- ベストアンサー
「髪を切った」などの言い方について
(1)私は、髪を切った。 (2)私は手術で、胃を半分取った。 (3)私は、自宅を改築した。 (1)は、鏡に向かって自分でハサミを持って髪を切ったのなら、この言い方は理にかなっていま す。しかし、理容店へ行って理容師に髪を切ってもらった場合でも、(1)のような言い方をします。 (2)は、「私」が医師で、患者の胃を半分取ったのなら、この言い方は理にかなっています。しかし、 「私」が患者で、医師の執刀により、胃を半分取られた場合でも、(2)のような言い方をします。 (3)は、「私」が建築業者で、自宅を改築したのなら、この言い方は理にかなっています。しかし、建 築業者に発注して自宅を改築させた場合でも、(3)のような言い方をします。 なぜ、主語が動作主でないのに、(1)~(3)のような言い方が可能なのでしょうか。 ご教示をお願いいたします。
- みんなの回答 (4)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
基本的には動詞述語文に固有なヴォイス(態)に関わる一般的な表現形式です。 (1)と(2)については、話者本人の主張したいポイントが、その動作プロセスにはなくて、結果としての状態にある場合には、受身文や使役文、また遣り貰い表現に求められる、いわば「誰が」「誰に」「何を」という表現の煩雑さを避けて、自身の状態性を変化の結果としての「た」を用いて、対象(自分の髪や胃)がどうなったかを言おうとした他動詞でありながら再帰性の籠もった自動詞的表現だと考えてはいかがでしょう。 >(1)私は、髪を切った。 : この場合の助動詞「た」の働きは単純過去ではなく、髪を切るという行為が完了して、もはや整髪された状態に至っていることの表現になっているものです。その動詞文は「髪を切っている/切ってもらっている」などの動作性のそれではなく、目的を達した結果としての「髪は切られ整えられている/整髪は済んだ」という状態性を表わしています。 >(2)私は手術で、胃を半分取った。 : こちらは、話者自身の自発的意図としての「髪を切る」の場合とはやや異なり、自身にとって不本意な偶発性や突発性などの他要因のよる依存性の要素も混じっています。 例えば、「うっかり自分の手を切ってしまった。」といったケースなどもあります。 この場合、「自分の胃の半分に当たる悪い箇所を、手術で切除してもらう」他動性での行為が終了し、もはや手術によって自分の胃が半分切除された身体状態になっているという再帰性を表わしています。 >(3)私は、自宅を改築した。 : (1)と(2)は、話者本人の意志の濃度や他者依存度合いに違いはあるものの、当人の身体の一部の装着や脱剥に関わる、いわば「着装動詞」としての用法に関わるので何らかの再帰性が含まれていますが、この(3)の場合にはそこまでの理由は求められません。 話者はあくまでも施主の立場として工事業者との契約によって改築を行った場合なので、改築をしてもらったという他動性や依存性よりも、施主としての自主意志での使役性の表現に準じた形として自然になっているケースです。
その他の回答 (3)
- hakobulu
- ベストアンサー率46% (1655/3578)
日本語の持つ曖昧性によるのだと思います。 動作主が動詞の主体であることは変わりませんが、対象が詳しく明示されていないためにどちらの意味にもなり得る、ということでしょう。 つまり、誰の髪なのか、誰の胃なのか、誰の自宅なのか、を明示しなくとも構文として成立するようになっている。 たとえば、英語なら、my hair とか his hair のように表現するはずです。
お礼
ありがとうございました。
- onbase koubou(@onbase)
- ベストアンサー率38% (1995/5206)
いずれのケースも「私」の意思決定に基づいて行われたことだからです。
お礼
ありがとうございました。
- guess_manager
- ベストアンサー率33% (1175/3512)
「なぜ、主語が動作主でないのに、(1)~(3)のような言い方が可能なのでしょうか。」 →主語が動作の主体でなくとも、主語の意志のもとに行われたのであれば意味が通じるから。そして、実際に動作の主体となったのが誰(何)なのかをあわらす表現は他の方法で叙述できるから、ということになります。 大阪城を建てたのは誰?→大工、みたいな話ですね。 言葉は理にかなうことはあまり大事ではありません。法則性すら無視されることがあります。 大事なのは伝わることです。ですので、よく考えたらおかしな表現でも全然構わないのです。
お礼
ありがとうございました。
お礼
ありがとうございました。 私は日本語教師で、テンス・アスペクト・ヴォイス・モダリティーに関心を持っているものですが、 上記の質問内容については参考書を調べても答えが導き出せず、ここに質問いたした次第です。 質問後に思いついた例として、「あの犬は、赤い首輪をつけている。」がありますが、これも 回答者様の提示された理論により、疑問が氷解しました。 重ねてお礼申し上げます。ありがとうございました。