武家で「道具」とは弓矢のことを言います。なお、基本的な意味は、当時の武器の第一である弓矢のことですが、剣も調度に含まれることが稀にあるのですが、『吾妻鑑』の用例を見ると、「建暦三年正月一日-中略-垸飯儀広元朝臣経営之 引出物役人 御釼 兵衛大夫季忠 御調度 和田左衛門尉義盛 御行騰沓-以下略」とあるので、弓矢のみのことになります(他の例も多いので弓矢のみで問題はないと思います)。なお、例の「御調度 和田左衛門尉義盛」は調度を運ぶ役割の者(引出物役人)を言い、名誉の役とされます。また、正月の垸飯は、「最首の椀飯(垸飯)」とよばれる重要儀式で、幕府の有力御家人が将軍に椀飯を捧げると共に、引出物として馬、釼、弓矢等を献上する儀式のことです。垸飯を捧げられるかどうかが有力御家人としての地位がかかりますし、さらに何日に垸飯を捧げるのかが幕府内の地位・勢力の順位付けでもあるので、微妙な争いがあります。
平安時代には大饗(だいきょう)とよばれる正月の儀式がありますが、これは中宮(皇后)・皇太子(以上をまとめて二宮)や大臣などがそれぞれ主催し、公卿・殿上人を招いて振舞うことを言います。これに対して垸飯は将軍という上位者を臣下がもてなすことを言いますので、正反対の儀式です。ですから、引出物も、垸飯を捧げた臣下が、将軍に奉げる品物を言います。
蛇足ですが、同じ種類の言葉に「道具」があります。弁慶の七つ道具などの言葉がありますが、長刀・槍に、太刀・釼などが基本的な内容ですが、さらに広く、弓・矢・甲冑なども含まれます。「物の具」・「具足」なども関連する言葉です。なお、調度・道具については、広辞苑などでも武具としての意味と採録していますので、確認ができます。古語では「でうど」「だうぐ」で出てきます。
以上、参考まで。