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考える歴史か?教え込む歴史か?
歴史学習は、知識・理解偏重ではいけない。自ら学ぶ意欲・思考力・判断力を育む事こそが重要である(ただし特定の歴史観を押しつけることなしに)と言われて久しく、私も異論はありません。しかし、まず大学受験が知識量を求めるという現状の問題もあります。 また大前健一氏のように、学校で教師が教える知識など500円のチップに収まってしまうのだから500円の価値しかない、という言い方をする人もいます。 一方で、松原久子氏の著作によると、少なくとも80年代初頭まで、欧米人の多くはアヘン吸引の悪習は中国古来の伝統であり、むしろ欧米人のお陰でその悪習を絶つことができたと確信していた..との記述があります。つまり「アヘン戦争」のような大事件の因果顛末が欧米人にはほとんど全く認識されていないと。 彼の国々の歴史教育は、日本と異なり通史を教え込む授業ではなく、議論などを中心とした考える授業だと耳にしますが、もし基本的な事実をおざなりにして、好きなところをつまみ食い的に取り上げ、勝手な議論と考察で勝手な結論で終わっているとしたらそれも問題が多いと思います。アヘン戦争について日本では中学高校で2回は習うはずですが、欧米における現状はどうなのでしょうか。この点についてもご存じの方はご教示いただけると幸いです。 そして、教育の現場等では、これら諸々を踏まえながらどの辺で折り合いをつけるのか悩みながら実践されているのだと思います。ご苦労の経験など教えて頂けると助かります。また教わる方の立場の方の経験などもお聞かせ頂けるとうれしく思います。
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情報ソースはなんだったかすら忘れたあやふやな記憶(多分、テレビと本・笑)ですが、参考までに。 基本的にはどの国も「正史」を基本の縦軸にはしていますね。 「正史」とは、「その国の政府が正統と認め、対外的に主張する政治的な歴史」です。 (別の意味に、中国の『史記』などの歴史書を指すこともありますが) これらは、やはり各国の事情を反映して様々色々と特徴がありますね。 米国なら開拓者として、英国なら大英帝国時代の栄光に、ドイツならナチス政権の反省、インドなら独立etc,,, といったような、イデオロギー的な色はありますね。 ただ、英国では歴史学先進国なだけあって、歴史教材を上手く使ってるようです。 まず、日本では軽視されがちな「歴史学概論」のような事も重要視されるようです。 つまり、「歴史とは何か?」という、根本的な問いから始めるんです。 で、最終的には「知見に基づく懐疑主義(informed scepticism)」を生徒に根付かせることが目的となっているようです。 歴史学の基本は「証拠(史料)の無いところに歴史なし」です。 しかし、実際は「正史」のように、語り手・編纂するモノに都合の良いように改ざんされる余地が大いにあります。 中には悪意をもって偽の歴史を流布されることもあります。 そうしたモノを、まず疑って掛かることが、歴史を見るときには必要な観点となります。 そして、丁寧に史料批判を行い、歴史事実を確定していく手順が踏まれていきます。 そうした、「歴史学の方法論」を義務教育レベルから取り入れているようです。 また、テストもレポート形式が多いようです。 それによって、資料の活用と思考力を養わせるのが目的なようです。 ただ、最近ではインターネットの台頭で「コピペ問題」に頭を悩めているようですが。。。 また、欧州ではインターネットを初めとした情報化社会の到来において、「情報リテラシー能力」を磨く教育で対応しようというのが潮流のようです。 つまり、国家の検閲につながりかねない規制によって「悪意のある情報」を追放するのではなくて、例え「悪意ある情報」が氾濫しても「正しい情報」を見抜き活用できる能力を、個人レベルで養おうということですね。 そう言った意味では、「歴史」はちょうど良い教材ですね。 と、ざっくり大雑把なイメージとしてはこんな感じでしょうか。 少なくとも、日本みたいな「暗記科目」ではありません。 「アヘン戦争」については、正直現状は分かりません。 まぁ、80年代頃の教科書を見ると、確かに都合の良いように書いてありましたけど。
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- tachiuo
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高校で日本史を教えています。 「考える歴史」と言えば聞こえがよいが、高校生は歴史の基礎知識が乏しいですから、「教え込む」ことも必要だと思います。知識がなければ考えることは難しいですから。 幸いにして、私の生徒たちは、遠慮のない者が多く(人懐っこい、あるいは馴れ馴れしいとも言えるか?)、分らないこと、疑問に思ったことを授業中に積極的に質問してくれます。単に覚えればよいとは考えず、理屈で納得しようとします。こうした質問に丁寧に答えようと努めています。 授業において、生徒と、こうした遠慮のいらないつきあいができる学校ばかりではないでしょうが、そうした雰囲気を教師が作りだす努力は怠らないようにすべきです。教師が幅広い知識を持つこと、一方的な授業にならないように生徒の理解を確認しながら授業を進めることなど、教師は資質向上に努める必要があります。
お礼
明瞭率直で貴重なご回答ありがとうございます。おっしゃることは私も全く同感です。明確な立場から質問に正面からお答えいただきましたことに心から感謝致します。
お礼
早速にも詳細で丁寧なご回答ありがとうございます。大変参考になります。英国の歴史研究者は無論ハイレベルでしょうし、英国の指導的エリート層には歴史専攻者が多い(日本は法・経等実学中心なのに対して)と昔、聞いたことがあります。にもかかわらず、英国民の多数に正確な認識が広がらないとしたら、階級社会だからでしょうか?最も義務教育から方法論を取り入れていけば、英国の学校はイギリス人だけではないし、ネット情報にも触れるし、アヘン戦争の認識もきっと現在ではかなり改善しているのでしょう。
補足
先日、20代カナダ人AETに、英語の先生を通じて、質問してもらう機会がありました。それによると、アヘン戦争という言葉は聞いたことがあるが、習ったことはない。カナダの歴史教育は西洋史中心で、東洋史はほとんど触れないのだそうです。