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微粒子の強磁性
微粒子の磁性についてわからないことがあります。 それほど大きくない(単磁区の)微粒子は 超常磁性の振る舞いを示すと理解しているのですが 多くの論文では強磁性的な振る舞いを示すと書かれていたりします。 しかし強磁性は、協同効果によるものと理解しているので 単分散の微粒子が強磁性を示すと書かれていても 腑に落ちずに困っています。 超常磁性の微粒子がブロッキング温度以下で強磁性の”ように”振舞うことを 勘違いして「強磁性の微粒子」と著者達は書いているのでしょうか? それとも私の理解が少し違うのでしょうか? どなたかご存知の方はご教授下さい。よろしくお願い致します。
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回答#2の者です。 質問者さんの疑問に再度回答してみます。 観測手段を変えることで違って見えるのは、同じ超常磁性という物性に対しての話しです。これは、つまり超常磁性が物質に固有の物理現象を意味するのでは無く、あくまで速度論的な現象だと言うことです。 磁化緩和についてですが、磁気異方性の存在しない理想的な強磁性体の場合には、無磁場中では特定の方向へ向く必要はなく、原理的には非常に長い時間をかけて熱緩和することになります。つまり、磁化緩和するかどうかは強磁性であるかどうかの定義にはならないわけです。 ferromagnetismの定義はお考えのとおりでほぼ良いと思いますが、注意していただきたいのは、エネルギー最小の意味が磁場中での話では無いということです。強磁性の本質は、外部磁場とは無関係に原子レベルのスピンが同方向に揃うような(正の)相互作用をする(つまり、自発磁化を発生する)点です。 この定義に従えば、ブロッキング温度以上でも以下でも、超常磁性は各原子の持つスピンが正の相互作用で結びついており、立派なferromagnetismです。 超常磁性の方も、ほぼその解釈で良いのですが、スピンというより磁化と考えてください。超常磁性がブロッキング温度以上でふらつくのは巨大な数のスピンが結合した「磁化」の単位であって、原子単位のスピンがふらついている常磁性とは決定的に違います。
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- kenojisan
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強磁性の本質は質問に書かれているように、十分に多くの原子(スピン)が交換磁気相互作用によって平行に揃う効果(協同現象)と考えて良いと思います。 一般的に、室温で超常磁性を示すと言われる粒子サイズは、100~10nm程度ですが、このような超微粒子でも1万~1000万個のスピンが含まれており、それらのスピンが強磁性相互作用で揃っているなら、物性の本質として見るなら「強磁性」と考えるべきなのです。実際に、ミクロな測定手段で調べる限り、超常磁性を示す強磁性体と同じバルクの強磁性体には、磁気的性質にも電子状態にも何の違いも見つかりません。つまり、超常磁性はあくまで試料のサイズによって現れた現象であって、物質が持つ固有の性質では無いのです。 従って、超常磁性は「一見、常磁性のように見えるが、本質的には強磁性」と考えるべき現象だと思ってください。 なお、超常磁性というのは、相互作用で繋がっているスピンの合計のサイズ(磁化)が小さいために特定方向に磁化を固定するエネルギー(異方性エネルギー)も小さく、熱エネルギーによって揺り動かされて容易に自由な方向を向いてしまう現象ですから、超常磁性が観測され始める温度(ブロッキング温度)は、観測時間(観測方法)によって違ってきます。通常使われる磁化測定(観測時間は数秒?)では室温で完全な超常磁性であっても、もっと高速な測定法、例えばESR(nsオーダー?)を使えば通常の強磁性のように見えるということが起こります。シャッター速度の違いによって、被写体がブレて全く見えなかったり、止まって見えるようなものですね。 スピン間に揃えようとする相互作用が存在しない、純正の常磁性とはかなり状況が違うのです
お礼
ご回答ありがとうございます。 確かにおっしゃられるように、ミクロなスケールで見るスピン間の相互作用は強磁性ですね、目からうろこでした。 ただやはり疑問なんですが、観測手段を変えることで(通常の磁化測定からESRやメスバウアーなどの高速手段)違う挙動を示すと言うことは、やはり磁気的に違う物質と考えないのでしょうか? 例えば、磁気比熱の測定ではsuperparamangetとferromagnetでは、違う振る舞いが観測されますよね?(磁気比熱の異常) また交流磁化率の測定でもその違いが観測されます(交流周波数に対する依存性の有無)。 ですから、superparamagnetがブロッキング温度以下で示すferromagnetのような振る舞いは、厳密にはferromagnetismではなく、ブロッキング現象(磁化緩和の遅延)で、これをferromagnetismと呼んでよいのか疑問に思っているところです。 私はこれまで(かなり誤解も含まれているかもしれませんが)、ferromagnetとsuperparamagnetの相転移温度およびブロッキング温度以下でのスピン配列を、それぞれferromagnetはスピン間の交換相互作用によるエネルギーを最小化にするスピン配列の結果ferromagnetismになる、一方superparamagnetは異方性によって生まれたスピン反転に対するエネルギーバリアが比較的大きいために我々のタイムスケールではスピンが一方向に固定されているように見える(ブロッキング現象)という理解をしていました(物理的な機構が違うということですね、物理の論文でも証明されて、区別されているようです)。 どうなのでしょうか?疑問ばかりですみませんが、宜しくお願い致します。
- leo-ultra
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以前にちょっと超常磁性を勉強したものです。僕の認識がおかしいのでしょうか? むしろ、お教え下さい。 > ブロッキング温度以下で強磁性の”ように”振舞うことを勘違いして「強磁性の微粒子」と著者達は書いているのでしょうか 「勘違いして」と書いてありますが、両者はどう違うのでしょうか? 「強磁性は、協同効果によるものと理解しているので 単分散の微粒子が強磁性を示す」 すみません、この文の意味もよくわかりません。単分散ってなんですか? 要するに微粒子の強磁性か超常磁性かは、M-Hカーブに ヒステリシスがでるか、でないかじゃないのでしょうか? 軟磁性体もありますから、微妙ですが。
お礼
すみません、少し訂正致します。 上で強磁性、超常磁性と書いたのはすべて「強磁性体」、「超常磁性体」の話です。強磁性や超常磁性はその温度での性質ですからね。
補足
あくまで私がこれまで勉強してきた知識でお答えします。 強磁性も超常磁性もM-Hカーブにヒステリシスは出ます。 強磁性でも、相転移温度が室温より低ければ、室温ではヒステリシスは観測されませんよね? 一方、超常磁性でもブロッキング温度が室温より高ければ、室温ではヒステリシスが観測されます。 なので、単純にM-Hカーブのヒステリシスだけでは、両者の区別はつかないはずです。 強磁性のヒステリシスの由来は、スピン間の共同効果です。 超常磁性のヒステリシスの由来は、磁性体内の磁気異方性です。
お礼
ご丁寧な回答、ありがとうございます。 その後再度、論文を読み直したところ、読み違えて(勘違いして)いることがわかりました。 論文でよく目にするのはferromagneticであって、ferromagnetとはかかれていませんでした。 確かに微粒子内の相互作用はferromagneticですからね。 それにしても詳しい回答で、色々と勉強になりました。ありがとうございました。