当該関数の微分を知れば計算できる形となります。1 molについて考えるとします。
4. (a)
pが1 atmで一定ですから、
(∂H/∂T)_p=Cp...(i)
です。これを定積分すると
H(T)-H(To)=Cp(T-To)...(ii)
To=298 KとすればH(To)は標準生成エンタルピー-285.83 kJ/molを使えます。Cpは温度依存性が小さく、Cp=75.3 J/K/mol(=0.0753 kJ/K/mol)の定数とすれば273-373 Kまでは直線グラフが書けます。
273 Kでは固体から液体への相転移があり、そのジャンプの大きさは融解熱で
ΔH=6.01 kJ/mol...(iii)
となります。(ii)により273 Kでの水のエンタルピーが出ていれば、これから(iii)を引いた値が273 Kの氷のエンタルピーです。
253-273 Kは
H(T)-H(273)=Cp(氷)(T-273)...(iv)
となります。これもCp(氷)の比熱を36.7 J/K/molとすれば直線グラフが得られます。
373 Kでは液体から気体への相転移があります。蒸発のエンタルピー変化は
ΔH=40.66 kJ/mol...(v)
です。373 Kでの液体のエンタルピーに(v)を足せば373 Kでの蒸気のエンタルピーがでます。それ以上の温度では水蒸気のモル比熱2098 J/kg/K=37.8 J/K/molを使えば
H(T)-H(373)=Cp(水蒸気)(T-373)...(vi)
よりグラフが書けます。253 Kから273 Kまで勾配がCp(氷)の直線で, 273 Kでジャンプし、そこから勾配がCp(水)の直線となります。そして373 Kでジャンプし、そこから勾配Cp(水蒸気)の直線となります。
Sについては
(∂S/∂T)_p=Cp/T...(vii)
を使います。Cp一定で積分すれば
S(T)-S(To)=Cpln(T/To)...(viii)
です。S(298)=69.95 J/K/molです。
融点ではエントロピーがジャンプします。
ΔS=ΔH/273=6010/273=22.0 J/K/mol...(ix)
です。融解向きに考えれば吸熱でΔH>0ですからΔS>0で当然エントロピーは増大します。273 K以下になれば固体のS(273K)を知って(viii)と同じ形のグラフが書けます。Cpは固体のCpを使います。
373 Kでの気化のエントロピー変化は(ix)と同じ形で計算できます。
ΔS=ΔH/373=40.66x10^3/373=109 J/K/mol...(x)
です。気化後の水蒸気のエントロピー変化は(viii)と同じ形になります。Cpは蒸気のCpです。
ρについては液体と固体についてはモル体積一定として、融解ではρが少しあがる形にしておけばよいのではないでしょうか?
気体についてはまず
ρ=18x10^-3/V...(xi)
と書きます。Vはモル体積(m^3/mol)でρの単位はkg/m^3となります。
(∂ρ/∂T)_p=(∂(18x10^-3)/V)/∂T)_p=-18x10^-3(1/V^2)(∂V/∂T)_p...(xii)
となります。(∂V/∂T)_p=R/Pですから
(∂ρ/∂T)_p=18x10^-3(1/V^2)R/P=-18x10^-3(P/RT^2)...(xiii)
となります。ここでP=1.01x10^5 Pa、R=8.313 J/K/molという定数ですから(xiii)
は
(∂ρ/∂T)_p=-218.7/T^2...(xiv)
となります。これは容易に積分できて
ρ=218.7/T...(xv)
となります。すなわち気相ではρが(xv)のように双曲線になります。
4(b)
こちらはは268 Kという温度一致での氷の圧依存性の問題ですね。
圧縮係数を(-1/V)(∂V/∂P)_t=κ、膨張係数(1/V)(∂V/∂T)_p=αをかきます。κが圧に依存しないとして(-1/V)(∂V/∂P)_t=κをPについて積分すると
V=V(T,0)exp(-κP)...(xvi)
となります。(実はκ一定というのは100 atm以下でないと成立しないです。)
さらにκP≪1とすれば
V=V(T,0)(1-κP)...(xvii)
です。一方
(∂H/∂P)_t=V-T(∂V/∂T)_p...(xviii)
ですからこれを温度一定Tで圧変化についてだけ積分すると
H=H(T,0)+∫(V-T(∂V/∂T)_p)dP...(xix)
で、Vについては(xvii)を適用すれば(xix)は
H=H(T,0)+∫VdP=H(T,0)+V(T,0)P(1-(1/2)κP)...(xx)
のように書けます。V(T,0)は今の場合定数です。すなわち圧力0での体積がわかればHはP(1-(1/2)κP)に従って変化します。
エントロピーは
S=S(T,0)-αPV(T,0)(1-(1/2)κP)...(xxi)
となります。これもエンタルピーと似たような圧依存性となります。
ρについては
(∂ρ/∂P)_t=(∂(18x10^3/V)/∂P)_t=-(18x10^-3/V^2)(∂V/∂P)_t
=(18x10^-3/V)κ...(xxii)
となります。ここでκ=-(1/V)(∂V/∂P)_tを使っています。(xxii)に(xvii)を代入すれば
(∂ρ/∂P)_t=18x10^-3κ/{V(T,0)(1-κP)}...(xxiii)
となります。(xxiii)は容易に積分できてρがPの関数ででてきます。