに使われる放射性物質は自然界にあるウランなどを濃縮したものだと思うのですが、どのくらい濃縮されているのでしょう。 福島の原発で放射性物質の流出がありましたが、海水で希釈されて自然界と同じ程度の濃度にはならないのでしょうか。 もともと自然にあったものを濃縮して使っているだけなら、原発一つ分の放射性物質くらい海の希釈性をもってすればどうってことないと思われるのですが。 食物連鎖で大きな魚に蓄積される、とは言っても福島、日本近海程度では済まないのでしょうか? 日本だと人形峠、東濃鉱山など聞きますが、もともとあった場所の地下水等は危険だったりしないのでしょうか?
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- indoken2
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天然のウランは、核分裂を起こさないウラン238が大部分で、核分裂を起こす性質を持っているウラン235は約0.7%だけです。 原子炉などの燃料として使うためには、ウラン235の割合を人工的に高めます(=濃縮ウラン)。 濃縮の程度は、ウラン235の割合(=濃縮度)で表わしますが、軽水炉では、濃縮度 2から5%程度、原子爆弾では、濃縮度90%以上です。 “原子炉用では2から5%”というのが最初の答えです。 さて、以下の、 原子炉で使う濃縮度5%のウランは、海水で希釈されて自然界と同じ程度の濃度にならないか などのご質問について、理解するには、前提として知って置かなければならない事がいくつかありますので、それを含めて説明します。 まず、 「ウラン濃縮は、ウラン以外の物を減らしてウランの濃度を上げるという意味ではない」について。 上にも書きましたが、ウランの中には核分裂するウランと、分裂しないウランがあり、普通“ウラン濃縮”と言う時の意味は、ウラン238に対して分裂するウラン235の割合を濃縮するという意味なのです。 ですから、海水などで希釈されても、ウラン238に対するウラン235の割合はほとんど変化しないので、“濃縮ウランのまま”希釈されるということになります。 ということで、言葉としてはちょっとおかしいですが“薄まった濃縮ウラン”になる というのが答えです。 「原発で放射性物質の流出がありましたが、海水で希釈されて自然界と同じ程度の濃度にはならないのでしょうか。」について。 先ず第一に、原発から“流出した放射性物質はウランではない”ということが重要です。 流出したのは、核分裂反応によって新たに出来た“核分裂生成物”です。 やっかいなのは、この核分裂生成物が元のウランの“何百万倍”(数値は不確かで)もの放射能を持っていて、その核分裂生成物の一部、セシウムや、ヨウ素、キセノンなど、ガスになりやすい放射性物質が事故で流出したのです。 もともと自然界には存在しないものですから、海水でいくら希釈しても“自然界と同じ程度の濃度にはならない”が答えです。 「食物連鎖で大きな魚に蓄積される」について。 今回流出した放射性物質の内で、キセノンはガスですので、濃縮されません。 放射性ヨウ素は半減期が短いので、今はもう残っていません。 問題はセシウムですが、これはカリウムに似た性質の元素で、キノコなど一部の生物で濃度が高まることはありますが、“食物連鎖で大きな魚に濃縮されるという性質は余りありない”というのが答えです。 「人形峠、東濃鉱山など聞きますが、もともとあった場所の地下水等は危険だったりしないのでしょうか?」について。 質問は再びウランに戻るわけですが、核燃料のウラン自体の放射能は極端に高いものではありません。(繰り返しですが、原子炉の中で核分裂反応が連続して起きることで放射能が著しく高くなるのです) ウラン鉱山の放射能はある程度高いですが、人間が中に入って作業できる程度のレベルです。 とはいっても、鉱山跡や残土の処理、ウランと共に こういう地域で濃度が高まる放射性のラドンなどの安全性が懸念されていることは事実です。
補足
まず、まとまっていない質問にも細かく回答していただきありがとうございます。 とてもわかりやすかったです。 ウランの濃縮については、「ウラン中のウラン235の割合を高めたもの」であってウラン235の高めることで核分裂反応が継続して起こる。 自然界中ではウラン235の割合が低いため核分裂反応が連続せず、ウラン鉱山中であっても放射能は高くはない、という認識であっていますでしょうか?