• ベストアンサー
※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:この判例を解説してください)

判例解説:住居侵入、窃盗被告事件

このQ&Aのポイント
  • 東京高等裁判所判決を破棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻す。
  • 違法収集証拠の排除に関する主張について、違法な逮捕及び捜査が行われたことから証拠能力に問題があると主張。
  • 被告人の口腔内細胞の鑑定結果の証拠能力についても、違法な収集があったことから否定的な見解を示している。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
回答No.1

 1 本件は,被告人が,金品窃取の目的で,店舗併用住宅の1階店舗部分ヘ,隣接する物置の塩化ビニール製波トタン壁に穴を開けて侵入した上,切手,収入印紙等を窃取した,という住居侵入,窃盗の事案である。  被告人は犯人性を争っており,現場に遺留された毛髪のDNAと被告人の口腔内細胞のDNAが一致したという鑑定結果が,犯人性を立証する重要な証拠であった。原審弁護人は,本件による逮捕に先立つ,別件による現行犯人逮捕が違法であるから,その後の身柄拘束下において採取された被告人の口腔内細胞に関するDNA鑑定の結果等を含め,ほとんどの検察官請求証拠を違法収集証拠であるとして不同意とした。  2 本判決は,まず,「違法な身柄拘束下において収集された証拠のうち,いかなる範囲の派生的証拠が排除されるかは,身柄拘束と証拠収集の関連性の強弱等の諸事情のほか,身柄拘束の違法の程度も考慮して検討するべき問題である」とした上,原判決において,「被告人が任意提出した物であること,身柄拘束下の追い込まれた心理状態を利用して収集されたような形跡もうかがわれないこと(この点については,……十分に立証されているとはいい難い。)のみで,現行犯人逮捕の違法性の存否,程度を検討するまでもなく,両者の間に密接な関連性がないとして,証拠能力を認めたのは相当でない。」とした。  そして,原審が,現行犯人逮捕手続書等の書証を不同意のまま採用して取り調べ,これだけで前記の現行犯人逮捕が適法であると判断した点について,「原審弁護人の主張等に照らしても,本件において,現行犯人逮捕の適法性は,訴訟の帰趨に直接影響を与える重要な争点の1つであるから,当事者に攻撃,防御を十分尽くさせるべきである。しかるに,現行犯人逮捕手続書や現行犯人逮捕に至るまでの状況を目撃した者の供述調書を不同意のまま採用することをもって事足りるとし,原審弁護人からの現行犯人逮捕に関与した警察官等の証人尋問請求をすべて却下した原審は,原審弁護人に攻撃,防御を十分尽くさせたといえない。原審は,証拠採用に関する合理的な裁量の範囲を逸脱しているといわざるを得ない。」とした。  3 訴訟法的事実については,原則として,自由な証明で足りる,というのが多数説である。もっとも,訴訟法的事実といっても,その重要性の程度には差があり,当該事実の性質によって,考えるべきである,とされている。実体に直接関係のない訴訟手続上の事実が自由な証明で足りることについては,それ程争いがなく,判例も,電報電話局長に対する逆探知資料の送付嘱託を行うことの当否又は逆探知に関する証人申請の採否等を判断するための資料について,このような訴訟法的事実については,自由な証明で足りる,としている。  しかし,訴訟法的事実の中でも,証拠能力判断の基礎となる事実について,自由な証明で足りるかは争いがある。もっとも,証拠能力判断の基礎となる事実については,必ず厳格な証明を要するとするのが相当でないにしても,時に訴訟の帰趨を決する重要な争点である場合が少なくない。そのため,当事者に攻撃,防御を尽くさせるべく,公判廷における適当な証拠調べをした証拠による証明(適正な証明)を必要とすると解するベきであるとする見解が有力である。実務的にも,違法収集証拠の排除法則との関係で証拠の収集過程が重要な争点となっている場合,これらの証拠能力に関する事実については厳格な証明による扱いも多い。厳格な証明によらず,書証を不同意のまま採用して取り調べることが許されるとしても,少なくとも,被告人又は弁護人が捜査手続の違法を具体的に主張し,違法収集証拠であるという証拠が重要なものである時には,捜査官等の関係者の証人尋問を実施するなどして,当事者に攻撃,防御を尽くさせるべきであるというのが,一般的な実務的な運用であろう。  本判決も,このような実務的な運用等を踏まえ,前記の現行犯人逮捕の適法性に関する事実に関して厳格な証明を必要とするかについては,直接判断を示さず,原審が現行犯人逮捕手続書等の書証を不同意のまま採用しただけで,原審弁護人からの警察官等の証人尋問請求をすべて却下した点について,証拠採用に関する合理的な裁量の範囲を逸脱している,とした。先例の少ない分野に関する判断であって,実務上の参考となろう。

関連するQ&A