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「圏」の訓読みは?

[使用例] 第2巻は31章から成っており、実に種々雑多の題目について論ぜられているのであるが、その間自らグループをなしてほぼ共通のテーマにわたっていると見られる圏があり、この訳書においては自殺論を中心にその前後の5章をとりあげることにした。 これは、ある翻訳者が自らの訳書の巻末に「訳者跋」として記した文章の一節です。 訓読みとは限りませんが、ここでの「圏」はどう読むべきですか。「ませ」と読ませたいのではないかと薄々推理しますが、いけませんか。 単に読み方の推定だけでは困ります。簡潔なのはよいとして、そう読むべき根拠の提示とともに説得力のある論述を希望します。なお、意味については困っていません。 よろしくお願いします。

質問者が選んだベストアンサー

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  • Ganymede
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回答No.5

戦後、官製の音訓表で音訓整理が図られたりしたが、その昔の人はわりと自由闊達に漢字を訓読みしていた。というようなことは、もちろんご存知と思う。また、昔の印刷物を見ると、ルビをふってあるものが少なくない。 そこで、早い話が、「青空文庫」で「圏」のルビを調べてみるのである。Googleで「圏 -圏点 site:aozora.gr.jp」を検索する。「圏点」を除外するのは、テキストの欄外の説明文で、この用語が頻用されているからである。 検索結果は約200件。その中から訓読みのルビありを眺めていくと、 「『圏』は「わ」と読んでたんだなあ」 ということが見えてくる。 「ませ」(籬。ませがき・まがき)よりも「わ」(輪・環)である。なるほど、訓読みなんて、意味が同じで平易な和語から当てていきゃいいわけだ。ご質問者は、もったいを付けすぎではなかろうか。 「圏」という字の成り立ちは、「形声」で「口」+「巻」。音符の「巻」は、「家畜を飼うために巻き込む囲い」の意。というようなことは、手ごろな漢和辞典にも載っている。 つまり、「圏」は本来、「檻」(おり)とか「囲い」(かこい)という、「(囲んだ)境界」を意味している。今日では、境界そのものよりも「境界の中の区域」を指すことが多いように感じるが、それは転じた意味であろう。 したがって、簡単に言えば、「圏」は「わ」でもある。地面に輪をかいて境界とする、その輪が圏である。「昔の人はわりと自由闊達に」と私は申したが、「わ」という読みは、この漢字の成り立ちを踏まえた、筋のよいものだと思う。 私は、大学の教養過程で「諸橋大漢和は俗っぽい」とのたまう先生を知って驚いたことがある。本家中国にも負けないらしい世界最大級の辞典、碩学畢生の大事業をつかまえて、何てこと言うのだ……。しかし、話を聞いてみると、なるほど漢和辞典は、異字俗字から訓読みらしきものまで載せるから、いわばピジン中国語(クレオール化していく過程?)みたいな要素を排除できない。俗っぽくない漢和辞典はない。『大漢和』は、それらすべてを包摂する大著であろう。その中の記述が、一つ残らず典雅なカノン(canon)なのではない。 【結論】 昔は「圏」に「わ」とルビをふることが多かった。ルビと訓読みは、厳密にいうと同じものではないだろうが、参考になる。「圏」の意味は「(囲んだ)境界」である。境界そのものを指すのが、本来らしい。 ただし、ご質問のテキストには「わ」は当てはまらない。似た意味の平易な語を当てるのがよい。「かこい」がいいと思う。現代の我々の語感でピンと来る必要はない。「かこい」でなければならない理由はないが、「かこい」じゃなくて「ませ」だという根拠も薄弱である。「諸橋大漢和のイの一番の記述」だから、というのには、諸橋大先生も困惑するのじゃなかろうか。訓読みなんて俗っぽいものは、漢学者の本来業務ではないかも知れない。 また、「マイクロソフト標準の漢字変換で、『かこい』の変換候補に『圏』がある」という理由付けは、くだらなさ過ぎるので主張しない。

sono-higurashi
質問者

お礼

===ご回答を寄せて下さった皆様へ=== どうやら今日では万人が一致して、こう読むべきであるとする合意はないらしいと判断しました。文中での意味合いから各自のセンスで読むしかなく、またそれでよいらしいと理解しておきます。 大変お世話になりました。またの機会にも、よろしくお願いします。

sono-higurashi
質問者

補足

お礼ばかりでなく事後報告を兼ねているのと少々長いことにより、こちらの欄に記します。 このご回答による調査法は通常の市民が取り得る最善策かもしれないと思いました。話せることと聞いて分かることには落差があるので、自ら同じことを語ることはできませんが理解することはできました。 1. 教えて下さった検索法でヒットした205件のうち初めの160件について調べた結果をご報告し、お礼とします(170件以降を表示させる方法があるのだろうか)。こんな検証法は思いつきませんでした。 (1)「わ」と仮名が振ってある用法   1)宮本百合子「禰宜様宮田」    さっきまでは居る影さえしなかった鳶(とんび)が、いつの間にかすぐ目の前で五六度圏(わ)を描いて舞ったかと思うと、サッと傍の葦間へ下りてしまう。   2)森鴎外 「杯」    杯を漬(つ)けた迹(あと)のコンサントリックな圏(わ)が泉の面に消えた。   3)森鴎外「鶏」    長浜村まで出てみれば、盆踊が始まっている。浜の砂の上に大きな圏(わ)を作って踊る。   4)森鴎外「青年」    席はもう大分乱れている。所々に少(ちい)さい圏(わ)を作って話をしているかと思えば、空虚な坐布団も間々(あいだあいだ)に出来ている。   5)田山花袋「一兵卒」    糧餉を満載した車五輛、支那苦力の爺連(おやじれん)も圏(わ)をなして何ごとをかしゃべり立てている。   6)南方熊楠「十二支考」のうち「蛇に関する民俗と伝説」    この国の石や砂を他邦へ持ち行き毒虫を取り廻らせば虫その輪を脱け出で得ず皆死す。 この国の木で圏(わ)を画くもまたしかり。 (2)「けん」と仮名が振ってある用法   1)森鴎外「妄想」    次いで死の廻りに大きい圏(けん)を画(ゑが)いて、震慄(しんりつ)しながら歩いてゐる。 (3)「おり」と仮名が振ってある用法    1)南方熊楠「十二支考」のち「虎に関する史話と伝説民俗」     ア)例せば『列士伝』に秦王朱亥(しゅがい)を虎圏(おり)の中に著(お)いた時亥目を瞋(いか)らし虎を視るに眥(まなじり)裂け血出濺(そそ)ぐ、虎ついにあえて動かず。     イ)虎しばしば圏(おり)を攀(よ)じて吼ゆる声地を震わし観者辟易せしに、王戎(おうじゅう)まさに十歳湛然懼色(くしょく)なしとある、 これらによって、 >>「『圏』は「わ」と読んでたんだなあ」 この感慨を確かに味わえました。 2.「圏」という字の成り立ちからそもそもの原意を推し量り、「わ」という読みがこの漢字の成り立ちを踏まえた筋のよいものだとのお説にも、よく納得ができました。 3.「大漢和」は、もっとも網を広げた状態での情報ですから、ここから濃淡をつけて読み取るにはそれなりの学識が必要なのだと自戒します。 4.「わ」と読む用法が多いのを承知の上で、この場合は「かこい」としたいとする独自の態度に学びたいです。ただし、教わる立場では賛否を述べる資格がありません。一理も二理もありそうなのは理解できます。 5.>>訓読みなんて俗っぽいものは、漢学者の本来業務ではないかも知れない。 一つの見識だと思います。 6.発表しているのかいないのか、マイクロソフト標準の漢字変換が如何なる学者群を後ろ盾としているのか、一向に関心をもたずに利用しているのも安易に過ぎるのかも知れません。 これはご回答の決定版のような予感がしますが新たに寄稿の準備をされている方があってはいけないので、早くとも21日(日)までは締め切らないでおきます。有り難うございました。

その他の回答 (4)

  • DexMachina
  • ベストアンサー率73% (1287/1744)
回答No.4

引用文の内容からすると、 第2巻  第1章    :  第X章    :  第X+Y章     第1段      :   →自殺論についての記述    最終段  第X+5章    :  第31章 ・・・といった章段構成になっていて、自殺論についての記述のある前後の5章、 つまり第X章から第X+5章において、「ほぼ共通のテーマにわたっていると 見られる圏」がある、ということのようです。 つまり、「巻」「章」「段」と同様の(或いはそれを内包する)「範囲を示す単位」として、 「圏」という語を便宜的に用いたものと推測します。 従って、「巻(かん)」「章(しょう)」「段(だん)」等と同様、「圏」も「けん」と音読み するのが訳者の意図に沿うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

sono-higurashi
質問者

お礼

お見通しに間違いありません。遅れ馳せながら引用文の直前の句を追加します。 この訳書におさめられている5編は、『パレルガ・ウント・パラリポーメナ』の第2巻の第10章から第14章に相当するものである。第2巻は31章から成っており、実に種々雑多の題目について論ぜられているのであるが、その間自らグループをなしてほぼ共通のテーマにわたっていると見られる圏があり、この訳書においては自殺論を中心にその前後の5章をとりあげることにした。・・・・・・こうなっています。 なるほど「巻」、「章」、「段」、「節」、「項」と書籍の世界では一文字の音読みが随分定着していることに気付きました。「圏(けん)」という概念があるのかもしれませんし、なくても導入することに無理がないのかもしれません。 ANo.3といいANo.4といい、こういう方面からのアプローチがあるのなら出典を明示しておけばよかったと反省しています。 出典は、ショウペンハウエル著、斎藤信治訳「自殺について」の巻末の跋文でした。 もう少し、様子を見させて下さいませ。有り難うございました。

  • Big-Baby
  • ベストアンサー率58% (277/475)
回答No.3

翻訳者はsphere(スフェア)と読んでいたのかもしれませんね。スフェアを訳すのであれば「圏域」ぐらいがいいでしょう。

sono-higurashi
質問者

お礼

このご回答には語学に堪能な方の発想が表れていて興味をもちました。質問文から原文を特定できないのは当然で、このご回答で十分なのですが因みに記せば「圏」はSph*re(*はウムラウト付きのa)の訳だったかも知れません。原文はドイツ語らしいです。頂いたSphereを頼りにドイツ語辞典で知りました。私がドイツ語の辞書を開くのは火事場で拾ってきた鋸を何年振りかで使うようなものです。 ご回答を有り難うございました。

  • ASAYOSHI
  • ベストアンサー率42% (358/834)
回答No.2

手元の「漢字源」と「学研日本語大辞典」を見ると、「圏」の訓読みは 「おり」「かこい」が載っています。 ただ、例示された文章の場合、「おり」も「かこい」もピンときませんね。 質問者さんは、「籬 (ませ)」を思い浮かべているのでしょうか。 面白い考え方ですね。私としては、賛成も反対もできませんが、もう少し詳しく、「ませ」と読む理由を知りたいところです。 とりあえず、頭の中では「圏」(=エリア) と読んでおきます、私は。 あ、「区域」の意味もあるようですから、「いき」でもいいかな。

sono-higurashi
質問者

お礼

質問文作成時には以下を想定していました。 1 「ケン」または「けん」と読む。「徳を積む」、「信を問う」、「愛を語る」というときの「トク」、「シン」、「アイ」あるいは「とく」、「しん」、「あい」と同列の用法です。しかし、「圏」が「徳」、「信」、「愛」ほどに和語化しているのか否か確信がもてませんでした。 2 「ませ」、「おり」、「かこい」の何れかで読む。しかし、「ませ」には「籬」、「笆」、「架」を、「おり」には「檻」を、「かこい」には「囲」を当てるのが妥当に思えて確信がもてませんでした。 「ませ」を思い浮かべたのは私の独創ではありません。諸橋大漢和のイの一番の記述を機械的に模倣しただけです。大漢和の「圏」には「ませ」、「かこひ」、「しきり」、「をり」、「くま」、「さかひ」が紹介されており、別けても「ませ」がイの一番で、しかも、これだけが太字でした。漢籍に通じていれば、もう一歩絞り込めたかもしれません。 「いき」も候補かもしれませんね。質問文作成時には想定していませんでした。 素人同士では、どの説も半信半疑に終わるのではないかと危惧しています。多分、明治後期から昭和30年代までの国語事情に通じていて、一定の信用ある刊行物の編集、校正が務まる力量がないと説得力のある説明はできないのではないかと推測しています。 「いき」も候補という点に価値を見出し、お礼を述べます。有り難うございました。

  • syuuwl
  • ベストアンサー率21% (10/46)
回答No.1

「けん」以外にこの漢字の読み方を知りません。 根拠は下記参照下さい。 http://dictionary.www.infoseek.co.jp/?ii=0&lp=0&sm=1&sc=1&gr=ml&qt=%B7%F7&sv=KO&se=onhttp://dictionary.www.infoseek.co.jp/?ii=0&lp=0&sm=1&sc=1&gr=ml&qt=%B7%F7&sv=KO&se=on 漢字の読み方について「説得力のある論述」というのは何を求めているのかよくわかりませんので割愛します。 「漢字」は何で「かんじ」と読むのですか?という質問と同じような意図でしょうか ?

sono-higurashi
質問者

お礼

辞典には「ケン」としかないのは承知していました。その上での質問であることは察知していただける質問文になっていると思っていました。 「説得力のある論述」の見本は、運がよければANo.2以下に提示されるかも知れません。期待している回答を、それによって知って下さいませ。

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