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町人の歩き方がおかしいぞ
歴史の教科書や史料集に載っている絵を見ると、町人たちの歩き方や走り方がおかしいのです。右手と右足が同時に出ています。まさかこんな不自然な歩き方はしていなかったと思いますが、絵を描く人はどうしてこういう描き方をするのでしょうか。
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補足に対応します。 >もしそれが「人間」にとっての自然で基本的な歩き方だとすれば ナンバが人間一般に自然な歩き方だというわけではありません。 前の回答では触れませんでしたが、大事なことは「動作」というものも多分に社会文化的影響のもとに作りあげられるものだ、ということです。 身体行為には確かに、「こうすれば楽だ」という意味での自然な動作がありますが、必ずしもそれがある社会で一般的になるとは限りません。例えば胴体を極端に締め上げるコルセットや長期の苦痛を伴う纏足など、「不自然な身体行為」が文化的に嗜好されてきた例はいくらでもあるのです。つまり、身体行為も実は文化的に作られるものであって、必ずしも器質的な必然性に従わないところがあるわけです。 かつての日本人の歩行のナンバもこれと同じことで、農耕民族の生活形態から年月をかけて生み出されたもので、その意味では自然ではないけれども必然性があったのだと思います。 ナンバは一言で言うと「右手右足が同時に出る」こと、つまり半身ごとに動くこととされますが、より肝要なことは、ゆっくりとした動作だが持久的に力を発揮しやすいこと、それから「摺り足」を伴うことです。 むしろナンバの本質は「腰を落とし、ゆっくりと息をつめて地面を離れずに力を出す」ということにあり、これは水田耕作に適した文化的な身体行為だと言えるでしょう。稲作に適した文化的所作が一見不自然なこの「ナンバ」なのです。 この社会的動作がむしろ普通の歩行や走行にも影響を与えていた結果が、かつての日本人の動作全般に表れていたのです。幕末から明治期に日本を訪れた西洋人の多くが、日本人が「足を引きずるように歩く」ことを興味深く記録しています。一般生活でも日本人は膝を上げる現在の歩き方をせず、一見“だらだらとした”風な歩き方を普通にしていたことがわかります。 ナンバが稲作に起因するものであれば、米を神聖視する文化が生んだ相撲において、このナンバ(半身ごとの動き、低い腰、摺り足)が儀礼的に発展したことは当然のことでしょう。 また、ナンバが水稲生産に関係するなら、少なくとも東南アジア全般に影響があると予想できます。武智鉄二などが分析したことですが、世界の舞踏には大別して「舞い」と「踊り」の2種類があるとされます。 舞いの典型は能で、摺り足に腰を入れたいわゆるナンバ形式です。一方、踊りとは跳躍と回転を特徴とするもので、バレエなどが典型です。武智らは前者のナンバ形式の舞いが東南アジア、つまり稲作文化を持つ地域に共通していることを指摘したのです。 実際、稲作圏の舞いはインドネシア、タイ、カンボジアなど共通して上半身、特に腕や指先の繊細な表現が特徴で、下半身は腰を落とす姿勢をとり、跳躍は見られないのが特徴です。荒っぽく言えば跳躍と回転を主とする踊りは、牧畜や狩猟を生業とする騎馬民族に共通するものだと考えれば、長年の生産様式が身体所作を大きく規定していると言うことがわかるのではないでしょうか。
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- ZhakTin
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いま、NHKの金曜時代劇で『人情とどけます~江戸娘飛脚』 とかいうドラマをやっていますが、飛脚の走り方がなんとも滑稽です。鼓笛隊が小太鼓を叩くような手の動きです。 時代研究家の考証の結果だそうです。 あと、この手足を一緒に出す動きは世界中の武術全般にあります。1歩のリーチが長くなります。
お礼
ご回答ありがとうございます。金曜時代劇…昨日だったんですね、来週見てみます。
江戸時代までの日本人は手と足が一緒に出る歩き方が普通でした。 昔、時代劇の出演経験者さんのエッセイで、 「上半身は動かさずに腰から下で歩くのが時代劇の歩き方」 というのを読んだことがあります。 あまり上半身は動かさずに、腰から下だけ前後させて歩いていたと考えていいと思います。 今でも、相撲の型などでは、この“手と足が一緒に出る”動き方がまだ残っています。 日本人が現在のような歩き方をするようになったのは、明治期に軍隊や学校などで西洋式の歩法を取り入れて以降なんだそうです。 西洋式の軍隊の動きを真似るに当たって、日本古来の歩法では不都合が多かったからだと思われます。 歴史家の先生の中には、「だから昔の日本人は走るのがあまり早くなかった」と仰る方もおられますが、実際にどの程度差が出るものなのかはよく分かりませんです。
お礼
ご回答ありがとうございます。私がひっかかっているのは、食べ方やあいさつの仕方などはいろんな地方でマナーやしきたりがあって当然だと思いますが、歩き方は動物的な動きだから、日本古来とか西洋式とかないと思うんですね。
- neil_2112
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右手と右足が同時に前に出るような動作を古来「ナンバ」と呼んでいますが、これがかつての日本人の動作の基本形であるとされます。 一般に農耕労働は力を必要とすることもあり、この姿勢になります。ちょうど鍬やつるはしを持って作業する時のような姿勢をイメージすればよいのですが、半身全体が前に出た格好になります。これは力を必要とする農作業に適したものだったのです。 ただ、ナンバではエネルギーのロスも多く、このままでは歩行に適しません。従って、むしろ腰を入れて、腰から下だけを移動させるようにし、上半身はその上に単に乗せてあるように移動したのが農民の歩き方でしょう。 これが究極まで行き着くと、能のように上半身が全くゆれず、下半身に運搬されるように動くことになります。無論一般の歩行ではそこまで極端ではなかったでしょうが、右足が出る時には多少右肩がでる、という風にはなったのではないかと思います。 少なくとも手を振って歩く、ということはかつてはなかったでしょう。広重などの描いた飛脚なども、足を高く蹴り上げる一方、手は横になっており、現在のような走り方をしていないのは明らかです。 ラフカディオ・ハーンも明治中頃の日記に、子供達が学校で手を振って行進することを習っている様子を記しています。音楽に合わせた行進など、今なら習わなくともできるように思えますが、かつてはそうではなく“習う”必要があったものなのです。 先の回答にもありましたが、ナンバを改めて行進のできる国民を育成することは、富国強兵のスローガンのもと、国民を思想面のみならず身体面でも規律化するのに不可欠だったのでしょう。
お礼
ご回答ありがとうございます。「日本人の動作の基本形」ですか…。もしそれが「人間」にとっての自然で基本的な歩き方だとすれば、他の国や時代をさかのぼって猿人たちもそう歩いていた仲間がいるはずですよね。 たしかに1~2歳の幼児たちはナンバに近い歩き方をしているようには見えますが、別に親をまねたり習ったりして今の歩き方を身につけたわけじゃないと思うんですね。歩きやすい、走りやすいから、世界中どこでも今の歩き方に疑問をもたずに歩いていると思うのですが。
- karrie
- ベストアンサー率30% (142/459)
何かで読んだのですが、確かに江戸時代まで日本人はそういうように歩いていたようです。農耕民族であり諸外国から攻められることの少なかった日本ではあまり早く走らなければならない必要性が少なかったのかもしれませんね。戦うにしても日本人同士なら同じ走り方だと不公平でもないだろうし。 ただし、噴火や火事などで逃げる際には両手が上、というおまけがつきますが早くは逃げられなかったとも書いてありました。
お礼
ご回答ありがとうございます。「江戸時代まで」ということは「いつから」なのでしょうね。
- epson01
- ベストアンサー率12% (120/933)
回答のかたのおっしゃるとおりです。 一度、そのポーズで歩けばわかると思いますが、やたらと早く歩けます。
お礼
やたらと早く……歩けませんよー! 今やってみましたが、手を振らずに速く歩くことはできます。忍者みたいにちょっと腰を落として上体を上下左右に揺らすことなく、速く走ろうと思えば走れます。 ですが、絵みたいに右手や右肩を前に出して右足が出る歩き方・走り方では、絶対に速く歩けませんって。(別に怒ってるわけじゃないのですが)
- oo1
- ベストアンサー率26% (100/378)
「側対歩(そくたいほ)」とも言うようですね。あまり信じたくない歩き方ですが…。しかし、どうもその様な「傾向」の歩き方をしていたようですね。佐川急便の飛脚風の走法は、忍者も用いた「術」として確立していたらしいです。だから、意外と速かった?
お礼
ご回答ありがとうございます。町人衆やお武家さまどころか、忍びの者まで…ですか。 僕だったら法律で決められてもその歩き方はできませんし、周りのみんなが「ナンバ」で歩いたり走ったりしているのをイメージできません。昔の人には悪いけど…滑稽!
- yaima
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今の人と、江戸時代の人の歩き方は違います。 今の、手を振って歩く(右手と左足、左手と右足)という歩き方は、 明治以降に、陸軍での行進が広まったものです。 それ以前は、手を振って歩くことはありませんでした。 例えば江戸時代の男性なら、着物の袖口をつかんで歩くのが普通でした。 時代劇なんかで、若旦那風の人が歩いてるような歩き方です。 あまり言葉ではうまく説明できませんが…
お礼
ご回答ありがとうございます。手を振らずに歩くことはできますが、走るとなると… では時代劇でみんな「ナンバ」で歩くと真実みが増すのでしょうね。(でも役者さんは賛成するでしょうかねぇ)
- HUTABA
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実は昔はそうやって歩いていたのですよ。 そういう歩き方は「ナンバ」といいます。 何故そういう歩き方をしていたかと言うと、侍が刀を抜く時に都合が良いからだ…とか、農耕民族の日本人が田んぼを歩く時や鍬で土を起こすときの動作が身についたものだ…等色々な説があるそうです。 私は日本史の授業で後者だと聞きました。
お礼
ご回答ありがとうございます。「ナンバ」…ですか。それで歩けないことはないでしょうが、走れないでしょう。まして飛脚なんか1日に何十キロも走ったのでしょう?僕だったら100mで足がつるかもしれません。
お礼
とても詳しいご回答をありがとうございました。歩くという動物的な基本動作も文化的影響を受けるのですね。「自然ではないけれど必然性があった」から日常生活の中で習慣化され一般的になったとは、ある意味で驚きです、考えさせられました。他の文献まで引用していただき、大変わかりやすく腑におちました。感謝致します。