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マンション規約における連帯責任とは?
- マンションの規約には、ペットクラブが「連帯して責任を負う」ことが書かれていますが、その趣旨や範囲について疑問があるようです。
- 具体的には、(1)連帯責任の趣旨が単純な連帯責任なのか、早期救済のための連帯責任なのか、日常的な連帯性なのか気になる点です。
- さらに、(2)連帯責任に基づいた場合の結論や、(3)ペットクラブを訴えることの現実性についても知りたいとのことです。
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前のご質問のときから気になっていましたので、理事長を務めた経験に基づいて回答させていただきます。結論から先に言えば、ペットクラブの構成員がペット飼育者に連帯して第三者に対する賠償責任を負うことは原則としてないと考えます。 1.マンションの規約(細則を含む)の法的根拠およびその効力を定めるのは区分所有法です。 区分所有法の第30条第1項では、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」と定められています。 言い換えれば、規約(使用細則を含む)で定めることができる事項には制限があり、「建物等の「管理又は使用」に関わりがない事項は、規約として定めても効力が生じない」し、また「区分所有者と区分所有者以外の第三者との事項を規約で定めることはできない(定めても無効である)」(稲本・鎌野『コメンタール マンション区分所有法』)ということになります。 たとえば、管理組合が町会費を徴収することを規約で定めたのは、管理組合の目的外の事項であるから無効であるとした判例があります。(つまり「契約自由の原則」は、マンションの管理規約や使用細則については成立しないのです。) 2.飼育動物が第三者に損害を与えた場合、誰が損害賠償の責任を負うかは、第三者と飼育者との間の法律問題であり、「区分所有者相互間の事項」ではないので、規約または細則で定めることはできません。 ご質問の規則によれば、たとえば理事長や管理会社は、ペットによる損害に関して責任を負わないことになりますが、こうした規定は第三者に対して効力をもちません。逆に、ペットクラブの構成員が連帯責任を負うことが第三者にとって有利であるからといって、規約や細則の第三者に対する効力が生じるわけではありません。 3.区分所有法第29条(区分所有者の責任)によれば、区分所有者は、管理者(=理事長)が「その職務の範囲内において第三者との間にした行為」に関して、それぞれの持分に応じて責任を負います。しかし、「管理者の不法行為については、管理者の職務の範囲内の行為ではないから、・・区分所有者が責任を負うことはない。管理者の個人責任となる」(『コメンタール マンション区分所有法』)とされています。 いわんや管理者でもない個々の区分所有者の不法行為について、他の区分所有者が連帯責任を負うことはありません。(もちろん他の区分所有者にも過失があり、共同不法行為を構成する場合は話が別になります。) 4.以上のことをふまえてご質問に回答しますと、 (1)連帯責任の趣旨 趣旨以前に、誰に対して責任を負うのかが問題です。その対象が被害者一般(第三者)であるとすれば、そのような内容を規約で規定しても効力がありません。 後に述べるように、この規則は、第三者に対する責任ではなく、管理組合に対する責任を規定したものと解釈するのが最も妥当だと思われます。 (2)連帯責任の趣旨に基づく結論 たとえば、犬がご老人をびっくりさせて怪我をさせ、何百万の損害が発生したような場合、ペットクラブの構成員が、ペットクラブに属しているという理由で賠償責任を負うことは原則としてありません。 ただし、 (a) ペットクラブ自身に過失がある場合(ペットクラブで犬を一時的に預かっていたとか、ペットクラブの主催した行事で被害が発生した場合など) (b) マンションの管理組合が管理責任を問われ、賠償責任を負う場合 はその限りでありません。 (3)連帯責任の現実性 現実として「加害者だけでなくペットクラブを訴えること」の可能性はあるのでしょうか? 一般に知られている範囲では、そのような事例・判例はありません。 しかし、訴えを提起することは自由ですし、和解した場合などは報道されませんので、訴えられる可能性が全くないとはいえません。 もっともたとえ訴えられたとしても、2.および3.の理由により、ペットクラブの構成員が、この細則にもとづく連帯責任を負わされることはないでしょう。また、ペットに関するマンションとしての管理責任が問われるとすれば、その責任はペットクラブにあるのではなく、管理者(=理事長)にあります。したがって、被害者が飼育者やその預託を受けた者以外を訴える場合は、基本的に管理組合が対象になるでしょう。 上に述べたように、管理組合がいくら細則を盾にとって責任はないと主張しても、その主張は第三者に対しては無効です。 (4)区分所有者間の問題 この規則が第三者に対しては効力がないとしても、区分所有者間においてどこまで有効であるかという問題は残ります。 (ⅰ) 飼育者が被害者に賠償した場合、この規則に基づいて、賠償額の一部をペットクラブに負担させることができるでしょうか。 これはできないと考えられます。なぜなら、区分所有者個人の債務を法律上の根拠もなく他の区分所有者に負担させることは、規約で定めうる範囲を逸脱しているからです。 (ⅱ) 管理組合が賠償責任を負う場合、あるいは、何らかの理由で飼育者に損害を賠償させることができず、管理組合が費用を負担せざるをえない場合、管理組合の被った損害をペットクラブの構成員に負担させることができるでしょうか。 これは一定の条件つきでできると考えられます。 なぜなら、ペットによる損害に関して管理組合の負担した費用は、広い意味で共用部分の管理または管理組合の運営に要した費用とみなされるので、その負担割合については管理組合の内部で決めることができるからです。原則としては全区分所有者が持分に応じて負担すべきものですが、区分所有法第19条は、規約で別段の定めをすることを認めています。問題の規則は、「ペットによって管理組合が被った損害に関しては」、全区分所有者ではなく、ペット飼育者とペットクラブの会員のみが責任を負うという取り決めとして理解することができます。 しかしこの場合でも、この規則が無条件に有効になるわけではありません。区分所有法第30条第3項には、「規約は・・・区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」と規定されており、ペットクラブが無過失であるにもかかわらず、この規則を盾にとって莫大な負担を要求することは「利害の衡平」に反するものとして無効とされるでしょう。 また、多くの管理組合は、「個人賠償責任保険」に一括加入しており、ペットが他人に怪我をさせたような場合は保険で担保されますので、実際問題としてはあまり心配されることはないかと思います。管理組合の加入している保険の内容を確認してみることをお勧めします。 (5)区分所有法の内容や、管理規約・細則の効力については、下記のリンクの解説をご参照ください。「独断と偏見による」と銘打っていますが、専門的で有用な情報が含まれています。 http://nakadein.hp.infoseek.co.jp/hourei/houreiindex.html
その他の回答 (1)
- liar_story
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前回のレスの内容及び今回の内容等の全趣旨から判断すると。 『※第○条 飼育動物による汚損、破損、傷害等が発生した場合、理由のいかんを問わず、 飼育者および他のペットクラブ全会員が連帯して全責任を負わなければならない。』としていることからマンション内で起きた事故についてはペットクラブとしての責任ではなく、飼育者全員での連帯責任、連帯債務ですね! 例えば、飼育者が10人で損害賠償額が1000万円とすると、飼育者一人あたりの負担が100万円と言うことになります。
お礼
大変ご丁寧な回答を頂いているにも関わらず、 お礼のお返事が遅くなり大変申し訳ございませんでした。 ご回答頂いた内容を参考にし、 問題が生じた場合は対処したいと考えております。 また、何か不明な点が生じましたら、 お手数でもご回答いただければ幸いです。 重ねて丁寧なご回答に感謝申し上げます