#8です。
しつこくて申し訳ありませんが、自分の説明がどうも不満足なのでまたおじゃまします。
また皆さん方のご意見も参考にさせていただきながら述べてみたいと思いますので、ご了承くださるようお願いしておきます。
最初に、既に述べましたが、私は「た」を過去形と解釈しておいたほうが理解し易いのではないかと思います。
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まずご質問者当初の疑問点をもう一度確認しておきます。
先のご質問は、
【「~したほうが」の「た」は何でしょうか。「~したほうが」と「~するほうが」は使い分けておられるでしょうか。】でした。
「カードを使って引き出すほうがかんたんです」という例文が挙げられています。
「ほうが」=「方が」で【選択】の意味を持つことは納得されたと思います。
そして、「引き出す」という現在形で表現するのは、その動詞の「一般的性質(あるいは効果)」に基づいて選択が行なわれたということでしょう。
つまり、『「カードを使って引き出す」という行為が「簡単」という結果をもたらします』という一般的判断を述べているわけです。
これに対して「引き出したほうが」と言う場合は、
『「引き出した」という既成事実を作り上げたとしても、決して後悔はしないほど間違いなく簡単ですよ。』
という意味で、それほど自信を持って簡単であることを強調していることになるのだと思います。
このような意味で「た」を「過去形」と解釈しておくとわかりやすいのではないかと述べているわけです。
無論、わかりやすくするためだけに言うわけではありません。
「現在」という時制を認識すること自体が不可能(あるいは難しい)という本質があるからです。
なぜなら、例えば「今 ! 」と言った瞬間に「今」という言葉、及び「言ったという事実」は過去になっているからです。
それで現在完了形というものを「発明」したりしているわけでしょうが、紛らわしいものにならざるを得ません。
端的に言うと、人間には厳密な意味で(あくまで厳密な意味で、です)主観的に把握できる「現在」は無い、と思われます。
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今回のご質問は、
【「~ほうがよかった<後悔>」はどのように使うのか】という内容です。
様々な観点からの回答がなされていますが、それに対するお礼や補足を見て感じたことを述べてみたいと思います。
1、「ほう」が選択の意味であることは既に述べました。
選択である以上、必ず「~」以外の事柄と比較していることになります。
すでに過ぎた過去の選択について「あの時~しておけばよかった」ということですから、結果として後悔と同義になるわけです。
2、「のに」は、後に続く「実際はそうではなかった」という言葉が省略されていると考えてよいでしょう。
そうでなかった事実を再認識することで、結果として【強い後悔の念】を表現することになります。
「天ぷらのほうがよかった」は、まずいトンカツと比較して「天ぷらという選択をしたほうがよかった」という意味ですし、
「天ぷらのほうがよかったのに」は、後に省略されている「実際は違ってトンカツだった」という「よくなかった事柄」を改めて再認識することによって「より強い後悔の念」を表現していることになります。
「贈り物にするのなら,包装は豪華なほうがよかったのに ! 」は、「贈り物にするのなら,包装は豪華なほうがよかった ! 」よりも相手(店員など)に対する強い非難のニュアンスが含まれることになります。
ただ、これは他人に対してだけではなく自分で深く後悔する場合でも使えます。
上記の例文は包装をしたのが他人であることが前提になっているので、他者への非難ということになっているだけです。
「映画に行けばよかったのに。」あるいは「映画に行ったほうがよかったのに」は、通常は他者に対して用いられる表現です。
ただ、「今日は時間がたっぷりあったのだから、前から見たかった映画に行けばよかったのに ! また一日家の中でボ~っと過ごしてしまった。本当に私は出不精だなあ。」などという【自身に対する強い後悔】のニュアンスを込めて独り言を言っているような場面では自分自身の行為にも使えるということです。
ですが、たとえば花子さんが牛乳を間違って買ったことでとても後悔するような性質であれば、「あれ? まだ牛乳残ってたんだ。買わなければよかったのに、どうして買ってしまったんだろう。私の記憶力は大丈夫かしら。我ながら本当~に心配 ! 」と言う場面もあるでしょうが、牛乳一つでそこまで自分を責める人は少ないでしょうから、【強く(深く)後悔する】意味を持つ「のに」を使うと不自然な印象を与えます。
もう少し一般的な例では、『「あんなこと言わなければよかったのに」と思い出しては悔やむことがあります。』
という自省の文が挙げられるでしょう。
3、『「ほうが+過去形」で後悔、遺憾などの気持ちを表せることはちょっと理解不能です。』とおっしゃっていますが、このお気持ちは良くわかります。
「あの店のほうがおいしかった」という場合、単に以前行った他の店と比較して【おいしかったという評価】(支持)をしているだけだという解釈のほうが自然だからです。
「走るより泳ぐほうが速かった」
「僕より君のほうが頑張った」
など『比較する事柄(速い・頑張る)が明確になっている場合』も同様です。
ただ、「~ほうが【よかった】」という漠然とした言葉を使う場合、「~」ということの内容を評価しているわけではないのです。
「走るより泳ぐほうがよかった」は、「泳ぐことがよかった」のではなく、「泳ぐという【選択をしたほうが】よかった」ということです。
「僕より君のほうがよかった」は、「君がよかった」のではなく、(意味は同じですが)「君というという【選択をしたほうが】よかった」という意味になります。
つまり、「~ほうが+過去形」ではなく、「~ほうが+よかった」という表現が後悔を表わしている場合が殆んどではないかということです。
【過去に実際にしてしまった選択】と比較して、【そうではない選択】をしたほうが「よかった」と言っていることになるわけですから。
「~ほうがよかった」は、
『~を選択したほうがよかった』
という一連の意味と考えれば良いのではないかと思います。
4、「そのスカートよりこっちのズボンの方が似合ってたな~」は、少し意味合いが違います。
「そのスカートよりこっちのズボンの方が似合ってた」とすれば、3で述べたように【単なる比較】にすぎません。
後悔の念が含まれているとすれば文末の「てたな~」という、過去に対する詠嘆による効果ということになるでしょう。
「そのスカートよりこっちのズボンの方が似合ってるな~」は、「てるな~」と現在形ですから普遍的な認識としての感想です。
買う前の感想でもよいですし、または、今日はいているのはスカートですが他にズボンも持っていて、そちらのほうが似合うと思う、と相手の人が言っているわけです。
「白の(スカートの)ほうがよかった」は後悔を表わしますから、黒を買ってきた場合でしょう。
自分にものすごく怒る時に「黒のほうがよかったのに!!!」と言うことはできると私は思いますが、やはり、文末が「のに」で終わるのは自然とは言えません。
「ちょっと考えてみればわかりそうなものなのに、どうして気がつかなかったのだろうか ! 黒のほうがよかったのに !!! 本当に私って馬鹿ね !!! 」ぐらいの迫力(または注釈)がないと文章としては不自然に受け取られると思います。
また逆の意味で「~ほうがよかった」という表現を他者に対して使うこともできます。
「もっと大きいほうがよかったのに」というのは通常は相手への非難になります。
これを、やや独り言に近い印象になってしまいますが、「もっと大きいほうがよかった・・・」のような感じで使うと【あまり強くない非難】のニュアンスを出すことができるということです。
お礼
補足の続き 申し訳ありません。補足の続きです。まだすっきりしていない一箇所です。前回の質問なのですが(すでに締め切り)、よろしければ説明していただけないでしょうか。 >これに対して「引き出したほうが」と言う場合は、『「引き出した」という既成事実を作り上げたとしても、決して後悔はしないほど間違いなく簡単ですよ。』という意味で、それほど自信を持って簡単であることを強調していることになるのだと思います。このような意味で「た」を「過去形」と解釈しておくとわかりやすいのではないかと述べているわけです。無論、わかりやすくするためだけに言うわけではありません。 この「引き出した」の「た」の理解はいまいちです。「既成事実を作り上げたとしても」からすれば、「完了」の「た」のことでしょうか。「決して後悔はしないほど間違いなく」の意味はどこから見えるのでしょうか。よろしくお願いいたします。 また、補足欄の訂正は一箇所です。 『しかし、2の「よかった」はちょっと違う感じがします。この「よかった」から話し手の楽しい、興奮などの一連の気持ちも感じられると思います。』と書きましたが、「楽しい」を「嬉しい」に書き直せていただきます。 『しかし、2の「よかった」はちょっと違う感じがします。この「よかった」から話し手の嬉しい、興奮などの一連の気持ちも感じられると思います。』とするべきでした。 大変失礼いたしました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー お礼 hakobuluさん、お礼が遅くなりまして申し訳ありません。度々ありがとうございます。 この回答文を拝見して心が見通された感じがします。hakobuluさんは私の困っているところをよく理解しておられると思います。特に回答3。いろいろ非常に参考になりました。だいぶすっきりになりました。 本当にありがとうございました。
補足
まだすっきりしていない箇所について補足いたします。 1.「よかった」という言葉。 「:」の前のシチュエーションとさせていただきます。 (1).伝記小説の文:「田中花子氏は中学時代で国語の成績は非常によかった。しかし、数学などの理科系の成績は非常に悪かった。・・・」 (2).富士山の頂上に到着した時の心境:「よかった。やっと着いた。」 「よかった」という言葉は不思議な感じがします。1と2の「よかった」は同じ「よかった」と思えないのですが、hakobuluさんのご意見はいかがでしょうか。1から受けたイメージなのですが、作者は非常に冷静的というか、客観的に花子さんの過去のことを記す感じがします。「よい」という形容詞の過去形だと認識しています。もし「花子さんは中学時代で国語の成績はとてもよかった」という文を現在形に「変えなさい」と言われると、「花子さんは今国語の成績はとてもよい」になるでしょう。 しかし、2の「よかった」はちょっと違う感じがします。この「よかった」から話し手の楽しい、興奮などの一連の気持ちも感じられると思います。 変な比喩をするなら、1の「よかった」は平然たる大人っぽい感じの「よかった」に対して、2の「よかった」は10代の感情豊富な若者の「よかった」のような気がします。 「~ほうがよかった」の中の「よかった」はどちらの使い方の「よかった」なのでしょうか。ちょっと回転が・・・うまく自分の意味が書けなくて申し訳ありません。必要があれば、また補足いたします。 2.#12さんの補足欄で書いたシチュエーションとさせていただきます。私は白のスカートを買ってきて、母は私の買わなかった黒のを買ってきました。その時に、私は白のスカートを見ながら、何と言いますか。あるいは何と考えますか。 1.「白にしたことはよかった!」 2.「白を買ったことはよかった!」 3.「白にしてよかった!」 4.「白を買ってよかった!」 5.「よかった!私の選択はやっぱり正解!」 1と2は文法の本の直訳のように見えます。日常でたぶんこのような文は使わないでしょう。3と4も文法の本の直訳の文っぽいです。わざと動詞を出す必要がないような気がします。3と4は日常ではそのまま使える文なのでしょうか。5は自分で思いついた表現です。たぶん不自然に聞こえると思います。恐れ入りますが、この場で言う(あるいは考える)ネイティブな日本語を教えていただけないでしょうか。実際使う言葉(文法を説明する直訳の文ではなく)の視点でのご回答お願いいたします。 もう一度教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。