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【溶接】非消耗電極と消耗電極での電極の極性の違いとは?
- 溶接時の電極の極性によって溶接現象が異なることがあります。非消耗電極(Tig)ではEN極性では溶接箇所の入熱が大きくなり、EP極性では電極への入熱が大きくなります。
- この現象の理由として、電子の衝突によって過熱されることが挙げられます。
- 一方、消耗電極では(Tigでは逆に)EN極性ではワイヤの溶融速度が大きくなり、その理由については特定の情報を得られていません。
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大学理工学部か、へたすると大学院クラスの物性物理学の内容になりますね。 まず、「電子が衝突する方が加熱」というより「電子を出すと冷却」となります。 理由1:電極の温度による電子放出の有無 物性物理の知識が必要になるのですが、乱暴に言えば、物体の温度≒物体中の電子の平均エネルギーということができます。 そして、ある程度高エネルギーの電子は物体の外に飛び出すことがあります。物体を高温にするほど、高エネルギー電子が多くなりが飛び出しやすくなります。この加熱による電子の放出を熱電子放出といいます。 そして、高いエネルギーを持っている電子が外に飛び出すことは、物体中の電子平均エネルギーが減少し、物体の温度が下がることを意味します。ご引用の参考資料[1]で書かれる「電子の蒸発熱」はこれを示します。 ですので、高融点の電極を用いるTIG溶接では、電子放出がたくさん起き、電極先端は過熱と冷却が相殺されますが、電極融点が低めであるワイヤ溶接では、大量の熱電子放出を起こす温度になる前に電極先端の溶融金属が離脱するので、加熱のみが起きるのではないかと考えます。 https://www.jeol.co.jp/words/semterms/search_result.html?keyword=%E7%86%B1%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%94%BE%E5%87%BA 理由2:電極の形状の違い 電極の先端が尖っているほど、電界が先端に集中し、強力になる電界集中という現象があります。 そして、表面の電界が強力なほど、物体中の電子が低エネルギーでも外に放出されやすくなるショットキー効果という現象もあります。 これにより、先端の尖ったTIG溶接では電子放出で奪われる熱エネルギーが大きくなり、溶融金属で先端が丸くなるワイヤ溶接との差が大きくなります。 以上から、ワイヤ溶接ではTIG溶接のような、冷却機構が無いためにEPとENでの電極加熱の差が少ないといえます。 あと、ENの方がEPより20%ほど熱が多い理由は、陰極降下と陽極降下の違いと推測している文献がありますね。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/33/11/33_11_980/_pdf https://shinkokiki.co.jp/column/3670.html