(続きです)
似たような問題で、近い関係にある言語を言語と見なすか方言と見なすかという議論があります。英語だけを見ていると物事が分からなくなりがちですが、他の言語の例も参考になります。インドネシア語とマレー語はほとんど同じでも違う言語としてあつかわれますし、中央アジアのテュルク諸語も近い地域ではコミュニケーションに何ら困らない拘わらず民族ごとに名前が違うようですし、逆に中国語の「方言」は言語学的に見れば違う言語となりそうですが、あくまで同じ言語の方言として扱われています。全て政治的・民族的な意図の働いている問題です。
歴史的に英語と似たような役割を果たした言語では、スペイン語がありますが、これも本国と中南米で英語・米語以上の差がありますが、どれも「スペイン語」と呼ばれています。日本では外国語は英語だけ、あるいは英語を中心に学ぶ人が圧倒的に多いことが反映され、英米の差ばかりが議論されますが、他の言語でも当然同じ事が問題になり得るわけなので、是非そういうことも一度調べられてみてはどうでしょうか?問題の全体像がすこし客観的に見えてくると思います。
言語の正当性も良く議論されます。英語の発祥の地はイギリスですが、アメリカの方が古い英語の特徴を残しているということもあり(アメリカ英語の方が全体的に保守です。未だにrを発音している、仮定法のある種の用法はイギリスではもう死んでしまいましたがアメリカではまだ使われている、quit, fall(秋)など古い英語の単語を残しているなどなど)、言語的にはどちらかが正当の英語だとはできないと思います。基本的に好みの問題だとおもいます。イギリス英語の方が好きな方は、日本の教育でアメリカ英語の方が優勢で強制的にそちらを教えられるのに憤慨する気持ちは分かりますが、言語的正当性を根拠にイギリス英語を推進するのは難しいでしょう。
ということを考えますと、はじめの結論に戻ることになります。アメリカとイギリスは歴史的文化的に親密で、政治的関係も良好で(ブレアの判断は最終的に誤りだったかもしれませんし、反米の人もいますが、なんだかんだ言ってイギリスはアメリカの力が背景にあるからこそヨーロッパでのあの地位を保っている訳です。日本もかなり似ていますが)、どちらの国の人も一般的に Englishという言葉を用いていています。しかも、お互い十分コミュニケーション可能ですし、外野である日本人が常に二つを厳密に区別して、他の言語としての名前を当てる必要はないと思います。もちろん、区別が必要な時もあり、そのときは区別すべきです。ただアメリカの英語を英語と呼ぶことを拒否したり、常に英米を区別する必要はないとおもうと言うことです。
区別が必要な例として、英語教育があります。方言のごちゃ混ぜはおかしく聞こえるので、教育の場ではもっと区別をはっきりさせるべきだと思います。アメリカ英語を採用するならするでそれを明確に述べるべきですよね。ですから必要なときには英語・米語などという単語を用いてはっきりさせるのは良いことだと思います。でも例えば科目名を「米語」に変える必要があると思いますか?
余談ながら、言語の名前をかなり明確に分けている場所として台湾があげられます。台湾では語学学校が「英語」という言葉を使わずに「美語」(米語の意味)という言葉を使って広告をすることが多いようです。しかしこれは言語的・文化的にに正確を期すために二つの方言を区別していると言うよりは、良くも悪くもアメリカに心が向いている国民の感情を利用した商業的な判断の結果だと思われます。
最後に、これはイデオロギーの問題なので、違う意見を持つ人もたくさんいると思います。以上は私の意見にすぎないので、いろんな人の意見を聞いてみてください。また、残念ながら上の議論からはほとんど抜けていますが、英語が使われている国はイギリス・アメリカ以外にも沢山ありますので、本当はそれらの国のことも考えなければいけません。また私自身普段アメリカ英語をしゃべるものの、アメリカ英語が優れている思っているわけではありません。個人的に国としては実はイギリスの方が好きですが、言語の呼び名の問題に関しては上のように考えます。
George Bernard Shawが言うようにEngland and America are two countries divided by a common languageなんですけどね。お時間があればlondonerswさんの意見ももう少し詳しく伺いたいのですが何か書いてくださいますか?
お礼
nagonagoriさんのおっしゃる通りだと思います。 私自身、インドネシア語もマレー語も勉強をしたことがないので、英語にだけ焦点をおいてしまう事があるかもしれません。 他の言語も含めて考えてみたいと思います。 アメリカ、イギリス、どちらかが優れてるとは言いませんが、英語表記をするときには英語、米語と使い分けて欲しいと思ってる次第です。 同じ言語を話していても2つとも全く違う国ですから。 貴重なご意見ありがとうございます。