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格子緩和と欠陥・転位の発生、発光層への影響
格子定数の違う材料を臨界膜厚を超える厚さで成長すると、結晶の格子緩和が起こりますよね。 このとき歪みエネルギーを転位の発生などによって放出し、成長した結晶は 本来の格子定数に近づくものと理解しています。 ここで質問ですが、 格子緩和した結晶層は転位を含むわけで、漠然的ですが非発光中心を持つことになります。 このような格子緩和を伴った層が数nmでもどこかにある場合、 これはもう発光デバイス作製には致命的となるのでしょうか。 例えば発光層を緩和した層から数10nm、もしくは100nm程度離して 配置しても、 格子緩和に伴う欠陥発生により、発光層の光学的特性は著しく悪化してしまうのでしょうか。 つまり、格子緩和がどこかにある時点でそういった構造は 光学的に使い物にならないものでしょうか。
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- inara1
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昨年10月に「半導体レーザーに関する良書」でお答えしたものです。 >発光デバイス作製には致命的となるのでしょうか 昔の常識では致命的でしたが、最近のInGaN系LEDやレーザは欠陥密度が多くても(限度はありますが)発光効率が低下しません[1]。結晶欠陥が非発光中心として働くかどうかは材料によって異なるというのが最近の解釈だと思います。 1度転位が発生してしまうと、その上に成長する結晶は下地の原子配列に従うので、結晶面方位に沿って転位も上に伸びていきます。したがって緩和した層から離れていても欠陥が減るわけではありません [2]。ただし、資料 [3] にあるように、横方向への選択成長を利用して、下地からの貫通転位を上方向に伸ばさない手法もあります。しかし、このような手法でも、欠陥密度を小さくするにはある程度の膜厚が必要になるので、緩和層から10nm~100nmという近距離での欠陥低減には適用が難しいと思われます。 [1] 青色発光ダイオードは何故、多量の欠陥があるのによく光るのか http://www.tsukuba.ac.jp/public/press/060824press.pdf [2] InGaN/GaN系LEDの貫通転位(3ページ・図2) http://www.toray-research.co.jp/electronics/pdf/MM009_T00068.pdf [3] 貫通転位低減法(Fig.1 ELO法とLEPS法) http://www.mitsubishi-cable.co.jp/jihou/pdf/98/16.pdf
お礼
いつも回答いただき有難うございますm(__)m 今春からレーザー関係の仕事に携わっており、私にとって新しい分野で分からないことばかりです。 >1度転位が発生してしまうと、その上に成長する結晶は下地の原子配列に >従うので、結晶面方位に沿って転位も上に伸びていきます。 これは成長方向に沿った転位線ということですよね。 GaN系で言うとc軸(0001)に沿ったらせん転位に対応するようなものでしょうか。 仮にですが、以下の場合はどうでしょうか。 緩和層と下地層の界面にのみ、格子定数差を緩和するための刃状転位がある場合です。 教科書にあるような格子定数差を緩和するように、成長面内方向に転位線が 走るイメージです。 この場合は、界面に転位が残りますが、その先の成長層には伝播しないように 思えるのですが、どう思われますでしょうか。 もし転位線が上に伝播しないとすれば、この転位を含んだ界面から離れたところに 発光層を配置すれば、キャリアを食われずに高効率発光が出来ないのかと 考えています。 もし全くの見当違いであれば、修正いただけないでしょうか。 宜しくお願いします。