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恐怖を作り出すのは?
- 恐怖状態ではノルアドレナリンが大量に出ていると聞きますが、ノルではない、ただのアドレナリンの方はどんな仕事をしているのでしょうか?
- 恐怖状態では大脳辺縁系が興奮状態してるとも聞くのですが、大脳辺縁系が興奮するからノルアドレナリンが放出されるのでしょうか?それともノルアドレナリンが大量に放出されるから大脳辺縁系が興奮するのでしょうか?
- 一般的に言われる恐怖症とは、大脳辺縁系が意味ない場面なのに興奮している状態だと思ってるのですが、日常的に辺縁系を使わずに弱らせてしまえば、恐怖反応自体を弱くさせることは可能でしょうか?(シナプス間のセロトニン濃度を考えないで)
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こんにちは。 一連のご質問にお答えする前に、まず「怒り」や「恐怖」などと分類される我々の「感情」とはいったいったいどのようなものなのかということを整理しておきます。 感情とは、「知覚入力を基に大脳辺縁系に発生した情動反応が、情動性身体反応として身体に表出されることによって体性感覚として大脳皮質に知覚され、認知・分類の可能になった状態」を言います。 大脳辺縁系は身体内外のあらゆる環境の変化に伴う知覚入力に対して「利益・不利益の価値判断」を下し「情動」を発生させます。これが脳内中枢系や身体自律神経系に出力されることによって無意識のうちに選択される様々な反応や行動を「情動性身体反応」といい、知覚入力を基に大脳辺縁系に発生した情動反応は、この過程で喜怒哀楽といった特定の反応パターンに分岐・成長します。大脳皮質はこれを体性感覚として知覚し、過去の体験記憶を基にそれがどのような感情であるかを分類し、認知します。そして、これにより初めて我々は、自分がいったい何に対してその感情を発生させているかといった状況判断を下すことができるわけなのですが、これを大脳皮質における「情動の原因帰結」と言います。 「認知・分類の可能になった状態」などと廻りくどい言い方をしますのは、感情の分類には必ずしも本人の自覚というものを必要としないからです。例えば、顔を真っ赤にして息を荒らげている、このような情動性身体反応が表出されているのでありますならば、本人がまだ自覚していなくとも、周りから見れば誰だってあのひとは怒っていると分かりますよね。他人にこのような判断が付けられるのは、喜怒哀楽という感情の分類が全人類と多くの高等動物に共通であるからです。 ですから、自覚を伴わない人間以外の動物であっても感情の分類は十分に可能です。これは、爬虫類から進化する過程でその脳内に大脳辺縁系を発達させた哺乳類と鳥類であるならば、その情動のメカニズムは人類と全く同じであるからです。 このように、感情とは情動性身体反応の発生が特定のパターンとして分類の可能な状態になったものをいいます。 「利益・不利益の価値判断」といいますのは、生後学習によって大脳辺縁系内「扁桃体」に獲得された「情動記憶」を反応の基準として行われるものです。このため、大脳辺縁系の情動反応は「強い・弱い」の他に、「快情動」と「不快情動」という正反対の結果に分かれます。ですから、「喜び」「感動」「期待」といったものは「快情動」が基になったものであり、ご質問の「怒り」と「恐怖」そして、「不安」「悲しみ」などは「不快情動」の発生によるものです。これは誰が考えても間違いのないことです。 では、元は快・不快の二種類でしかなかったものが、いったいどのようにしてこれほどまでに多彩な感情に分岐・成長するのかといったことは、残念ながらまだほとんど解明されていません。ですが近年では、不快情動は「中脳中心灰白質」によって「怒り」か「恐怖」のどちらかに分岐するのではないかと考えられています。 このように、大脳辺縁系の役割とは、知覚入力に対して「利益・不利益の価値判断」を行うということでありまして、そこで発生しているのは「恐怖」や「怒り」といった具体的な感情ではありません。そして、それは神経系の信号伝達や様々な身体の反応など、たいへん複雑な過程を辿ることによって特定のパターンに導かれてゆくものです。 >質問1:恐怖状態ではノルアドレナリンが大量に出ていると聞きますが、ノルではない、ただのアドレナリンの方はどんな仕事をしているのでしょうか? 脳内で「修飾系伝達物質」として使われる「NA(ノルアドレナリン)」といいますのは主に脳幹内「青斑核A6NA含有神経核」というところで作られます。大脳辺縁系に情動が発生し、その信号がこの「青斑核」を刺激しますと、ここから複数の経路で脳内広域にNAが一斉投射されますので、中枢系全体の覚醒状態が一気に亢進されます。このような、具体的な信号伝達ではなく、受容した神経細胞の働きそのものを活性化させたり抑制したりする伝達物質を「修飾系伝達物質」と言い、他には「5-HT(セロトニン)」や「DA(ドーパミン)」などがこれに当たります。 これに対しまして「AD(アドレナリン)」といいますのは「副腎髄質」で作られるものありまして、ホルモンのように体液中に分泌され、抹消の交感神経系に直接作用して身体全体の生理状態を満遍なく活性化させます。 副腎髄質からはこのADと一緒にDA(ドーパミン)とNA(ノルアドレナリン)が分泌されるのですが、これらは青斑核のような脳内の修飾系含有神経核から投射されるものとは別に、カテコールアミン系の「ストレス対処物質」などと呼ばれています。その名の通り、身体の生理状態を亢進させて速やかにストレスに対処するためのものなのですが、これが与えられた状況に対応できるということは、環境からの知覚の入力に対する大脳辺縁系の価値判断に伴う情動信号が副腎髄質まで届いているということでありまして、この伝達経路は「大脳辺縁系―視床下部―下垂体―副腎髄質」となります。 「視床下部」といいますのは全身の自律神経を司る中枢でありまして、大脳辺縁系の情動反応がここを介して出力されることにより、我々の身体には自律神経系の活性化に伴う様々な「情動性身体反応(この場合は情動性自律反応)」が発生します。視床下部はこれによってまずストレスに対処するための体制を整えるのですが、同時に副腎髄質にもADを初めとするストレス対処物質分泌の指令が下されるという二段構えになっています。 >質問2:恐怖状態では大脳辺縁系が興奮状態してるとも聞くのですが、大脳辺縁系が興奮するからノルアドレナリンが放出されるのでしょうか?それともノルアドレナリンが大量に放出されるから大脳辺縁系が興奮するのでしょうか? 「青斑核A6NA(ノルアドレナリン)含有神経核」には脳内各部から複数の入力経路がありますが、恐怖などの情動反応に伴う場合は、まず大脳辺縁系からの入力が順序だと思います。先にご説明致しました通り、情動反応の発生に伴う大脳辺縁系からの入力がありますと、青斑核の活性化によって脳内広域に渡るNA投射が行われ、中枢系の覚醒状態が亢進されます。そして、青斑核A6のNA投射は大脳辺縁系にも側枝を伸ばしていますので、その修飾効果によって大脳辺縁系そのものの働きが活性化されることになりますし、視床下部に対しても投射は行われ、身体のストレス反応を迅速化させます。 また当然のことながら、NAの広域投射は大脳皮質の知覚・認知機能も促すわけですから、このような神経の過敏な状態で情動の知覚による原因帰結や自覚が成されますと、人間どうしても輪を掛けて余計なことを考えたり、嫌なことを思い出したりしてしまいます。運悪く大脳皮質にこのような意識現象が発生しますと、大脳辺縁系はこんどはそれに対しても正直に不快情動を発生させることになります。 このように、情動反応といいますのは神経信号のやり取りやフィードバック回路が複雑なループを作ることによって特定の反応パターンに分岐・成長します。感情が時間と共に増幅されてゆくのはこのためなのですが、大脳皮質がそれに気付くのは、順番としてはだいぶ後の方ということになります。 >質問3:一般的に言われる恐怖症とは、大脳辺縁系が意味ない場面なのに興奮している状態だと思ってるのですが、日常的に辺縁系を使わずに弱らせてしまえば、恐怖反応自体を弱くさせることは可能でしょうか?(シナプス間のセロトニン濃度を考えないで) 最初にご説明致しましたように、大脳辺縁系が情動を発生させるための「反応規準」は、生後体験に基づいて扁桃体内に獲得された「情動記憶」です。そして、我々動物にとって情動反応とは生後環境から学習獲得された過去の体験に基づいて価値判断を下し、与えられた状況に応じた適切な行動の選択を行うためにあります。従いまして、大脳辺縁系の機能そのものを抑制してしまいますと、何の感情も発生しなくなってしまうだけではなく、日常生活におけるあらゆる判断が下せなくなってしまいます。 状況に応じた行動の選択ができないのですから、何ひとつまともにできませんし、チョコレートとゴキブリはどちらが好きですかと尋ねられても全く答えられないはずです。もちろん、大脳皮質が正常に機能しているならばチョコレートとゴキブリの比較はできます。ですが、情動というものが発生しない限り、正解と不正解のどちらを答えるべきかの判断が付けられないんです。 このようなものは極端な例としましても、恐怖といいますのは情動反応なのですから、薬物の投与などによって大脳辺縁系の働きを抑えることができるならば反応を抑制できるというのは原理的に間違っていません。ですから、それが過剰な反応であるために日常生活に支障をきたす状態であるならば、そのような治療法もあるかも知れません。ですが、恐怖というのは確かに大脳辺縁系の情動反応ではありますが、何が怖いのかという「価値判断の基準」は飽くまでそのひとが生後の個人体験によって獲得した「情動記憶」です。これがどういうことかと申しますと、そのひとにとっては死ぬほど怖いのだけれども他のひとにとってはそれほどでもない、もしくは全然平気ということです。従いまして、これに対して恐怖という情動の発生そのものを抑制したとしても問題の解決にはならないわけです。 ですから、このような個人体験に起因する恐怖症を治療するためには、まずその反応の原因を特定して排除するか、過去の体験であるならば意識的に克服の努力をするというのが一般的な対処法ではないかと思います。とはいえ、これは専門の医師やカウンセラーにとってもたいへん地道な作業になるということだそうです。 >質問4:○○恐怖症とは、幼いときに嫌な思い出や生死に関わる事によって発症してしまうと広く認識されているのですが、過去に何も記憶にない状態でも恐怖症になってしまった場合は、その記憶を思い出せない状態なのか、只単に意味なく恐怖症になってしまうのか? 「何とか恐怖症」という名前がある以上、その反応の原因は取り敢えず「何とか」に特定されているのではないでしょうか。 これに対しまして、一般に「トラウマ」という名称で知られています「心的外傷」といいますのは、大脳辺縁系の情動反応による恐怖や不安が頻発したり慢性化したりするものですが、こちらには原因の特定できないというものがたくさんあるはずです。 ですが、まず反応を発生させているのは本人の体験によって獲得された「情動記憶」です。ですから、何の原因も理由もないものを学習するということは絶対にできませんから、意味もなく恐怖症になってしまうということは、生理的な神経系の失調以外には、まずあり得ないのではないかと思います。 反応が発生するということは、扁桃体の中には過去の体験に基づく「情動記憶」が健在であるということです。この原因が特定できないのには以下のような理由が考えられます。 1. 古い体験であるため、大脳皮質の記憶では思い出せない 2. 忌まわしい体験であるため、記憶が封じ込められている 3. 本人が身の回りの環境をストレスと気付いていない 4. 本人の記憶と実際の体験事実が異なる 5. 長期、あるいは複数の原因であったために特定が困難 >質問5:PTSD患者の場合、内側前頭前野の働きが鈍い人ほどなりやすいとされているが、恐怖記憶と恐怖反応を抑える箇所に電極を埋め込み、人工的にその部位を活性化させることは可能なのでしょうか?また、将来そのような技術で恐怖などを消し去ることが出来るようになるのでしょうか? これまでご説明致しましたように、「恐怖記憶」として反応を発生させていますのは大脳辺縁系・扁桃体の「情動記憶」です。そして前頭前野は一般的に大脳辺縁系の情動反応を抑制することができると考えられています。 ですが、まず前頭前野を初め大脳皮質全域に及び、ここにはNA(ノルアドレナリン)や5-HT(セロトニン)といった修飾作用によって任意の神経細胞の働きを活性化させたり抑制したりする「修飾系伝達物質の含有神経核」というものはひとつもありません。従いまして、むろん大脳皮質からの投射経路というものはありますが、これによって大脳辺縁系に送られて来ますのは「修飾系の抑制伝達物質」ではなく、飽くまで大脳皮質の認知結果に基づく「有意信号」ということになります。 これがどういうことかと申しますと、恐怖発生の因子であります「情動記憶」も、それを抑制するための前頭前野の「認知結果」も、どちらも共に個人体験に基づいてそのひとの脳内に形成された「学習記憶という細胞結合」であということです。従いまして、その場所を特定して電極を差し込むというのは、現在の技術ではまず不可能ということになります。 さて、大脳皮質は情動反応を司る大脳辺縁系に対して抑制伝達物質を投射するという機能を持っていません。また大脳皮質が出力する信号も、それに行われる価値判断も、共に生後学習に基づくものであるため、獲得された体験によっては必ずしもこれが抑制信号として働くとは限りません。にも拘わらず、前頭前野が大脳辺縁系の情動反応を抑制することができるのは、それは、双方の獲得した反応規準が生まれ育った社会の慣習や道徳観に従ってほぼ一致するからです。 「心的外傷(トラウマ)」の原因の多くが幼年期の体験であるのは、大脳皮質が未発達であると同時に、当然のことながら与えられたストレスに対処することができるだけの経験・認識に乏しいからです。同様に、PTSDといいますのは多くの場合、大人でも耐え難いストレスによる心的外傷の後遺症でありますから、前頭前野の働きが鈍いといいますよりは、それそのものが未発達の子供には極めて危険ということになります。 では、前頭前野の働きを活性化させるだけでこのようなストレスに対処することができるのでしょうか。大脳皮質は情動反応を直接抑制する伝達物質を持っていません。従いまして、実際にこれを回避することができるのは、前頭前野の稼動率ではなく、そこに学習獲得された「認識の質」ということになります。近年、若者の「切れる!」といった現象から暴力犯罪低年齢化の話題は新聞、テレビに暇がありません。如何に大脳皮質が成人の年齢に達しようとも、その成長過程で獲得すべきものが不十分である限り、情動の抑制が困難になるという指摘は、脳医学の分野からも積極的に成されています。 最後に、反応の起因となる学習記憶そのものを消し去ってしまう技術が将来的には開発されるかというご質問ですが、恐らく現在の脳医学・神経生理学の延長線上に可能になってもおかしくはないのではないかとは思いますが、まあ、ちょっと想像も付かない未来技術ですよね。そして、もし仮に現実になったとしましても、やはりそこには人類がクリアしなければならない倫理問題というのが存在するのではないかと思います。 当面は、日常生活に支障をきたす状態にある患者さんに限って適応を考えることになるはずですが、健常人が個人的な理由から特定の反応や記憶を消し去ってしまいたいということになりますと、社会の大半が大きく反発を示すのではないでしょうか。何故ならば、我々の人格というものはこれによって形成されているものであり、個人の意思によって改変するということは、自分の歴史やアイディンティティを放棄するだけではなく、社会秩序の維持にどのような影響を及ぼすのか予測が付けられないからです。大脳辺縁系の情動記憶を消し去るということは、人格の整形手術に当たるのではないかと思います。
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- ruehas
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こんにちは。 #1です。回答をお読み頂き、ありがとうございます。 >ノルアドレナリンは青班核で作られ?放出される出発点? はい、そのようにご説明致しましたが、あとから追加説明でたいへん恐縮なのですが、「主に青斑核A6(とA4)」ということでお願い致します。 手元の資料によりますと、脳幹にはA1~A7まで七箇所の「NA(ノルアドレナリン)含有神経核」が発見されておりまして、「青斑核A6」はその中でも最大のものです。そして、この「A6」及び「A4」のNA投射は、「視床」「視床下部」「中隔」「海馬」「扁桃体」などに対して側枝を出しながら「大脳皮質全域」に終末しています。この投射先を見ますと、それは「知覚」「認知」「思考」「学習・記憶」など、我々の脳内のほとんどの高次機能を活性化させることになります。文字通り「意識を高める」わけですね。 A6・A4以外のNA核からの大脳皮質への投射はほとんどなく、こちらは専ら「視床」「視床下部」の「感覚伝達」及び「自律機能」や、「大脳基底核」「小脳」の「運動機能」などを補佐しているということになるのではないかと思います。 >セロトニンは縫線核で作られ はい、「5-HT(セロトニン)含有核」はB1~B8までが解剖学的に特定されておりまして、それらの全てが「縫線核」と呼ばれます脳幹中央部に集中しています。 それから、私いま気が付いたのですが、脳内にも「AD(アドレナリン)含有核C1~C3」というのがありますねえ。すっかり忘れていました。 但し、これはNA(ノルアドレナリン)の広域投射と平行したり拮抗したりするもののようですが、NAのように中枢系の覚醒状態を亢進させるといったようなはっきりとした働きはないようです。はっきりとしていないと言いましても、何の機能もないということではないのですが、この辺りになりますとたいへん専門的になってしまいますので、すみません、私ではちょっと説明ができません。 何れにしましても、神経系における伝達物質としてのAD(アドレナリン)の働きと言いますならば、前回答でご説明致しました通り、「副腎髄質AD」による「自律神経系のストレス対処反応」という解釈で、一般的には十分ではないかと思います。しかも手持ちの教科書には、「C1~C3の機能は特に覚えなくとも良い」という但し書きまで書いてあります。私が忘れていたのは、別にそのせいではないのですが……。 >GABA(γーアミノ酪酸)はどこで生成されるのでしょうか? 「GABA」は、「介在細胞」と呼ばれる抑制伝達を行うための神経細胞内で生成されます。 NAや5-HTといった「修飾系伝達物質」のように特定の神経核から脳内広域に投射されるものではなく、シナプス結合を介して接続先の細胞にのみ投射されるものでありまして、「興奮性のグルタミン酸」と共に脳内広域、大脳皮質全域で「情報伝達」に使われる「抑制性の伝達物質」です。ですから、GABAは何処か決まった場所で生成されるというものではなく、これを保持する「介在細胞」は脳内のあらゆるとことで無数に散在します。 我々が何かを考える、思い出すといった大脳皮質の情報処理といいますのは、ほとんどがこの「興奮性のグルタミン酸」と「抑制性のGABA」の取り合わせで行われます。他にも、感覚系や運動系の伝達でも使われます。 「介在細胞」と言いますのは、興奮性伝達を抑制性伝達に変換するためのものです。グルタミン酸を受容することによって発火するのですが、次の細胞には抑制性のGABAを放出します。 前細胞からグルタミン酸の投射を受けた細胞はそれによって興奮し、後細胞にもグルタミン酸を放出しますので信号は次から次へと伝達されます。この細胞の間に「介在細胞」が入りますと、受け渡されるのはGABAですので、次の細胞が抑制され、その先に信号が伝達されなくなります。我々の脳内の情報演算に使われます「0,1信号」は、このような処理が並列で行われることによって作られます。 脳内の広域投射という特徴を持ちます「修飾系伝達物質」では、5-HT(セロトニン)は広義では抑制性に分類されます。ですが、特定の細胞にのみに作用するGABAでは、その「抑制の目的」が全く違います。 さて、GABAは抑制性の伝達物質です。そして、大脳皮質は大脳辺縁系の情動反応を抑制することができます。ですが、決してこれは、大脳皮質から抑制性のGABAが集中的に放出されるということではなく、飽くまで大脳辺縁系に送られて来ますのはグルタミン酸とGABAの組み合わせによって作られた「0,1信号」です。 では、どうしてこんな信号で大脳辺縁系の働きが抑制されるのかと申しますと、厳密にはそれは抑制されているということではなく、送られて来る「0,1信号」のパターンに従って大脳辺縁系の反応が変わるということなんです。つまり、複数の細胞集団同士が並列信号をやり取りする場合には、信号のパターンという約束事があり、それによって反応するかしないかが必然的に決まるということです。 このようなものを(受け取る側の)「選択的反応特性」と言います。ですから、大脳皮質は不快情動を発生させないような信号のパターンを送ることによって、大脳辺縁系の情動をなだめることができるというわけです。 我々の脳内の複雑な情報交換といいますのは、このようなプロトコルに従って行われています。そして、生まれたあとに作られた約束事が学習ですね。修飾系伝達物質の広域投射が力任せの「量的制御」であるとしますならば、こちらは紳士的な約束事に基づいて行われる「論理的な制御」ということになります。前回の回答で、大脳辺縁系の情動を抑制するのは前頭前野の「稼働率」ではなく、そこに獲得された「認識の質」であると申し上げましたのは、このような意味であります。
お礼
とても貴重な回答ありがとうございました 非常に参考になりました。 それにしてもruehasさんは博学で多識なお人ですね とても一般人とは思えないほどの専門知識をお持ちですね とても恐縮なのですが、もう一つ質問よろしいでしょうか? ノルアドレナリンは青班核で作られ?放出される出発点?、セロトニンは縫線核で作られ GABA(γーアミノ酪酸)はどこで生成されるのでしょうか? よろしくお願いいたします