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ウイルスのDNAを人工的に変化させることは可能ですか?
ウイルスのDNAを人工的に変化させることは可能ですか? たとえば鳥インフルエンザウイルスと人インフルエンザウイルスを組み合わせて人に対して強力な病原性を発揮できるウイルスを人工的に作ることはできないのですか? また、エンベロープはインフルエンザでも中のDNAはエボラ出血熱とか。 もし、こんなことが大学の研究室レベルでできるとしたら、北朝鮮の核ミサイルなんかよりよほど恐ろしいと思うのですが。
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獣医師でウイルスに専門知識を有する者です。 ウイルスの遺伝子(ウイルスにはDNAではなくRNAを遺伝子に持つものも多いです)を人工的に改変することは可能なのですが、当然ながらどんな改変の仕方でも同じ難易度というわけではありません。 例えば、 >たとえば鳥インフルエンザウイルスと人インフルエンザウイルスを組み合わせて人に対して強力な病原性を発揮できるウイルスを人工的に作ることはできないのですか? これは容易でしょう。自然界でも起きていることですし、その意図がなくても鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの組み替え体を作ってしまうリスクがあるので、「ヒト由来のインフルエンザウイルスと動物由来のインフルエンザウイルスを同じラボで取り扱ってはならない」というルールがあるくらいです。 まあ、単に組み替え体を作るだけでなく、狙いどおりの性質を持ったウイルスを作るとなると、ずいぶん根気が必要でしょうけども、 >1つや2つではうまくできるかどうか怪しくても1000種類の組み換えウイルスを作って実験すれば一つくらいとんでもない強力なウイルスができる可能性があるのではありませんか? まさにそういうことになるでしょう。まあインフルエンザウイルスはよく研究されているウイルスなので、それぞれの遺伝子の働きや病原性との関わりもかなり理解が進んでいますから、まるきり当てずっぽうで作るよりよほど効率よくやれそうですし。 >また、エンベロープはインフルエンザでも中のDNAはエボラ出血熱とか。 これは難しそう、というより可能性はなさそうに思えます。 というのは、エンベロープにしてもHA蛋白やNA蛋白にしても、これらはウイルスの生活環と深く関わっているものなので、部分的にすげ替えても全体として機能しなくなるからです。 インフルエンザウイルスのエンベロープを持ったエボラというのは、おそらく「インフルエンザ並みの感染力を持ったエボラウイルス」を想定しているのだと思いますが、これは組み替えバキュロウイルスに目的のタンパク質を発現させる、というのとはずいぶんレベルが違う話です。 それにその目的だと本当はエボラウイルスに持たせるべきはHA蛋白でしょう。エンベロープは元からエボラウイルスも有していますから。 インフルエンザウイルスの感染力が強いのは、ウイルスが上部気道の粘膜上皮にのみ感染し、そこで増殖するからです。すなわち、病原性が低く気道にも致命的なダメージを与えないので"飛沫"にウイルスを乗せて撒き散らせるわけですし、病原性が低く感染者や発病者でさえもうろうろ行動してくれるからこそ、感染者があらたに感染させる人数も多くなり、これらがトータルとして「感染力が強い」ということになるわけです。 対してエボラは全身臓器に感染し、これらを速やかに致命的に破壊することによって高い病原性を示すわけですが、これにインフルエンザウイルスのHA遺伝子を組み替えても「気道限定」になるだけ、つまり病原性は弱くなってしまいます。 まあ感染した気道粘膜は速やかに徹底的に破壊する、という性質が残っていても、感染すると「咳」ではなく血を吐き出して死ぬ、みたいな病気になるわけで、誰も怖がって近寄らないと結局「感染力」は弱くなってしまいます。 これは「組み替えができたら」という前提で書いたわけですが、ウイルスではこれらの遺伝子全てが感染~増殖~出芽の生活環に密接に関わっています。またそれらの生活環はウイルスの種毎に大きく異なります。 自分の遺伝子を細胞に読ませる方法ひとつとっても、自分のDNAをそのまま読ませて細胞にmRNAを作らせるもの、自分のDNAをmRNAに転写する酵素を自分で持ち込むもの、自分の遺伝子(RNA)がそのままmRNAになるもの、自分のRNAをもう一度RNAに転写してそれをmRNAにするもの、自分のRNAをDNAに逆転写して細胞のゲノムに組み込むものと非常に多種多様です。 なので、異種ウイルスの遺伝子を組み換えても、それがウイルスとしてちゃんと機能するのは難しいでしょうね。 なお、P4レベル云々はこのような話にはあまり関係ないでしょう。 このレベル(正しくはバイオセーフティレベル:BSLという)は、「危険な病原体を万が一にでも外に漏らさない」ために制定されているものですから、こんなモノを作ろうとする輩がそれを守るわけもないですから。 BSL4レベルの病原体でも、その施設がないと「必ず漏れる」というわけでもありません。どんな病原体でも不適切な手技で扱えば漏れますが、「目的のモノが完成する」のが早いか、病原体が漏れて死体の山ができるのが早いかは運次第ですし。 ちなみにエボラはBSL4でなければ扱えないことになっていますし、インフルエンザウイルスは高病原性のH5N1亜型を除くとBSL2で扱えます(H5N1はBSL3)。 ま、これは「法律」なので、こんなモノを作ろうとする輩がそれを守ってくれるとはとても思えませんが。 >なるほど、そうだとすれば、遺伝子組み換えウイルスは学生レベルでも作れるということですね。そうだとしたら、テロリストは自爆テロなんかするより、遺伝子組み換えウイルスを作ってばらまけばいいように思います。 >こういう危険性があまり話題にならないのはどうしてだと思われますか? なってますよ。 生物化学兵器は開発が容易なことと経費がかからないことから(核兵器に比べて、ですが)「貧者の核」と呼ばれています。 テロリストが生物兵器を開発・製造していたことはオーム真理教でも前例がありますし、それなりに話題になっていると思っているのですが。 ま、そうは言っても、飛行機をハイジャックしてビルに突っ込むほど簡単にはできないのですけどね。
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No.3のJagar39です。 >テロリストたちはなぜうまくいっても数10人くらいしか殺せない自爆テロなんかやるのでしょうか? 生物化学テロなら状況次第では何万人も殺せるかもしれないのに。 まさしく、「貧者の核」だからです。 つまり、生物兵器は核兵器よりは技術的にも経済的にも難度は低いのですが、自爆テロよりは遙かに高い、ということです。 遺伝子を改変したウイルスや細菌を作るだけでしたら、前の方の回答にもあるとおり大学の卒論レベルなのですが、兵器として有効なものを作るのはやはりそれなりに難しいです。エボラウイルスにインフルエンザウイルスのエンベロープを着せる程度の単純な方法論では、兵器どころか実験室内で継代可能なウイルス株すら得ることは難しいでしょう。 核兵器にしても、材料さえ揃えば製造そのものは高校生の物理学実験レベルなのだそうですが、それと「兵器として実用になるレベル」とはまったくの別物なのは同じです。(むしろ核兵器の困難さは、弾頭を目標まで到達させる技術にあるのでは) 要するに、生物兵器も「国家レベルの予算と技術」が必要なことには変わりありません。そのレベルの話で、「生物兵器は核兵器より遙かに容易で安上がり」というだけの話です。 ちなみにオームは生物兵器を「開発」していましたが、これを実際に「使用」したことはありません。サリンは化学兵器なので、今回の話とはまた少し違います。 10年近く前になると思いますが、アメリカで炭疽菌入り封筒が問題になったことがあったと記憶しています。これも生物兵器が実際に使用された実例なのでは。
- dipearl
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ウイルスのDNAを改変するだけなら、研究室レベルでなく、学生実験レベルでできます。 遺伝子組み換えの手法の一つに、ウイルスのDNAの中に有用な遺伝子を組み込み、そのウイルスを感染させることによって行う方法があります。
お礼
ご回答ありがとうございます。 なるほど、そうだとすれば、遺伝子組み換えウイルスは学生レベルでも作れるということですね。そうだとしたら、テロリストは自爆テロなんかするより、遺伝子組み換えウイルスを作ってばらまけばいいように思います。 こういう危険性があまり話題にならないのはどうしてだと思われますか?
>大学の研究室レベル P4+レベルが必要ですね。でないと辺り一面死人だらけ。 作ることは出来るけど、働くかどうかはちょっと怪しいですし、伝染力があるかも少し怪しいです。
お礼
ご回答ありがとうございます。 > 作ることは出来るけど、働くかどうかはちょっと怪しいですし、伝染力があるかも少し怪しいです。 1つや2つではうまくできるかどうか怪しくても1000種類の組み換えウイルスを作って実験すれば一つくらいとんでもない強力なウイルスができる可能性があるのではありませんか?
お礼
ご回答ありがとうございます。 > 生物化学兵器は開発が容易なことと経費がかからないことから(核兵器に比べて、ですが)「貧者の核」と呼ばれています。 生物化学兵器が貧者の核といわれていることはもちろん知っています。しかし、現実にそれを使ったテロがオーム真理教以外に起こっていないのが不思議に思っています。 テロリストたちはなぜうまくいっても数10人くらいしか殺せない自爆テロなんかやるのでしょうか? 生物化学テロなら状況次第では何万人も殺せるかもしれないのに。