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オルフェウスとエウリディーチェ
ギリシャ神話「オルフェウスとエウリディーチェ」で、 オルフェウスが、黄泉の国から妻、エウリディーチェを 連れ戻す時、「決して後ろをふり返ってはいけない。」と 言われていたにも関わらず、ふり返ってしまい、その瞬間、 エウリディーチェは死者の国へ、再び堕ちていったというシーンが ありますが、これは何を示唆しているのでしょうか。
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- SPS700
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#1です。補足です。 下記などをご覧になるとオルフェウスの話が、極めて広範囲に見られること、両者の間柄には同世代、夫婦、人間同志、という点が必ずしも本質的ではないことが分かります。 http://www.jstor.org/pss/535272
No.2です。連続投稿すみません。 今回は、No.2、最終段落の補足を兼ねた投稿になります。 先に「オルフェウスとエウリディーチェ」の物語は、「異類婚姻譚」として捉えることができるのではないかと申しましたが、男性と女性、「それぞれの性が持つ壁を描いた物語」とも言えると思います。 言い換えるならば、夫婦のあり方、男女の恋愛観を説いた物語だと。 男性は伴侶となるべく女性には「従順さ」(付き従うことや素直さ)を求めるものであり、女性は男性からは何よりも「信頼されること」を大切に思う。 それぞれの性が求める愛の形を描いた物語。 そう捉えることも可能なのではないかと思います。 ____________________________________ 【付記】 質問から話を膨らませて申し訳ありませんが、エウリディーチェとイザナミを比べると、エウリディーチェが可憐でたおやかなのに対して、イザナミが戦闘的で、イザナギに冥界での己の真実の姿を見られたことによる復讐心から、イザナギを追うというのが興味深いです。 古代の日本女性は強かったのでしょうか…。 古代日本には卑弥呼もいたし、推古天皇、持統天皇と女性権力者が沢山いましたから、今の感覚から比べるに、女性は相当地位が高かったのかもしれないですね。 エウリディーチェについて調べると、ニンフ(妖精)と書かれたものがありました。 それに対してイザナミは国生みの女神ですから、その地位あるが故に、プライドも相当高いのでしょうね。 エウリディーチェは、オルフェウスのもとを悲嘆に暮れて去っていくだけだったけれど、イザナミは復讐心からイザナギを追うだけではなく、自らが生み愛していたはずの国土の人間を一日千人殺めることに決めました。 オルフェウスは失意の中エウリディーチェへの愛を貫き通し非業の死を遂げたのに対し、イザナギはと言えば、妻の呪いに対抗して、一日千五百人、国土に人間が生まれる様にし、黄泉の国の汚れを払うため禊ぎをしたときには、天照大御神、月読命、須佐之男命をはじめ、計十柱の神を生んだと言われています。 転んでも唯では起きない、逞しさを持った国生みの元夫婦神。 オルフェウスもアポロンの息子であるとか、女神カリオペの息子であるとか、そこそこ身分も教養もが高い人物像が伺えますが、イザナギとは違ってお坊ちゃんというか、純粋に愛に生きる若さと無垢な魂を持った存在に思えます。 「オルフェウスとエウリディーチェ」は初恋のような儚さ・美しさを持った物語で、「イザナギ、イザナミ」は熟年夫婦がみせる怨念、復讐物語と言えるかも知れません。 一つの物語を読むときは、それに類する物語と比較すると、また違ったものが見えてきて面白いと思います。
「見るなのタブー」で調べると良いと思います。 【見るなのタブー】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%8B%E3%82%8B%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%BC 上記の参考リンクには、「オルペウスとエウリュディケ」として、ご質問の物語が紹介されています。また、心理学や精神医学と絡めた考察も僅かですが載っていますので、そこから何か手掛かりが掴めるのではないでしょうか。 古事記にも、これとよく似た物語として「イザナギ、イザナミ」の逸話にはじまり、他には、「トヨタマビメとホオリ(山幸彦)」、「倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめ)と大物主」 ギリシャ神話であれば、「エロースとプシューケー」、「パンドラの箱」 もっと身近な、おとぎ話としては「鶴の恩返し」 「浦島太郎」などがあります。 これらの物語の概説は、上記のリンクにありますが、それぞれのエピソードについて比較考察すると何かしら感じることがあると思います。 「見るなのタブー」で調べると、必ずと言っていいほど「異類婚姻譚」が出てきますが、「イザナギ、イザナミ」も「オルフェウスとエウリディーチェ」の物語も「異類婚姻譚」の一つとして捉えることが出来ると思います。 イザナミとエウリディーチェは生前、それぞれが、イザナギとオルフェウスという伴侶と同じ属性の世界を生きる存在、同族であったわけですが、イザナミもエウリディーチェもそれぞれが、死を以て現世から冥界という異界に属する身、「異類」となったと捉えることが出来ます。 【異類婚姻譚】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E9%A1%9E%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E8%AD%9A この物語を【異類婚姻譚】として捉えた場合、「異類」となった以上、夫婦であり続けることは自然の理を乱す行為であり、神をも恐れぬ行為ゆえ、引き裂かれる運命にあると捉えることが出来ます。 また、異界から嫁を迎える以上は、妻に対して並々ならぬ覚悟と責任、信頼を持っていなければ、夫側は自分が属する現世に妻を呼び戻すことが出来ないと捉えることが出来ます。生半可な思いではなく、「強い意志がなければ乗り越えられない試練」の物語と捉えることが出来ます。 結局、「オルフェウスとエウリディーチェ」のような物語が一番表現したかったことは、人間は(ギリシャ神話、エジプト神話、日本神話には神さえも死んで冥界に送られる話があります)、どのようにあらがおうとも、死からは逃れられない運命にあるということが大前提にあり、運命に逆らおうと立ち向かうとき一番大切なのは、心から救いたい添い遂げたいと想う人を信じる心の強さが何よりも大切だということだと思います。愛するが故の不信感は、相手にとっては裏切り行為となり、二人の未来を生み出すことにはならないということを語っているのではないでしょうか。 オルフェウスもイザナギも妻を愛していながら、妻を疑うことで、ここ一番という試練を乗り越えることが出来なかったという、如何にも人間らしい心の脆さを持っています。 「見るなのタブー」の物語の中には、好奇心、猜疑心、不信感が招く別離と不幸が数多く描かれています。人間は誕生と共にそれらの試練を背負う運命にあると言うこと、その後もずっとそれらの試練と闘いながら生きていかねばならない性にあるということが、「オルフェウスとエウリディーチェ」には描かれていると思います。 女性側から見れば、「男性の心の弱さと信頼されなかったことへの失望」の物語であり、男性側から見れば、「愛するが故の試練と無力感」の物語と捉えることが出来るでしょう。 質問者さんの様々な視点と感性で自由に読み解いて下さい。
- SPS700
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「こうしてはいけない」という禁忌があると、それを破って話の落ちになります。 1.似た話は世界中にありますが、二人の愛する者が居る時、その関係を続けたい、片方が居なくなったら連れ戻したい、という普遍的な要素があります。 2。他方、死は、非可逆的な出来事で、死んだ者を生き返らせることはできない。これも普遍的な要素です。 ですから「できない」ことを「できるよう」に作っておいて、間に禁忌の障害を置きそれが必ず破られることにすれば、「お話」が出来る。 示唆しているのは何か? いろいろあって、百人百様、正解の無い、昔からよくある宿題です。お好きなように書けばいいと思います。
お礼
ご回答ありがとうございます。 お礼を申し上げるのが遅くなってしまい、大変、申し訳ありません。 そうですね。解釈は人それぞれでいいんでしょうね。 もしよろしければ、SPS700さまのご解釈を、お聞かせいただきたいです。
お礼
ご丁寧なご回答をいただき、本当にありがとうございます。 お礼がすっかり遅くなってしまいまして、本当に本当に申し訳ございません。 いただいたご回答、何度も何度も読ませていただきました。 そして、わざわざ検索してお貼りくださったURLも。 民話の類型に「禁室型」というのがあるんですね!(この言葉は「鶴の恩返し」から 来ているのでしょうか??) それに心理学の用語にも、「カリギュラ効果」というのがあるんですね! 賢くなりました!覚えておこうっと! でも、こういった「禁室型」(←さっそく、この言葉、使っちゃった!)のお話って、 洋を問わず、全世界にあるんですね! 旧約聖書にも出てくるなんて。。。 知りませんでした。 でも、こういった「禁室型」のお話の中でも、「エロースとプシューケー」って 特殊な感じがしますね。 「禁室型」のお話では、「見るな」と言われる人間が男性で、異界の生き物が 女性っていうパターンがほとんどだと思うのですが、「エロースとプシューケー」では 「見るな」と言われる人間が「プシューケー(女性)」で、異界の生き物が「エロース(女性)」 です。 それに「禁室型」のほとんとが破局で終結しますが、「エロースとプシューケー」では、 ふたりはいったん破局するものの、最後には結ばれるという終わり方をしています。 こういった「禁室型」のお話を比較研究するのも、面白そうですね!