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TEMで原子一つを見ることができるのでしょうか?
電子顕微鏡関係の参考書に、次のような文が書いていました。 「TEMは原子一つ一つを見分けることができる顕微鏡である」 これは、透過してきた電子が格子の像を映し出すために原子一つとして見えると解釈しましたが・・・・ 原子一つだけが見えたという報告はいままでにあるのでしょうか? また元素や結晶方位面の区別はつくのでしょうか? 変な質問ですいません。 よろしくお願いします。
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電子顕微鏡屋です。 「原子が見えている」と称する格子像は、最近の透過電子顕微鏡 (Transmission electron microscope)ではかなり簡単に撮影できる ようになってきました。(わたしにも、うつせます。) しかし、ここで大きな誤解がありまして、見えている像のつぶつぶは 文字通りの「1つ1つの原子の像」ではなく、「原子列」の像です。 格子像がとれるのは、結晶質の試料の場合で、その場合も観察方向を 調整して、原子列がまっすぐにこちらを向くようにします。 また、元素分析については、多分特性X線による分析でしょうが、これも 1つの原子ではとても無理です。電子銃が強力(正確に高輝度)に なってきて、かなり細かい領域の分析ができるようにはなってきたのですが。 一方、結晶方位面は電子顕微鏡の得意技ですので、結構細かい領域でも わかります。といっても、原子数10個は要るでしょうけれど 文字通り原子1個1個が見えて、またこれが分析できる装置としては 「電界イオン顕微鏡+アトムプローブ」というのがあります。 結構、古くからある装置ですが、試料に対する制約が大きかったりするので あまり一般には使われていないようです。
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- apple-man
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私の入力ミスもあるようなので、ご質問者の方に 誤解にないようにということで・・・ No.5の方の回答に >粉末などの多結晶試料や最近流行のナノチューブなどの微小試料の面方位はこのような手段では無理です。 とありますが、私の説明は一例ということで。 >オージェ電子分光自体は非破壊な分析手段ですが、表面のみしか分析できないために通常はイオンで表面を削って清浄化するので破壊的になるだけです。 私が電子ビームで破壊すると書いたのが気に なられたものと思います。イオンビームです。 Sputter depth Profilingという方法を説明した つもりでした。オージェ電子分光は電子を 当てて、跳ね返ってくる電子を観測する方法で、 これだと表面の分析しかできないのですが、 イオンビームでスパッタしながらオージェ電子分光 を続けると、深さ方向の原子の分布がわかるんです。 >原子は電子の雲で覆われているので、ガンマ線ではありません。 とあるんすが、私の文章の区切り方が悪かった ので >原子はその電子やX線より 波長の短い光である の部分ですが、電子と、X線より 波長の短い光である・・・ ということです。 電子雲とクーロン力を伝えている 仮想光子のことを言おうとしたのですが、 量子電磁気学の本には、仮想光子は ガンマの記号で書いてあるので、 ガンマ線と思い込んでいただけかもしれません。 (自信なしといったところです)
- kenojisan
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#2回答のkenojisanですが、いろいろと回答に誤解があるようなので。 まず#3のSCNKさんですが、TEMはTransmitting Electron Microsopeの略で透過型電子顕微鏡のことです。走査型電子顕微鏡(SEM=Scanning Electron Microscope)とは動作原理が違って、得られる情報も違います。SEMは現在のレベルではとても原子像は見れないです。また、量子力学の不確定性原理による限界はもっと小さいサイズで、実際に素粒子を使った散乱実験なら原子の内部にある原子核の位置は正確に求められます。 次に#4のapple-manさんですが。単結晶試料の面方位をRHEEDやXRDで求められるのは正しいのですが、粉末などの多結晶試料や最近流行のナノチューブなどの微小試料の面方位はこのような手段では無理です。微小領域での面方位を求める手段としてはやはりTEMは有効です。また、オージェ電子分光自体は非破壊な分析手段ですが、表面のみしか分析できないために通常はイオンで表面を削って清浄化するので破壊的になるだけです。オージェ分光も、電子ビームを使うので私が#2で説明したEDSやEELSと同じ程度の分析分解能しかありませんので、原子単位での分析は無理です。 また、TEMが電子線の波長程度より短い物が観測できない、孤立した原子を単独で見るのが無理なのは事実ですが、それは電子線や光のような波を使った結像には「回折」という波の干渉効果を使っているからです。波の波長より小さい物質では有効な干渉ができないからです。従って、数100nmレベルの可視光を使った光学顕微鏡より、波長の短い0.1nmオーダーの電子線を使ったTEMの方が小さい物質を見れるわけです。このような回折現象は、数多くの原子が規則正しく並んでいる方が強く起こるので、単独原子では回折効果が不十分で像を作るのは非常に難しいわけです。エネルギーが高い光や電子線は波長が短くなるので、加速器を使った高エネルギーの光や電子線でなら将来的に観察が可能になるかもしれません。 あと、原子は電子の雲で覆われているので、ガンマ線ではありません。ガンマ線は、原子核反応で発生する波長の短い光のことで、電子励起や制動輻射で発生される光であるX線と区別している場合が多いですが、実際には両者に厳密な区別は有りません。
- apple-man
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>これは、透過してきた電子が格子の像を映し出すために原子一つとして見えると解釈しましたが・・・・ TEMの画像は参考URLにあるような白黒の画像です。 >また元素や結晶方位面の区別はつくのでしょうか? 全くの未知資料など入れても定性的に元素が判別 できるわけではありませんが、大きな原子は大きく 写りますから、原子どうしの区別はある程度つきます。 よくある使い方としては、エピキャシタル成長など 原子レベルで制御して作った薄膜が、思ったように できているか断面を観察したりするものです。 基板の上に格子乗数が近い別の結晶構造をいろいろ積み上げていったとき、うまく乗っているか、転位が起こって いないかなど原子レベルでの重なりかたが確認でき ますが、そこまで行く前に、まず成膜段階で RHEEDという電子ビームの反射を使った観測装置 で結晶がどう積み重なっていくか見ていますし、 さらに出来上がったものはXRDというX線の反射を 利用した測定器で格子乗数を確認していますので、 その段階で方位面などわかっています。 また原子の分布を正確に知りたいときは、 試料表面を電子ビームで破壊しながら オージェ電子分光という方法などで 確認して行きます。 >原子一つだけが見えたという報告はいままでにあるのでしょうか? 参考URLのTEMの写真みたいにぼやっとした ものだったらありますが、原子1こがけを綺麗に くっきりとというのは今のところ原理的に無理です。 人間が観測に使っているのは、電子やX線 の反射や透過ですが、原子はその電子やX線より 波長の短い光であるガンマ線の雲で覆われて いる状態ですから、分解能が上げられません。 サッカーボールにサッカーボールぶつけて 跳ね返ってきたサッカーボールから もとのボールを形を決めようとするような ものです。 サッカーボールが人間の目に丸く見えるのは、 ボールより小さい光(光子)の反射で観測して いるからです。
- SCNK
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TEMが何にあたるかは分からないのですが、おそらく走査型電子顕微鏡とか言うやつでしょうか。 それは原子の存在がわかるということでしょうね。たしか単体の金属か何かの表面の原子が見えたということではないですか。配列か分かったり、配列を変えて文字を書いたりしていたと思います。 単独の原子はちょっと無理ではないですか。見たとたんに状態が変わってしまいます。もう量子力学の世界ですからね。たしか運動量と位置は同時に求められないということだったと思います。
- kenojisan
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#1さんが答えていらっしゃるように、球体として原子を撮影するならもう30年以上も前に成功してますし、今は有る程度高分解能TEMが使える技術者が質の良い試料を見れば、球状の原子の配列を観察することはそう難しいことではなくなっています。TEMは電子を使って物を観察するので、原子を見ると言っても実際には原子核を取り囲む電子雲を見ていると考えてください。従って、原子の内部構造までは見えません。 結晶方位面に関しては、TEMの機能の一つである電子線回折の情報と組み合わせれば、ほぼ同定可能だと思います。しかし、原子単位での元素の判別は難しいと思います。良くTEMで行われる元素分析は、電子線照射によって原子から発生する特性X線の分析(EDS)や照射電子の運動エネルギーの特徴的な減少(EELS)で行われるのですが、照射電子ビームの広がりや試料内部での拡散で原子1個単位での分析は現状では不可能だと思います。(例え電子を絞れても、測定信号の強度が弱すぎるでしょう)ただ、構成原子や構造などが有る程度分かっていて結晶の質の良い試料を使えば、原子像の注意深い観察から元素の種類が推測可能な場合も有ります。 あと、#1さんがおっしゃってる原子操作は、多分TEMではなくてSTMやAFMの話だと思います。
- mtld
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見えるには見えるのですが画像処理で一つの球体としてであり原子構造が見える訳ではありません 10年くらい前だと思います IBMの研究所で世界で初めて原子一個を操作出来た事を示す写真が公開されました 内容はサンプル表面上の原子一個一個を操作して ”IBM”の文字を作成した写真でした 画像処理で一つの球体としての原子写真はそれ以前にも発表されております
お礼
ようするに原子一個を見ることは出来てはいないけれども (原子一個を用意することも難しいのでしょうけど) 「像として得られた原子の並びを画像処理を施すことで原子一個が見えたようになる」 「結晶面方位を確認することもできる」 このように理解します。 みなさんありがとうございました。 ここでまとめてお礼させてください。