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沸点上昇の説明
沸点上昇の説明として、 「溶質分子が、溶媒分子が蒸発して飛び出そうとする際の邪魔になる為、蒸気圧が下がり、沸点が上昇する」 といった言い回しをよく見かけます。 この説明は、溶液中の溶媒と溶質を個別に考えることが出来てイメージしやすいのですが、「本来の沸点に達した溶媒の蒸発を、数パーセントの溶質の存在が物理的に妨げている」と捉えると納得出来ません・・。 冒頭の沸点上昇の説明は正しいのでしょうか? また、沸点上昇には溶質溶媒間の分子間力やその他の要因は無いのでしょうか? わかる方、どうぞ宜しくお願い致します。
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沸点上昇、凝固点降下は高校の化学で出てきます。熱力学や混合溶液の理論を使わないといけないのであれば単なる暗記物の理論になってしまいますから当たらずとも遠からずという立場での説明が必要です。 不揮発性の溶質が混ざっていると溶液の蒸気圧が下がり、沸点が上がるというところは押さえておられるようですね。だから問題はなぜ不揮発性の溶質が入ってくると蒸気圧が下がるかということになります。 これに関しては「溶質粒子が溶媒分子の蒸発の邪魔をする妨げになる」というイメージで良いと思います。蒸発という現象を「液体表面から分子が周りとの分子間力を切って飛び出していく現象」として理解していることと整合性があります。ただ問題は、問の中の表現だと「これだったら液体の表面にふたをしたのと同じではないか」という疑問に答える事が出来ていないということです。ふたがあるということは口の小さい入れ物でやるということと同じですから沸点には影響が出ないはずです。だから液体表面に存在する不揮発性の溶質粒子は溶媒分子が「出て行くのは邪魔するが入ってくるのは邪魔しない」という存在だという押さえが必要です。 「数%の溶質の存在が・・・」と書かれていますがこれは教科書の記述の立場にバイアスがかかっていることによる誤解です。教科書では稀薄溶液の性質として出てきます。でも凝固点や沸点が変化する現象は溶液全般で起こります。沸点や凝固点の変化が濃度に比例するという場合に限ると稀薄溶液になります。もっと濃度が高くなれば溶質粒子同士の相互作用も問題になってくるでしょう。単純に邪魔する場所が何カ所あるかだけでは無くなります。溶質の種類も関係してきます。 混合による沸点、凝固点の変化の現象を説明するような顔をしていて実はやっていないのです。濃度の低いときだけに成り立つような印象を与える展開をしています。それはこの現象を説明するということよりも分子量測定に使うことの出来るという利用の立場が入っているからです。溶質の種類によらず溶質粒子の数だけにより決まるという現象がなければ分子量は決定できまりません。アボガドロの法則にも「気体分子の種類によらず」成り立つという内容が含まれています。後は浸透圧の性質です。 凝固点降下の現象には稀薄溶液という条件を外した例がたくさんあります。ハンダなどの低融点合金を作る場合、鉄に含まれる炭素の割合で融点が変わるという製鉄、冶金での話、脂肪分の多いアイスクリームは融けやすいという話、・・・。 ナフタレンとパラゾール(パラジクロロベンゼン)のサンプルを5種類用意します。(100,0)、(75,25)、(50,50)、(25,75)、(0,100)です。一度加熱して融かし自然冷却します。温度変化を測定すると冷却曲線が求められますから凝固点がわかります。凝固点のグラフはV字型になります。谷底の値は30℃ほどです。ナフタレンの融点は80℃、パラゾールの融点は54℃です。 高校でこの実験をすると融点の高い物質は融点の低い物質に引っ張られて少し下がるだろうが逆に融点の低い物質は高い物質に引っ張られて上がると考えているのが打ち砕かれるようです。 多い方を溶媒、少ない方を溶質とすると溶質は溶媒が固まるのを邪魔するというのがよくわかります。V字型は印象的です。 難しい理論はつかっていません。でもこれだけでもかなりの理解だと思います。 融解電解での例を2つあげておきます。どちらも高校の教科書に載っています。初めは食塩の融解電解です。食塩の融点は800℃です。加熱用のエネルギーと電解用のエネルギーの両方が必要です。教科書には載っていませんが電気分解の本を見ると塩化カルシウムを混ぜるそうです。200度近く融点が下がると書いてありました。加熱用のエネルギーが助かります。次はアルミニウムの精錬です。氷晶石と酸化アルミウムが混ざることによる凝固点降下で融解し、・・・とたいていの本には書いてあります。でもこれは違います。氷晶石は酸化アルミニウムを溶かす溶媒です。氷晶石の融点は1000度ですので1600℃の酸化アルミニウムを溶かす液体になります。一旦融けた混合溶液は凝固点降下により900度まで温度が下がっても固まらなくなります。「食塩を加熱して融かすのは難しいが食塩水は簡単に作ることが出来る。その食塩水の融点は0℃以下になる」というのと対応してみて下さい。液体状態になる(溶液になる)ところには凝固点降下は関係していません。
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- anthracene
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えーと、希薄溶液の熱力学の理論からすると正しくないです。 というのは、沸点上昇や凝固点効果の理論は、全て理想溶液を仮定して始まっています。理想溶液というのは理想気体と似た概念で、分子間の相互作用は無いものとされています。すなわち、質問文にある”溶質分子が邪魔をして”とか”分子間力”を考えるのは変だということになってしまいます(前者が、物理的に粒子同士が衝突することを意味するのなら話は違ってきてしまいますが、私もその辺は詳しくありません)。 これは、問題としては理想気体の混合の話とちょっと似てます。 気体AとBを接触させると、混合が起こって元には戻りませんね? この理由はエントロピー増大で説明されます。 理想溶液に溶質を溶かすということは、溶媒分子(A)が運動しているのに加え、溶質分子(B)もフラスコの中で運動を始めるので、溶液のエントロピーは溶媒(A)だけだったときに比べ増大することになります。 溶媒だけのときと混合溶液にしたときの自由エネルギー差DG = DH - TDS (Dはデルタのつもり)を考えますと、理想溶液では粒子間相互作用はないのでDH = 0です。一方、上述したとおりエントロピーは増えますので、結果的にDG < 0となります。 どういうことかといいますと、Aだけの場合に比べるとA+Bの溶液の方が熱力学的に安定である、すなわち有利な状態であることになります。 すると、A+B(溶液)からA(気体)と変化する過程は、A(液体)からA(気体)へ変化する過程に比べて不利になるため、結果的には溶液でいられる温度範囲は増大し、沸点は上昇することになります。 もっとも、私は溶液理論に詳しくないので、粒子間相互作用のある実在溶液の場合はもっと難しいはずですが良く分かりません。ごめんなさい。
お礼
>anthracene様 エントロピーを用いた考え方が大変参考になりました。 混合気体の例も大変解りやすかったです。 どうもありがとうございました!
お礼
>ht1914様 質問者の自分よりも的確に自分の疑問を文章化して頂きました!ありがとうございます。 >「出て行くのは邪魔するが入ってくるのは邪魔しない」 先にいただいたエントロピーの考え方とも一致し、大変納得できました。 「邪魔になる」という表現で、物理的衝突と分子間力を混同してしまっていたようです。「ふた」の説明が大変わかりやすかったです。 どうもありがとうございました!