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古代アッシリアと遠近法

 先日、イギリスの大英博物館に行ってきました。  そこで度肝を抜かれる思いで観たのが、古代アッシリアのレリーフ。紀元前7世紀の作品でありながら、見事な遠近法を用いて描かれていました。  味方である責め側の兵士達は、大きく。一方、城壁を守る敵側の弓兵達は、遠く小さく。臨場感あふれる作品でした。  遠近法は、ルネッサンスや浮世絵でその成立が語られると(薄学ながら)教わりましたが、だとしたらこのレリーフはいったいどういう意味を持つのか。あるいは、何らかの理由から遠近法に数えられないのか。  こうした事柄に関して、どなたか詳しい方に御教授いただければ幸いです。  よろしくお願い申し上げます。

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  • ベストアンサー
  • Ricchon
  • ベストアンサー率83% (5/6)
回答No.1

美術大学にて世界美術史の講義を受けたことがあり、タイトルを見て、少しでもお力になれればと思いました。 (以下は大学の講義・参考書より得た知識です。専門家ではありませんので完全な回答であると自信を持つことはできませんが、参考になりましたら幸いです。) そもそもアッシリア美術は、紀元前4千年期~のシュメール美術に続くメソポタミア美術の流れの一部である。メソポタミア美術はそれまでの石器時代にはなかった異なる文化との交流や絵文字の発達により美術的な表現も飛躍的に発達していった。 シュメール美術の段階で既に「空間を意識」するということは行われており、ふたつのものを重ねて描き遠くにあるものを表現する【重切法】がそれに当たる。(この技法は「ウルのスタンダード」という王の勝利を讃えた円筒印章の深み浮彫りの作品に代表される。) その後、アッシリア美術はこれまでにない壮大な規模の叙述的浮彫り様式を確立させ、固有の美術を展開した。 乾燥した大草原から石が多く取れるという土地柄から石彫りのレリーフが発展を重ねていくことになり、それを代表する作品が 「アッシュルバニパル王によるエラムのマダクトゥーの包囲・攻略」 (ニネヴェの南西宮殿第33室出土、前660年-前650年頃、雪花石膏製、大英博物館所蔵) である。 この板石(オルトスタット)に造形された作品は、ドキュメンタリー性を強めてアッシリア最強の王であるアッシュルバニパル王をより盛大に讃えるため、【写実主義】の徹底を造形理念としている。 そのため、シュメール美術から受け継がれた【重切法】のほかに 【俯瞰視点】…高い位置から場面を見下ろす視点 【垂直遠近法】…遠近を高さ・低さで表現する 【重畳遠近法】【基底線】 などの空間表現が新たに生み出されたのである。 huziiさんが博物館でご覧になったのは、まさに上記のアッシュルバニパル王のレリーフなのでは、と思います。 講義においてもとても重要性を持たせた部分で印象深く、ここで築かれた遠近法が元となりその後の発展が遂げられたのだったと記憶しています。 以上、回答となっておりますでしょうか。多少でもお力になれましたら幸いです。

huzii
質問者

お礼

 さっそくの御教授、ありがとうございました。  自分の質問そのものだけにでなく、その周囲、あるはそれに連なる事柄についてのご説明までいただき、大変勉強になりました。  なるほど。古代から、様々な形での表現法が試みられていたのですね。  自分が観て感動したレリーフが、Ricchonさんの仰るレリーフかは分かりませんが(確か、時代はBC600年代半ば~700年とありましたし、攻められている都市の名は不明と説明書きがありました)、教えていただいたキーワードを参考に、自分でもインターネットや図書館でより調べてみようと思います。  ありがとうございました。

その他の回答 (1)

  • lluunnaa
  • ベストアンサー率62% (17/27)
回答No.2

一般的に「遠近法」とういうと「線遠近法」(すべての線が消失点に収斂する方法)のことを指すので、その確立はルネサンス期とされますが、もちろんそれ以前にも、空間を平面に描き出す方法は様々な試みがなされてきました。 質問者さんがご覧になったレリーフも、人物や馬が重ねて彫られているほか、遠くにあるものほど小さくしていったり画面の上方に置いたりと、いくつかの遠近法を組み合わせて用いられています。 ただ、このように重ねたり、大小関係や位置関係による遠近法は、単に奥行きを表現するためのしるしのようなものでした。 一方、「線遠近法」によって平面上に統一的な空間を再現することが可能になり、合理的な方法としてそれ以外の遠近法とは区別されました。 ですから、「遠近法の発見」というと「線遠近法」に限定されるものの、広義の遠近法には古代アッシリアのレリーフにみられる手法も含まれます。

huzii
質問者

お礼

 ご回答、ありがとうございます。  なるほど。遠近感を出す手法は昔からある。しかし、現代使われる消失点に収斂する方法が確立されたのがルネサンス期である、ということですか。  羅針盤は昔からあったけれど、航海における使われ方が確立し、遠洋航海が可能になったのがルネサンスだと、それに似ているのでしょうかね。  自分が見た絵は、現代における(消失点を設定した)遠近法に極めて近く感じたので、驚きも大きかったのですが。ですが、いろいろと勉強してみると、また違う見え方をしてくるのかもしれませんね。  ありがとうございました。

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