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「ノルウェイの森」から見た日本戦後文学の成り行き
「ノルウェイの森」から見た日本戦後文学の成り行き
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なんというぶっきらぼうな質問だ。 村上春樹は、それまでになかった新しい小説の世界を作り上げたと言ってもいいと思います。 いつの間にか自分好みの双子の女の子がアパートに同居していて、その二人と連れ立って近所のゴルフ場に散歩に行き、ボールを拾ったり、バックギャモンをやったりする。(1973年のピンボール) ああ、なんて気楽で、そして都合の良い小説なのだ!と僕は思いました。 一時、虜になりました。 多くの人がそうでしょう。 でも、読んでいる間は心地よくまた楽しいのですが、読んだ後に、なにかもやもやしたわだかまりが残りました。「これでいいのだろうか」という。 もし小説が、「僕らはどうあるべきか、人間とはどういうものか」というものを表現するものだとしたら、村上春樹の世界はそういうものは何も示してくれない気がしました。 厳しく言えば(楽しんで読んだくせに)、そこには、理想や無責任な期待はあっても、それまでの戦後文学(太宰治、島尾敏雄、坂口安吾、大江健三郎など)に比べ、奥底から訴えてくる力、思想がありません。 ところで、戦後文学として、坂口安吾なども挙げましたが、村上春樹出現の80年代からすると、随分昔の作家となってしまいますね。 それだけ、久しく日本全体で話題になるほどの作家がいなかったとも言えるのですね。 そしてその後、日本の男性作家では、村上春樹ほどに話題になる人もいませんね。 ということで、僕は今後の日本文学の、とくに男性作家の書くものについては、ほとんど期待が持てません。 ところで、女性作家については、よしもとばななの小説など、独自の表現方法を持っており、なおかつ時代性を伴い、またその核心部分に、ゆるぎなく訴かけてくる思想を感じるものがあると思います。 よしもとばなな以降の女性作家にも、とても期待が持てる人がいます。 「ノルウェイの森」から見た日本戦後文学の成り行き、に期待はありません。 自由を得た女性たちの描く新しい世界観に、僕は期待します。