無権代理について
初学者です。
下記の「3.」においての解説では、「BはもはやAの代理行為を追認することはできない。」とあるのですが、民法119条の「ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。」を適用することで、「BはAの代理行為を追認することはできる。」となり、結果「誤り」とはならないのでしょうか。
よろしくお願いします。
※ (無権代理)
第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
※(無権代理の相手方の取消権)
第百十五条 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない
※(無効な行為の追認)
第百十九条 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
記
平成19年-問27【解答・解説】
問題
AがB所有の土地をCに売却した場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1. AがBから土地の所有権を取得してCに移転できない場合、Cは、契約時にAに土地の所有権がないことを知っていたとしても、契約の解除ができる。
2. Cは、悪意または有過失であっても、20年間、所有の意思をもって平穏かつ公然とBの土地を占有継続すれば、Cは土地の所有権を時効取得する。
3. AがBの代理人と称して売却した場合、代理権のないことを知らなかったCがこの売買契約を取り消せば、BはもはやAの代理行為を追認することはできない。
4. AがBの代理人と称して売却した場合、Cは、Aに代理権のないことを過失によって知らなかったとしても、無権代理を行ったAに対して責任を追及できる。
5. 所有権者Bが自らA名義で登記をして虚偽の外形を積極的に作出し、そのまま放置していた場合には、Bは、Aを所有者だと信頼して買ったCに対抗できない。
正解:4
解説
1.正しい。
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負い、移転することができないときは、善意・悪意に関わらず買主は、契約の解除をすることができる。但し、悪意のときは、損害賠償請求をすることができない(民法第560条、同法第561条)。
したがって、Cは契約の解除ができる。
2.正しい。
本権がないことについて悪意または有過失により占有を開始した者は、20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を時効取得する(民法第162条1項)。
したがって、Cは土地の所有権を時効取得する。
なお、善意、且つ、無過失の占有者は、10年間の占有で時効取得できる(民法第162条2項)。
3.正しい。
無権代理における本人は、追認権を有するが(民法第113条)、一方で、相手方は本人が追認するまで、取消権を有している(民法第115条)。
相手方が取消権の行使をすれば契約は遡及的に無効となることが確定するため(民法第121条)、本人は追認することができなくなる(民法第119条)。
したがって、Cがこの売買契約を取り消せば、BはもはやAの代理行為を追認することはできない。
4.誤り。
無権代理人が、自己の代理権を証明できず、かつ、本人の追認を得られないときは、履行又は損害賠償責任を負うが(民法第117条1項)、代理権がないことについて相手が悪意若しくは過失によって知らなかったときは適用されない(民法第117条2項)。
したがって、CはAに対して当該責任を追及することはできない。
5.正しい。
虚偽表示(民法第94条2項)の類推適用によって、Bは善意の第三者Cに対抗できない。
「不動産の所有者が、他人にその所有権を帰せしめる意思がないのに、その承諾を得て、自己の意思に基づき、当該不動産につき右他人の所有名義の登記を経由したときは、所有者は、民法九四条二項の類推適用により、登記名義人に右不動産の所有権が移転していないことをもって、善意の第三者に対抗することができない」(最判昭45年7月24日)。
補足
ご回答ありがとうございます。 126条後段の客観的期間については「行為がなされたとき」であると理解しています。124条は法定代理人には適用されないとはいえ、124条2項の成年被後見人の了知要件の趣旨に照らすと、法定代理人の場合は「行為を知った時」とするのが妥当かと思われるのです。この点につき根拠条文が見当たらないので、悩んでおります。