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「文化進化論」と「文化伝播論」について
「文化進化論」と「文化伝播論」について説明できる方いらっしゃるでしょうか? インターネットでもヒットが少なく、いまいち理解できず困っています。よろしくお願いします。
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文化人類学の理論という観点から、お答えいたします。 大きな流れ: 19世紀、人間を神の創造物であるとする世界観に対し、(2)生物学の観点から挑戦した「進化論」が登場し、(3)「社会進化論」、つまり「単純から複雑へ」という単線的な「進化」という概念を社会にあてはめるという発想が流行する。(4)「社会進化論」の科学的証明の欠如に反対した、4つの流れ:「極端な伝播論」、オーストリア・ドイツの「歴史・伝播学派」、「アメリカの歴史学派」(ボアズ)、「イギリスの構造・機能主義」(マリノフスキー、ラドクリフ=ブラウン)。 文化進化論:evolutionism.社会進化論(および社会ダーウィニズム)とも。 この立場の人物として、英国のタイラー(人間の信仰はアニミズム→多神教→一神教へと進化するとした)と、米国のモルガン(野蛮→未開→文明という発達段階を主張)などがよく取り上げられます。 のちに出てくる「新進化論」と対比される、「古典進化論」「単系進化論」について、一言で要約すると、「民族や社会はすべて、単一の発達過程のラインを、段階を踏みながら進行する。社会ごとに発達の速度は異なる。」と説明できます。 ツボは、当時の西洋の学者が、理解してもいない「異民族」を「野蛮」だと決めつけ、自らを「文明」という立場にすえて考えていたところです。 文化伝播論:diffusionism. イギリスを代表とする「極端な伝播論」は、世界の文化はエジプト文明を起源として作られたとしています。実証性がなく、専門家の間では全く顧みられなくなりました。 「文化圏学派」として知られるオーストリア・ドイツの歴史・伝播学派は、世界各地に文化圏を想定し、その内部の要素を細かく分析、一つ一つの文化圏はどの文化要素がどのように伝播して出来上がっているのか、を論じました。 より詳しく調べる際の手助けになればと思い回答いたしました。テストの類の答案としては、上記の説明だけではまだ不十分かと思いますので、ご自身でさらに調べてみることをお勧めします。 参照 祖父江孝男『文化人類学入門 増補改訂版』中公新書、1990年。 M.S.ガーバリーノ,木山英明・大平裕司訳『文化人類学の歴史 社会思想から文化の科学へ』新泉社、1987年。 綾部恒雄・桑山敬己編『よくわかる文化人類学』ミネルヴァ書房、2006年。