僭越ながら、「企業の民主化」という表現に接するのは、稀有かと思います。googleなどでキーワード検索をしてみても、この質問がトップでヒットします。
歴史のカテゴリーで質問された意図は存じませんが、歴史的な関連でいえば、第二次大戦直後に独占資本的な財閥が解体されたことを指して、「経済の民主化」と表現することはあるでしょう。
さて、「企業の民主化」という表現が存在すると仮定して、その意味を推測してみます。
会社法では、株式会社の機関について規定されていますが、その理念と現実の姿には大きな乖離があります。
そもそも株式会社での最高の議決機関は、投資家で構成される株主総会です。株主総会で、経営を担う取締役が選出され、その取締役で構成される取締役会で代表取締役が選ばれます。一般に代表取締役は、社長でもある場合が多いです。他の取締役の職務は、代表取締役の経営活動を監督することです。
そうすると、理念上の権力関係は、株主総会→取締役会→代表取締役という階層構造になるはずです。
しかし、現実は権力のベクトルが真逆になっています。代表取締役(社長)が経営権を全面的に掌握して、他の取締役は社長の命令に服するだけです。本来なら、社長が経営ミスや法令違反をした際に、それを追求するのが取締役の職務なのです。
つまりは、会社法で規定する機関構成が機能していないわけです。ましてや、最も上位にあるべき株主は蚊帳の外です。
したがって、「株主主義」とか「株主主権」のような捉え方が「企業の民主化」の概念に近いのではないでしょうか。
なお、会社法において、従業員の地位は「使用人」と規定されています。会社との雇用契約に基づいて、その指揮命令に従う存在です。
法的には、従業員が会社の主役という論理は成り立ちません。単に従業員の意見を反映することを「企業の民主化」と捉えるなら、情緒的であり短絡に過ぎます。
ただ、労働者(従業員)の経営参加を制度化するような動きがあれば、それを「企業の民主化」の一手段と見なすことができるかもしれません。
お礼
会社法の観点からご説明をいただきまして、 非常に分かりやすかったです。 企業の民主化 という言葉に深い意味はありませんでした。 民主化 と 企業 を組み合わせたところに面白い発想が生まれないかと、期待しました。 その結果、morimaru47さんのような博識の方のアドバイスをいただくことができました。 特に法律の観点から、 ■民主的とはどういうことか。 ■それを会社に適用しようとすると、どう考えられるのか。 が、質問前と比べて、かなりクリアーになりました。 どうも、ご回答ありがとうございました!