質問は私の嫌いな日本海軍についてなので回答を“忌避”していましたが、既回答の中にちょっと看過できない記述があります。
> 幼年学校、士官学校、兵学校の何れも一定の資産を持っているのが条件
> 陸軍士官学校に入るには、中学(旧制中学5年制)卒業が条件です。
>(途中から、中学4年修了で受験可に変更)
> 陸軍士官学校は、その中学校を卒業しなければ受験できません
日本では「陸軍士官学校」(昭和12年=1937年より「陸軍予科士官学校」)受験に関して年齢の制限はあっても受験者の学歴に関する制限はありませんでした。試験問題の難易度が「中学校(旧制)X年修了相当」の学力にふさわしいというだけ。そして身体検査がありました。希少ではあるけれど志願により一般の兵として入営し、厳しい軍隊生活を送りつつ勉学に励み陸軍士官学校を受験(陸軍部内からの受験者は年齢の上限が高めに設定されていた)、合格という驚くべき努力の人たちの例が、比留間弘氏(陸軍士官学校第57期)の著作などで確認できます。
もちろん学歴は不要でも、それ相応の学力を身につけるためには、事実上は “中学校進学など” がほとんどでしょう。しかし実情がそうであったことと、あたかも “制度がそうであった” かのような誤解を生じかねない記述をするのは別問題です。「海軍兵学校」においてもしかり。
「陸軍幼年学校」も受験資格に学歴は不問。ただし、陸軍幼年学校は相応の学費が必要(戦死・殉職などの軍人の子弟には条件により減免措置あり)なので、それなりの資産がないと入学後に苦労するでしょう。陸軍士官学校は授業料なし、それどころか生徒には給料に似た手当が出ます。また中等教育以上を受けるには経済力が必要であるということも正しいけれど、生家が経済的に苦しい場合に篤志家の援助で進学を可能にした例も無くはありません。ただし、いわゆる被差別部落出身者の中にそういった人物がいたかどうかは残念ながら私には回答できません。
陸軍の話ばかりで質問者にはたいへん申し訳がないですが、陸軍は原則的にシャバの世界よりは平等ということができます。いったん軍隊の中に入ってしまえば、出自や家庭環境よりも “軍隊にとって有用かどうか” に重点をおいて評価がされたため、貧農の子弟などには戦後になって軍隊を肯定的に振り返る者もあったということが、『日本人はどのようにして軍隊を作ったのか』(荒木肇 著 出窓社 2010年)P135-136 にも書かれています。
ただし上記は制度上の話であり、原則論です。人間の行動に関して実際に何が起こったかは何ともいえません。有名なところでは昭和2年=1927年に部落解放運動家の北原泰作が、二等卒として入営したあとで陸軍内部の部落差別を昭和天皇に直訴したという前代未聞の事件があります。海軍に関しては、興味の範囲外なので十分な知識がなくお答えできません。申し訳ありません。