「質物」とありますが、「留置物」のことでしょうか。
優先弁済的効力は、当該担保物権が、他の債権者に「先立って」弁済を受ける権利である場合に、呼称されるものです。先取特権(303条)、質権(342条)、抵当権(369条1項)、いずれも、「先立って」の文言が使われていますが、留置権(295条)には、ありません。したがって、留置権の性質としては優先弁済的効力はないことになっています。
ご質問の果実収取権(297条)については、1項で、「先立って」と条文に示されています。したがって、果実収取権については、優先弁済的効力がある、ということになります。これは、あくまで、留置権のうちの1つの権利に過ぎないので、留置権全体については優先弁済的効力がない、ということになります。
※ちなみに、留置権においても、「事実上の」優先弁済的効力があるといわれることがあります。「事実上」、つまり、法律には明記されていないけども、実際はそれに等しい、ということです。例えば、留置物自体についても、執行手続において、それが動産なら引渡拒絶可能(民執124条、190条1項2号)、不動産なら、買受人による弁済まで拒絶可能(民執59条4項、188条)(尚、民執法の条文は、ノート作成当時のもので、改正で多少動いているかもしれません。)、であり、目的物を持っていかれない点で、優先弁済に近い効果が得られます。
お礼
いつも論理明快な回答有難うございます。 テキスト等の字面だけでは分からないことも条文を見ると分かることもあるのですね。