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中谷宇吉郎

雪の結晶は、温度と水蒸気の量に依存することが中谷宇吉郎氏の実験で明らかになりましたが、中谷宇吉郎氏はなぜ、温度と水蒸気の量を測ることにしたのでしょうか?それとも、もっと多くのパラメータを測定したが、結晶の変化に依存しているのは温度と水蒸気と分かったということでしょうか?調べてみたのですが、分かりません・・・分かる方お願いします。

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  • Umada
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回答No.2

過飽和度(あるいは水蒸気量)と温度に第一に着目したのは以下で説明するように必然的な流れです。その他にもいくつかのパラメータについても検討を行っているとは思いますが、「適当にいろいろなパラメータを変えてみたら、水蒸気量と温度の影響が大きかった」ということはちょっと考えにくいです。 中谷博士が人工雪の結晶成長に成功したのは1936年ですが、この頃の結晶成長学がどのようであったかを考えてみます。ただしその時代には私は影も形もなく、また中谷博士の研究の足跡を全て追ったわけでもないので推測も多分に含みますことご容赦ください。 結晶の形状を考える学問の起源は17世紀に遡ります。J. Keplerが雪の結晶を観察し、結晶とはある基本単位の繰り返しでなるのではないかと推測したこと(1611年)や、N. Stenoが水晶の外形に違いが出る理由を成長速度の異方性に求めたこと(1669年)が端緒とされます。 結晶の外形を考えるには、大別して「構造論」「平衡論」「成長論」の3つのアプローチがあります。構造論はその名の通り結晶の基本構造(結晶格子の構造)に着目して結晶の外形を予測する方法で、Bravais(空間格子の分類で有名)の経験論が始まりのようです。 平衡論は「結晶が熱力学的に安定な形状に至ったとき、その形状はどのようなものであるか」を考えるものです。より具体的に言えば「体積一定のもと、表面エネルギーを最小にするような形状は何か」という考え方です。表面エネルギーが等方的であれば結晶の外形は「球」になるわけですが、実際には表面エネルギーは結晶の方位によって異なるので立方体やら六角柱やらになります。平衡論の流れはJ. W. Gibbsから始まって、1901年には有名なWulffの作図法も発表されています。 しかし六角樹枝状の複雑な雪の外形が、氷の単純な結晶格子から導かれるとは思えませんし、「表面エネルギーの総和最小」にしても六角樹枝状がそれを満たすとは考えにくいです。 構造論と平衡論に対し、結晶の外形はその成長過程(成長機構)によって決まってくる、と考える立場が「成長論」です。成長機構の解析は結晶構造や表面エネルギーの解析よりずっと難しいので、構造論や平衡論より遅れて世に出てきました。成長論はVolmer(1922年)の報告(実験)に始まるとされ、その後のKosselやStranskiによる層状成長の理論は1920年代後半から1930年代初めにかけて構築されました。中谷博士が雪の研究を始めたのは1932年ですから、これらの情報はある程度入っていたと思われます。 樹枝状成長に関してはPapapetrouの報告(水溶液からの樹枝状成長)が最初とされます(1936年)。樹枝状成長は成長界面不安定問題の一つで、後のMullins-Sekerkaの界面安定性理論(1963年)へとつながります。樹枝状成長の機構が解かれるのは1977年になってです(LangerとMueller-Krumbhaarによる)。 従って1932年(あるいは1936年)の段階では、樹枝状成長は現象論としては知られていても、どのような機構で生じるのかは分かっていなかったことになります。 六角樹枝状結晶が構造論や平衡論から導かれないことは中谷博士も当然気付いていたでしょう。従って成長機構まで含めて考えるべきことも頭の中にあったと思います。 その場合、成長の駆動力が周囲の気相と成長中の結晶相との化学ポテンシャル差であることも、1932年時点でおそらく分かっていたと思います。同じく1932年にFrenkelが、成長速度と化学ポテンシャル差の関係式まで導いているからです。化学ポテンシャル差の表式は過飽和度(水蒸気量と関係)と温度、そしてBoltzmann定数が含まれますので、まず過飽和度(あるいは水蒸気量)と温度に着目したことは容易に推測されます。 雪の結晶が成長する環境、すなわち上空の環境はどのようなものかという点からもパラメータの検討はなされたでしょう。ただ上空の環境を決定するパラメータはそう多いと思えず、上記の温度と水蒸気量のほかでは気圧において地上との差が見られますが、あとは気流、粉塵量や重力(?)を思いつくくらいです。磁界や電界といったパラメータはさすがに考えなかったでしょう。 【結論】 (1)結晶成長の駆動力が化学ポテンシャルであることは1932年当時で分かっていたはずです。化学ポテンシャルの表式はk(Boltzmann定数)、σ(過飽和度)、T(絶対温度)で成りますから、雪の結晶の成長においてまず過飽和度(あるいは水蒸気量)と温度に着目したのは必然です。 (2)そのほかのパラメータですが考慮すべきものは意外に少ないように思えます。中谷博士が使った装置の構成を鑑みても、やみくもに各種のパラメータを変化させて実験したとは考えにくいです。(その装置ではほかに、気流と気圧が多少制御できる程度と見受けられます) 参考文献(順不同) [1] 「結晶成長ハンドブック」、日本結晶成長学会「結晶成長ハンドブック」編集委員会編、共立出版(1995) (上記回答中の研究者名と年号は主に、この「結晶成長ハンドブック」による) [2] http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/butsuri/50th/noframe/50(4)/50th-p258.html [3] http://iimori.cube.kyushu-u.ac.jp/~tokunaga/kenkyu/intro.htm [4] http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/phys/crys/ice/lect7.html

  • ojisan7
  • ベストアンサー率47% (489/1029)
回答No.1

一気圧の下で実験していますので、普通は、温度と水蒸気量(水蒸気圧)で充分です。他にどんなパラメータが必要でしょうか?これ以上の実験となると、大がかりな冷却装置、減圧・加圧装置が必要です。これらの装置が開発されたことにより、何種類もの氷や水の相が発見されたのは、つい最近のことです。

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