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内積の交換についての質問
2つのベクトルの内積を求める際の変数の交換は可能ですね。 しかし、ベクトルと演算子(∇(ナブラ))の内積は交換できませんね。単純な掛け算ではなく、ナブラには微分という操作があるので、微分の内と外という概念があるのでそうなるのだろうと思います。(そも、ナブラを内積の演算のベクトルの片方とみなすことがいいかどうかわかりませんが。) ここで質問ですが、テンソル解析では、スカラー、ベクトル、テンソルというものの処理を形式的に行うために、ナブラも普通のベクトルも同一視すると思います。だから、交換ができると言いたくなるわけですが、そんなはずはないわけですね。 実際、ベクトルAについてA・∇と∇・Aとは違うわけです。 どのように理解するのでしょうか。何かの数学的な略式の表記が出てきたらいちいち演算の実体を参照しながら理解するのではなく、目の前の形式的な処理で先に進めるというのが数学ではないかと思いました。違うかも知れませんが。そういう意味で∇と普通のベクトルは同一視できるのではないかと思うのですが。 ところで、2つのベクトルのテンソル積は普通は交換不可能と明言されているので、微分演算子のベクトルであっても問題ないような気がします。
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#4です。 (∇u)は実際のところ、空間成分に関する流速ベクトルuのヤコビ行列ですよね?。そしてu・(∇u)は、ヤコビ行列(∇u)とベクトルuとの積ですよね?。テンソル積(縮約)の意味から言って、u・(∇u)と書いても間違いではないし、そのような書き方をする本もあるとは思いますが、自分はこの書き方は使いません。あくまで行列とベクトルの積とみなし、(∇u)uと書きます。「内積」という言葉と記号「・」は、ベクトルどうしの縮約(内積)のためにとっておきます。あなたの言う、融通無碍を防ぐためです。 (∇u)において、∇はベクトルuに対してスカラーのように作用し、uの成分関数のgradを取っているとみなせます。何故なら、そう解釈するしか手がないからです。ベクトルの微分は行列だからです。それはテンソル記法の結果です。 ベクトル解析にはこのように、「その心は?」的発想が必要な場合はけっこうありますが、「この時だけは」の条件の絞り方は、「そう解釈するしかない」が大抵です。これは馴れの問題で、馴れてしまえば、けっこうやって行けるのも事実です。 とは言え、だからこそ「暗黙の決め」があります。さっきのように、u・(∇u)をあくまで行列とベクトルの積とみなし、「内積」という言葉と記号「・」は、ベクトルどうしの縮約(内積)のためにとっておけば、∇・uとはあくまでスカラーdiv・uの事であり、ヤコビ行列(∇u)にはなりません。基本的な「決め」は、前回と同じで「微分演算子は、関数の左に書く」です。そうすると、 u・∇=∇・u (1) は不合理になります。同じスカラーであっても、微分結果であるdiv・uと、微分演算子であるu・∇を等置してるからです。その意味で、 (∇u)u=(u・∇)u (2) は成り立つはずです。(2)の両辺は、どちらもベクトルだからです。 >いちいち解釈を介在させないということです。 ベクトル解析の本音は、そうだと思います。でもベクトル解析は、もう一つの事も目指しました。「添字と出来るだけ関わらない」です。 「添字と出来るだけ関わらない」と、じつはテンソル記法に比べて、著しい情報落ちをもたらします。それがベクトル解析の便利さでもありますが、情報落ちは情報落ちです。暗黙の決めと常識(?)が必要になった訳です。 ではどうするか?なんですが、外微分形式はベクトル解析直系の後継者であり、しかも厳密に体系化されています。でも厳密になった分だけ、テンソル解析にも近づいています。 つまり「心」を知っていれば、とても使いやすいのですが、やはりテンソル解析にも近づいたので、概念がわかるまでちょっと骨は折れます。でも外微分形式も、テンソル記法の省略記法である事は、間違いないと思います。要するに整備されたベクトル解析です。 ではテンソル解析そのものはと言えば、少なくともテンソル記法は、究極までシェイプアップされたスタイリッシュでエッセンシャルな省略記法なので、いったん味をしめると手放せなくなります。しかし余りにもスタイリッシュなので、僅かな手違いが、結果に重大な違いを生み、ときどき訳わかんなくなります。そのために、初等的なベクトル解析や外微分形式による「見当」は、必要でないかと思います。 ベクトル解析も外微分形式もテンソル解析もマスターして、3種の方法をバランス良く駆使し、テンソルのタコ足(添字の事)を、チャチャっと処理できるようになって下さい(^^)。自分は、出来ません・・・(^^;)。
まず、ベクトル解析という数学分野は厳密にはない、という事をわかって下さい。たくさん本が出てるので、語弊があるかも知れませんが、ベクトル解析は厳密に体系付けられてはいない、と思います。 ではベクトル解析は何かというと、単純に言えば、テンソル記法の省略記法です。ベクトル解析は厳密に体系付けられてはいないので、そこではある程度、暗黙の「決め」と「見当」が必要になります。 (1)「決め」の話 ∂f/∂xは、「∂/∂x かける f」の意味に形式的に解釈できます。この辺りが微分「演算子」という考えの原型だと思います。何故ならそう考えると、ベクトル積の色々な公式を便利に流用して、答えを予想できるからです。だって2階微分∂^2f/∂x^2なんかは、「(∂/∂x)^2かけるf」と形式的に解釈できますし、ベクトル積の公式は代数的なものなので、結局は形式的な計算に過ぎません。微分演算子という考えと、ベクトル積の公式は相性が良いはずだ、となります。 ただ微分演算子には「微分する作用素」という意味があります。この点を考慮して、「∂/∂xなどは、常に関数fの左に書く」というのが、基本的な「決め」になります。つまり大抵の場合、∂/∂xとfの積は可換なので、ベクトル解析の式に「ふつうのベクトル積の公式を適用して展開し」、その過程でA・∇のような形が出てきても、「∇・Aの事だね」と修正する訳です。 上記の考えは、大抵の場合うまくいきます。典型的例としては、A,Bを普通のベクトル,φをスカラーとすれば、A×(Aφ)=φ(A×A)=0,A・(A×B)=B・(A×A)=0ですが、 rot(gradφ)=∇×(∇φ)=0 div(rotB)=∇・(∇×B)=0 は実際に成り立ちます。 しかしこれは、体系化されていない「決め」なので、積極的反対理由があれば別です。そのときA・∇などは、「∂/∂xなどは、常に関数fの左に書く」の原則を無視して良いくらいの意味を持つケースで、(暗黙の)基本原則に照らせば、(A・∇)全体を一つの微分作用素とみなすべき事態です。そのようなケースは、実際にあります。φをスカラー値関数として、 (A・∇)φ/|A| (1) は、スカラー値関数φのベクトルA方向への、方向微分係数を表します。(1)のような表現を「了解する」ためには、次に述べるような「見当」が必要です。 (2)「見当」の話 ここでは例として、A・(B×C)をあげます。A,B,Cは普通のベクトルです。これに関しては、 A・(B×C)=C・(A×B)=B・(C×A) (2) の循環(?)公式があるのは、ご存知と思います。(2)に関連するベクトル解析の展開は、 div(B×C)=∇・(B×C) (3) の類です。 (3)には、(2)を直接適用できません。(∇・)には、「微分する作用素」という意味があるからです。その意味があるので、(3)は積の微分公式でなければならない事になります。 積の微分公式の言ってる事は、B×Cの一方が定数ベクトルだった時の微分結果の足し合わせが、積(B×C)の微分の結果になる、という事です。 Cを定数ベクトルとします。(2)より、 ∇・(B×C)=C・(∇×B) (4) として良いはずです。何故なら、定数と微分作用素は可換だからです。 Bを定数ベクトルとします。(2)より、 ∇・(B×C)=B・(C×∇) (5) ですが、微分作用素は作用する関数の左に書く、という最初の「決め」を思い出すと(5)は、 ∇・(B×C)=B・(C×∇)=-B・(∇×C) (6) と書くべきもの、となります。こうして、 div(B×C)=∇・(B×C)=C・(∇×B)-B・(∇×C) (7) が得られる訳ですが、(6)の中辺は、ノートか頭の中だけに存在し、正式な場面には「出しません(^^)」。 今の場合(7)は、たぶん正しいという確信を持てますが、厳密には(7)はたんなる「見当」です。正確には、テンソル記法(成分計算)に持ち込んで、検算すべき対象です。でも(7)のような見通しを持っていると、成分計算の添字処理は、とても楽になります。 ベクトル解析もテンソル記法もマスターして、テンソルのタコ足(添字の事)を、チャチャっと処理できるようになって下さい(^^)。
- 178-tall
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>物理屋さんらが ∇・A を平気で使い始めたのは、ベクトルの内積 ( ・ ) に演算子を入れたとき、その作用は ( ) の外には及ばない、という共通了解があったからと推測されます。 その一方で、内積 ( ・ ) の両項とも演算子だと、その結果の作用は ( ) の外へ向かわざるを得ない、とも考えているようで。
- 178-tall
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物理屋さんらが ∇・A を平気で使い始めたのは、ベクトルの内積 ( ・ ) に演算子を入れたとき、その作用は ( ) の外には及ばない、という共通了解があったからと推測されます。 (A・∇) と書いてしまっても、∇の作用は ( ) の外に及ばないのだから、ベクトルの内積 ( ・ ) のベクトル順序の互換性を逆手に取り、(∇・A) と同じと解釈してしまえば済むハナシなのでしょう。
- stomachman
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> 実際、ベクトルAについてA・∇と∇・Aとは違うわけです。 とおっしゃるからには、さてA・∇はどういう意味なんでしょ? もしも、「A・∇は意味を持たない」とおっしゃるのであれば、単に「A・∇と∇・Aとは同じ意味だ」と宣言するだけでお悩みは解消するわけですが。
お礼
丁寧な回答ありがとうございます。 この問題は実は、流体力学の基礎式であるナビエ・ストークス方程式の加速度項の表記に出てきます。 u・(∇u)=(u・∇)u と表記されます。これはテンソル積で表現されたテンソルに左からベクトルを内積として作用させた場合の展開(あるいはテンソルの定義とも関係する)なので、了解されます。 ここで∇uはベクトル∇と流速ベクトルuのテンソル積です。・ドット積は内積となります。あの交換ができてしまうとまずいことになります。本件の主題ですが、u・∇=∇・uとなりますと、右辺は流体の物理的考察(近似もありますが)からゼロとなってしまいます(つまり別の意味が独立に存在している)。なので、あの交換が成立してしまうとうまくないのです。条件を絞って、”このときだけは”などと考えていくと何でもアリ、融通無碍に陥るのではないでしょうか。 それともやはりベクトル解析では常に、何らかの表記があると、なぞかけではないですが、”その心は?”と言って実体に照らして認識する、ということでしょうか。 一方テンソル解析は、数学的に厳密?ということで、多様体も微分幾何学もテンソルを基礎として考えていくわけですね。微分形式(1形式、2形式、...害微分等々)もそういうことになるのでしょうか。流体力学と微分形式というものを論じた書籍あるようですが。 現実の問題をやる場合でも空間が曲がっているということを使った方が便利なことはあるので、微分幾何学の基礎を使います。そのときに実際の空間のことを考えず、数学的に形式的に行けるほうがスマートだと思い込んでしまいました。いちいち解釈を介在させないということです。そこで先の微分形式も引っ張り出てくることになった次第です。