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今はなき法律、条文は法的根拠となるのか?
たとえば、今から2年前まで存在していた法律または条文Aがあったとします。事件Xが3年前に起こり、それがAに違反していたとします。 今裁判を起こしたとすると、すでにAは存在していませんが、2年前にはAが存在していたので、Xの内容はAに違反するとすることができそうな気がしますが、いかがでしょうか?当時は違法だったわけですから、訴訟可能と思いますがいかがでしょう? よろしくおねがいします。
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刑事罰について述べますと、以下のとおりです。 刑罰の廃止・軽減は加罰的違法性(平たく言えば、社会的に相当と考えられる罰の程度)が下がった、あるいは意味を持たなくなった場合に行われます。例えば、日本国憲法の制定によって国民主権を国家制度の基本においたために大逆罪・不敬罪が廃止され、男女同権になったので姦通罪が廃止され、その後も法の下の平等の観点から尊属殺過重処罰規定が廃止されました。 社会における加罰的違法性の程度が変化しているために国家権力をもって罰を加える程度が変わっていますので、行為時の法定刑が行為後に軽減・廃止され、その後に刑事罰を判断されることになった場合は、その時点で社会的に妥当と考える罰を加え、あるいは罰を加えないことにすることが社会的要請に叶うものだと考えられます。 これを具体化したのが刑法第6条「(刑の変更) 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。」という定めです。 同一行為に対する処罰を同じ時に(同じ社会的処分感情の下で)判断するのに、わずか法改正の前後であるだけなのに片や重く、片や軽く処分することは法の下の平等を欠く結果になりますので、処分を判断する時点での加罰的違法性判断に委ねることの方が合理的です。 これは、刑事罰が報復的な罰を基本とするものではなく、教育刑・威嚇刑的な要素を持っているからです。 一方、その逆(重罰化・処罰規定の追加)の場合に行為時の(軽い)刑罰が原則であるのは、行為時点での違法性の程度について予見可能性が低い(つまり、こういう行為をするとこういう処罰を受ける、という認識が低い)ことになり、違法性の認識(行為者の主観的違法性認識)がその分低かったことになりますから、変更後の処罰を重くした事後法を適用する妥当性を欠くことになります。 国家による刑罰権は、憲法第31条で「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」とありますが、実行行為の後に違法性を付け足されては法の下の平等は有名無実になり、基本的人権は守られません。このため、憲法第39条で「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」という定めをおいて、国家権力による横暴に歯止めをかけています。 以上から、ご質問の件は訴訟によって回復すべき法益は失われているということになり、告訴しても却下されるか、さもなくば無罪となるものと思われます。 民事事件の場合には、基本的には私的自治の原則によりますので、民法の規程が直ちに個別の事案に適用されるものではなく、当事者の意思に委ねられます。当事者の意思とは、事実があった時点における法令の定めが前提ですから、事後変更があっても意思形成時点での法令を適用して解釈すべきことになるかと思います。
その他の回答 (4)
既に回答がなされているようですが、刑法6条により、「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる」とされており、有る行為を処罰する法律が廃止された場合には、処罰する根拠を失い、罰することができなくなるとする考え方があります。 その一方、それでは法律が失効する前に処罰を受けた人と、失効直前に違法行為を行って、処罰の根拠法が失効したことによって処罰を免れる人の両方が出て不公平だから、その場合も諸ばるされるとするべきであるとする考えの2通りの考え方が対立しています。 しかし、通常、この様に法律が廃止されるような場合には、廃止するための法律の附則、或いは、廃止される法律自体の附則において、「この法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」とか、「この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」とかの規定を設けているのが普通で、この規定が無い限り、処罰の根拠法令が失効した時点で、処罰されなくなると考えるべきであるとされています。 したがって、ご質問のような場合には、上記の内容の附則があるかどうかによって、処罰可能かどうかが決まると考えられます。
- shoyosi
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本来、刑法は行為時の法によって処断されることが罪刑法定主義からの原則から要請されています。また、刑法6条には、行為時法とその後の法で変更があった時は、その最も軽い法を適用すると定められています。この原則から、いいますと設問のような場合は変更で不可罰となっていますのでむ無罪になります。しかし、特にある時以後刑の廃止が決まっている法律(限時法といいます)の場合、刑法6条により裁判時には軽い法、すなわち無罪となるとすれば、法律による犯罪抑止効果は徐々に低下し、廃止時に近くなればその効果はなくなってしまいます。そこで、刑法6条には反するが、解釈によって、刑の廃止後も従来の刑を適用すべきとの説もあります(限時法の理論)が、通説は、限時法の法文中に、「旧法の規定は、なお効力を有する」との明文を規定しておけば、刑法6条に対する特別法として処罰が可能となるのであるから、そのような解釈は認められないとされています。なお、民法や告示が変更されたことにより、その行為が可罰性を失った場合は刑の変更にはあたらないとされています(物価統制令の対象品目からなくなった場合など)。 数年前、京都の宇治市で住民票が流出して、その犯人が逮捕されましたが、市の方で罪が軽すぎるので、軽い条例を廃止して、重たい条例を制定しました。ところが、軽い条例を廃止するときに、そのまま廃止しましたので、犯人は軽い条例さえも適用できなくなり、無罪となりました。 民事ですと、憲法に違反しない限り、当然可能です。
- sein13_2
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>また完全にその法規が無くなってしまった後に、当事者の間にその適用当時の事件が存在した場合は、判断基準とされることはあるでしょう。 憲法39条で、既に無罪とされた行為は罰されないということでいいんじゃないでしょうか。法律が執行された以上は、完全に法規が無くなってしまえば、限時法の明文も問題にならないと思います。 あくまで限時法の規定は明文があったとしても、刑が廃止されるまでなのですから。 ここのところがちょっと気になったものですから。 刑法の問題だけとは限らず、民法の場合は、訴訟は無理かもしれませんが、適用は可能だと思います。相続の規定において、持分割合が何回か変ってます。従前の規定において違反する持分で相続されて、一応相続回復請求権(民法884条)の除斥期間が20年ですが、当事者間の合意でそれを適用せずに、登記の持分を修正することがよくあります。 蛇足で申し訳ないのですが、SCNKさん、以前はすみませんでした。憲法の問題となると熱くなってしまって。ここで回答されている方に悪い方はいないと信じてますし。以前、公務員やっていて、権力者はだんだんと酷くなっていきますから。みんなが平和に幸せに生きていけたらいいなって思う私の考え方もご理解くださいね。
- SCNK
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事後法不適用の原則があります。したがって違法では無かった行為が、実行のあとで違法となっても処罰されないと考えられます。 刑法においては厳格に適用されますが、例えば事後法の適用が利益になるような場合においては政策的に適用する場合もあるようです。特に手続き法においてはそのような傾向が強いということを聞いたことがあります。 なお、付則によって時限的に適用させるような場合があるので気をつける必要があります。たとえば「第○条については当面の間、従前のとおりとする」というような場合です。 また完全にその法規が無くなってしまった後に、当事者の間にその適用当時の事件が存在した場合は、判断基準とされることはあるでしょう。
補足
皆さんありがとうございました。 私は法律素人なので正直少々難解な部分もありましたが、 何となく理解できました。 質問するだけの価値のある質問だったと思いました。 とても勉強になりました。