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ルイス・サッカー著「穴」の面白さがわかりません。
ルイス・サッカー著「穴」の面白さがわかりません。 大変高く評価されている作品と聞いて読んだのですがわかりません。どなたか、面白さを解説してもらえませんか? キャサリン・バローにひい爺さんが身包み剥がされ、その時のアタッシュケースが見つかった。そのどこが面白いのでしょうか。 タマネギ売りのサムの存在意味は? 豚泥棒のひいひい爺さんの存在意味は? ビッグサムの山麓でタマネギを掘り起こしますが、なぜそんなところにタマネギが?その意味は? 等々、分からないことだらけです。 スタンリーが穴を掘らされていることと、祖先の不幸が今一つピンと来ません。3回も読んだのですが。 よろしくお願いします。
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お礼欄、拝見しました。 回答をここに載せてから、ちょっと不安になったので、原作を読み返してみました(順序が逆です)。大きな間違いはなかったので、安心しました。 原文を先にお読みになった方だったのですね。英語の勉強をなさっておられるのでしょうか。 ただちょっと気になったのは、タマネギの記述など、原文に記されている箇所を、いくつか読み落としておられるのではないかと思ったことです。おそらく英文でもかなり読むスピードが速い方だとお見受けしました(うらやましいことです)。 ただ、速読される方は、要約的な読み方をされる傾向があります。それだと、無意識のうちに小説を読んだときも、何か出来事が起こる箇所や会話部分を拾い上げ、情景描写などを読み飛ばす傾向につながっていきます。軽い、読み飛ばせるような作品ならそれでもいいのかもしれませんが、小説を読むときは、すみずみまで目配りをしていかなくては、全体の筋書きを追うことすらできません。少し、ご自分の読み方の傾向を意識されては、と思いました。 ヤングアダルトノヴェルというジャンルは、力を持った書き手が大勢いる分野です。ただ、あくまで対象を十代としています。大人向けの本とどうちがうかというと、なによりも「困難に直面したとき、それをどう切り抜けていくか」に対する参考書的な側面を持っているということです。 特にアメリカでは、80-90年代にかけて、離婚家庭や貧困、虐待や学校でのいじめに直面する子供たちが増加し、ヤングアダルトノヴェルもそれにともなって、非常にヘヴィな内容が増えていきます。そこに、一種の揺り戻しではないんですが、『ハリー・ポッター』のようなファンタジーが登場し、爆発的に受け入れられた。 "Holes" が出てきた背景にはそんな流れがあります。 ハリー・ポッターのように、別の世界ではなく、あくまで現実の世界にファンタジーの世界を持ち込むとどうなるか。そうした問題意識で書かれた小説だろうとわたしは思っています。 ですから、この作品の中にも非常にシンプルなメッセージ、どんな苦難であっても、智恵と勇気と人を思いやる気持ちがあれば、かならずそれを終わらせることができる、何代続く不幸であっても、自分がそれを終わりにできる、というものがこめられています。だからこそ、多くの十代の子供たちに、共感を持って受け入れられたのでしょう。 ただ、大人が、とりわけ、本を読むことによって、自分がいま現在置かれた社会的自我を脱することがむずかしいような安定した自我を持つ人が、読んでおもしろい本ではないだろうと思います。 よく、英語の本を読むのなら、むずかしい単語や構文の出てこない、子供向けの作品を読むといいと言われますが、どうでしょうか。 むしろ、共感というベースのないところでは、他愛のないもののように思われるのではないかと思います。質問者さんの読まれ方だと、それこそ英字新聞とか、実務書、ノンフィクションにふさわしいものだと思いますし、読解力を鍛える、読む力をつける、という目的なら、ご自分の傾向に合ったものを読んで構わないのではないでしょうか。 以上、何らかの参考になれば幸いです。
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- ghostbuster
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かなーり昔に読んだ本なので、もしかしたら多少おかしなところがあるかもしれません。質問者さんのお手元に本があるのでしたら、ご確認ください。ちがっているところがあったら、また指摘してください。 『穴』は、ヤングアダルトという体裁を取っていますが、昔話の文法によって書かれています。それに現代の風俗の味付けがしてある。ただ、根本にあるのは、昔話であることを忘れないでください。 この作品のプロットは、「貧しく虐げられているけれど、心のきれいな少年」が「宝物」を見つける物語です(プロップが『昔話の形態学』の中で分類した「探索型の物語」)。その過程で自らの一族にかけられた「呪い」を解き、「幸せ」を手に入れるのです。それをふまえておけば、きっと疑問も解けると思います。 > キャサリン・バローにひい爺さんが身包み剥がされ、その時のアタッシュケースが見つかった。そのどこが面白いのでしょうか このアタッシェケースこそが「宝物」です。 だって中に百万ドル相当の有価証券類が入っていたでしょう? だからこそ、敵役の一族が三代に渡って探していたのです(もちろん、お気づきかと思いますが、ウォーカー家の末裔であるキャンプの所長が穴を掘らせているのも、このアタッシェケースを探すためです)。 > タマネギ売りのサムの存在意味は? タマネギ売りのサムは、ラトヴィア(でしたよね?)のジプシー、マダム・ゼローニの孫です。ゼローニの息子かもしれませんが、年代的には合わないような気がする。本で確かめてください。そうして、ゼロ(キャンプにいる黒人の男の子)は、その血筋を受け継いでいるのです。最後の場面で、見つかったゼロのお母さんが、替え歌ではない、元の歌を歌って聞かせる。そこで、それがあきらかになるのです。 そうして、この一族は、一種の「魔法使い」です。不思議な能力を持ち、自分を助けることはできないけれど、人を助けたり、呪いをかけたりすることができる。 家系図にすると マダム・ゼローニ ↓ マダム・ゼローニのアメリカに渡った息子 ↓ サム ↓ サムの姪か従姉妹の子 ↓ ゼロ ということになります。 > ビッグサムの山麓でタマネギを掘り起こしますが、なぜそんなところにタマネギが? 確か、サムは湖の向こう側でタマネギを掘ってきて、それを売っていたように記憶しています。湖のこちら側は、ジプシーの呪いで雨が降らなくなっても、そこはまだ雨が少しは降ったりしたのでしょう。百年ほど前のタマネギが野生化して、自生していたのです。 ここでは魔法使いの薬草の代わりをタマネギが果たしています。 悪に対峙する薬草が「タマネギ」で、幸せにしてくれる薬草が「ピーチ」だったように思います。 > 豚泥棒のひいひい爺さんの存在意味は? この「ひいひい爺さん」がかけられた呪いが、そもそもの発端です。 昔話では、かならず主人公に〈禁止〉が課せられます(行くな、見るな、食べるな、眠るな……)。けれども主人公はその〈禁止〉を破ります(〈違反〉)。そのことによって、主人公は罰を受け、苦難が始まるのです。 そうしてこの作品では、苦難が一代では終わらず、四代まで続いていく。そうすることによって、昔話と現代をリンクさせているのですね。 ひいひい爺さんの呪いをとくのが、主人公です。穴を掘る、というのも、この一族が課せられた苦難の象徴です。 そうして主人公は、マダム・ゼローニのやしゃごであるゼロに、水を飲ませてやりますね。だから、呪いが解けたんです。 そのほかにも、忘れてしまったけれど、現代の登場人物の先祖が、何人も登場していたような気がします。名前を手がかりに、ああ、この人があの人の孫なのか、と探してみてください。何か、細かな伏線がたくさん張ってあったような、おぼろげな記憶があります(笑)。 こんなところで、疑問は解けましたか?
お礼
ご回答ありがとうございます。 もう諦めかけていたところでした。 なるほど、そうでしたか。細かいところを読み取れずに読んでいました。 この本はとても評価が高かったようですね。少年少女が夢中になったのも無理もありません。また、オジサンが読んで面白くないのも当たり前かもしれません。 本当に丁寧な解説、ありがとうございました。 きっかけは、原文で読んだことです。すらすら読めました。でも面白くない。おそらく読みそこなっているところがあるにちがいないと思い日本語訳を読みました。でも分かりませんでした。 とにかく、ありがとうございました。
お礼
再びありがとうございます。 この作品が受け入れられた背景と込められたメッセージがわかりました。アメリカで高く評価されるはずです。それを知らずに分かる訳がありませんね。これを読んだ日本の子供たちはどう受け止めたのでしょうね、同じように理解でき感動したのでしょうか。とにかく、大いに参考になりました。 Holesは朗読CDも買いましたので、教えていただいたことを頭に入れて何度も聴いてみようと思います。とてもスピードのある朗読でもともと耳を鍛えるために何度も聴こうと思っていた朗読CDでしたので、いただいた解説が今後とても参考になりそうです。ありがとうございました。