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ゼーベック係数の温度依存性について
題名のとおりです。金属において熱伝導率や誘電性が温度の上昇とともに低下するのはフォノンの散乱などにより阻害されるためであると学びました。ではゼーベック係数はどういう理由で温度の影響を受けるのですか?同じようにフォノンによると考えてよいのでしょうか。
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- inara
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PbTeも半導体です(http://www.material.tohoku.ac.jp/~denko/PbTe_1.htm)。
- inara
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問題とされているのはペルチェ係数でなくゼーベック係数の温度依存のことですね(確認)? 話を半導体の場合に限定しますが、ゼーベック係数 α{V/K] は α= k/e{ln(N/c)+A} で表されます[1]←末尾のURL番号 kはボルツマン定数[J/K]、eは素電荷[C]、Nは価電子帯または伝導帯の有効状態密度[1/m^3]、cはキャリア濃度[1/m^3]、Aは定数です。k/eは定数ですので、ゼーベック係数を決めているのは N/c になります。cが大きい金属ではゼーベック係数が小さくなります。ゼーベック係数の温度依存は N/cの温度依存です。 n型半導体の場合、Nは伝導帯の有効状態密度で、これをNcと書くと、Nc=(2πmkT/h^2)^(3/2)、mは電子の有効質量[kg]、Tは絶対温度[K]、hはプランク定数[J・s]です[2]。p型半導体の場合はmを正孔の有効質量とします。この式から分かるように、Nの式自身にTの項が入っているので温度依存があります(T^1.5で変化)。 一方、キャリア濃度cは、n型やp型半導体の場合、バンドギャップの大きさと不純物準位の位置によって温度依存が異なります(これは習っているかな?)。不純物レベルからキャリアが出払っている温度領域(飽和領域)ではキャリア濃度の温度依存はあまりありませんが、温度がそれより上がって、バンドギャップを超えてくるキャリアが支配的になってくると、温度増加とともにキャリア濃度 c が急激に増加します[2]。問題となっている温度依存の温度範囲がこのどこに該当するかは、同じ半導体でもドーピング材料によって違いますし、バンドギャップが違えばまた違ってきます。したがって、ゼーベック係数の温度依存は、大雑把な言い方をすれば、 N/cの温度依存というしかないです。 私は熱電変換デバイスの専門家ではありませんが、今回deepdayさんの質問に10日以上回答がついていなかったので可哀想に思い、ちょっとWebで調べてみたのですが(学校の宿題でない物理探求的な質問は好きなので)、個々の材料のゼーベック係数の温度依存はいろいろ出ていますが、それをきちんと説明したものはないですね(詳しく調べていませんが)。その値をいかに大きくするとか、材料による大きさの違いはよく出ていますが。 今回、金属の場合の温度依存は調べていませんが、自由電子数の温度依存で説明できるのではないでしょうか。熱電対は金属材料が多いですが、これは熱起電力は小さいけど、温度依存が小さい(直線性が良い)という理由でしょうかね。私は仕事でペルチェ素子も熱電対もよく使いますが、何の疑問も持たずただ道具として使っているだけで、こういう質問を見ると、もっと好奇心を持たなければと反省してしまいます。 [1] http://www.bekkoame.ne.jp/~shin_/zai/zaifusi.htm [2] http://spirit.pe.titech.ac.jp/lectures/secret/bussei5.pdf
お礼
熱電材料について、高温での良好な材料として鉛-テルル系の材料が紹介されていたのですが、英語の論文である上に研究者も外国人でして概要が理解できませんでした。その中で熱電材料に求められる特性に、ゼーベック係数の話も出ていたのです。 半導体についてのゼーベック係数とこれが同じ話であるかはちょっと理解できませんが(勉強不足です)、詳しい解説有難うございました。